罪と罰と禊
「ん、採集ポイントだ!」
てててーっと光る草むらにかけていく魔女っ子。ピクニックにきたみたいでほのぼのする光景だ。
討伐依頼の他にも採集依頼を受けており、採集ポイントなんてあるんだと知った次第だ。
そこら辺の草をムシっても素材にならずインベントリにも入れられない。
ちなみに指定されたアイテムは乾いた枝20本。草むらや木の側で見つかりやすいとのことだが果たして。
「出た?」
「んにゃ」
うゆは拾ったアイテムを手に持って見せてくれた。なんだこのデケェいちご。
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ヘビーイチゴ
大きくて重い実をつけるバラ科の植物。毒はないが甘みが薄く酸っぱい。
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早速フェリシアに食べさせようと口元に持って行くうゆだったが、イチゴを奪い取られて逆に頬に押し付けられている。
だからなんで、そんなすげー嫌そうな顔できんだよ。
「どれ、俺も拾ってみるか」
採集ポイントは独立しており、一人ずつ拾うチャンスがある。3人居るから3回チャンスがあるって訳だな。
「どうだ? 何が出た?」
採集物を問うてくるうゆの頬に、今しがた拾ったばかりのヘビーイチゴを押し付ける。すげー嫌な顔。
キラン☆
唐突に鳴り響いたSEに2人して振り向くと、フェリシアが採集ポイントを調べているところだった。
「おっ、レアアイテムか!?」
それにしてはフェリシアの表情が怪訝だ。
「何拾ったんだ?」
「エノコログサ……だそうです」
そう言って取り出したるはどうみても猫じゃらし。
うゆの顔の前にちょろちょろちょろとエノコログサを動かすフェリシアだが、これを真顔でスルー。
「ん、草むらには草しか落ちてないようだな」
「みたいだな。枯れた枝っつーぐらいだから木の側じゃないとダメか」
フェリシアの魔の手が俺に向く。あっ、目の前でじゃらされるの煩わしいな。ねこってこんな気分なのか。
当の本人を眺めれば、首をこてんと傾げてぶりっ子だ。
「フェリシアぁぁぁ~~!」
「にゃ、にゃわぁ~……!」
堪忍袋の緒が切れたので、フェリシアの髪の毛をわちゃわちゃと爆発させる。
うゆも便乗してヘビーイチゴを口元に押し当てて餌やり体験の構え。
ポヨゼラチンよりかは美味しかったらしい。(フェリシア談)
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枯れた枝を求めて近くの森……と言えるほどじゃないな、林にやってきた。
林に近づくほどプチコオロギも出る頻度が増えたと感じていたが、ここがプチコオロギの巣らしい。2体、3体と複数出るようになり、一人が手すきになる事も減ってきた。
とは言っても所詮プチコオロギ、一撃で倒せる相手だから問題はない、と思っていたのだが……。
「う、うゆちゃん、ノクスくん……! 大きいコオロギが居ます……!」
「ん。あれがザコオロギか?」
プチコオロギの倍以上はでかいと思われるコオロギが、お供のプチを2体連れてやってきた。
「親子でしょうか……?」
「倒しにくくなるからやめてくれる?」
「あっ、す、すみません……!」
時折、デカブツを倒したらちびが出てきて「父さんのかたきー」とか宣って襲いかかってくるやつあるけど、やめてほしいよな。強制戦闘で倒さないという選択肢がない以上、心を無にして「親と同じ所に送ってやるよ」のスタンスで倒すしかない。どっちが悪役だか。
まぁそんなでも、向こうから襲いかかってくるならば大義名分も立って倒しやすくなるというものだ。
でかいコオロギが飛びかかってきたので大きく避ける。ここで避けながら斬る技術でもあればいいんだが、生憎避けるので精一杯だ。
「ファイア……ボルト!」
うゆの放つ火弾がでかコオロギに刺さり、ボワッと炎上する。しかし一撃で倒すことはできない。
「まずはこまいのを倒そう!」
「わ、わかりました……!」
でかコオロギの横を通り過ぎ、飛びかかってきたプチコオロギの攻撃をあえて受けて、空中で隙だらけの所を斬って捨てる。よし、一体撃破。
防具を更新したお陰か、はたまた戦士にジョブを変えたからか、痛みは少ししか感じなかった。
向こうではフェリシアがプチコオロギを危なげなく一撃で破砕していた。鈍器こえー。
「んがっ!?」
「なっ……うゆ!?」
やべ、でかコオロギのタゲがうゆに行ってる!
急いで転身し、ヘイトを稼ぐべくでかコオロギに横一閃を加え……。
「きゃっ!」
「わ、悪い!」
やっべ、剣がフェリシアの手に掠った! 密集してるとこで横薙ぎはご法度だったか!
落ち込んでる暇はない、尚も執拗にうゆに攻撃しようとするでかコオロギを2 、3度斬りつけ、ようやくポリゴンとなった。
今回は何とか倒せたが……。
――
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「ヒール……!」
「ん……助かった、感謝する」
フェリシアの手当てで、ひとまず危険域からは遠ざかった。あいつ、あれで攻撃力が高いぽい。
そうそう、あのでかコオロギ、討伐対象のザコオロギじゃなくてオニコオロギというモンスターだとドロップから判明した。
それはまぁいい。問題はそれじゃなくて……。
「悪い、フェリシア」
「あはは、びっくりはしましたけど何ともないですよ」
「でも……」
「だ、だから大丈夫ですって……! 血も出てませんし、現実でもこれくらないなら舐めておけば治ります」
そう言いながらペロッと舌をだし人差し指を舐める。斬ったのは人差し指か……いや申し訳ねぇ。
乱戦のさなかとはいえ、フェリシアに怪我を負わせたのはしっかりめにショックだ。
「事故だってわかってますから、気を取り直してください」
「ん、仲間を斬りつけたとあっては、例え事故でも自分が許せないのだろう」
「……そんな感じ」
くっそー、図星だ。人の機微に聡いのも考えものだぞ?
「おー、よしよし」
慰めようという算段か俺の頭を撫でようとするうゆだが、全力で背伸びをして手がギリ届かないぐらいなので、眼の前で万歳してるだけになっている。
「ほ、本当に、気にしないで貰えると……」
「悪びれない人間は論外だが、自分を責め続ける人間も大概だぞ」
ぐ、数日前にフェリシアがやらかした時と立場が逆転している。あの時はなんて解決したか……あぁ、禊を済ませたんだったな。
「すまん、フェリシア。でも斬りつけといて何もお咎めなしっていうのは気持ちの整理がつかない。何でもいいから罰して、それでチャラにさせてくれ」
「え、えぇ……?」
「ん、何でもいいんだぞ。3回まわってワンでもお尻ペンペンでも好きなようにしてやれ」
「げんこつでもローキックでも何でもいい、頼む!」
「なんでもいいん、ですか?」
「俺にできることなら!」
「じゃあ……ノクスくんに切られた指……舐めて消毒してください」




