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もっと毛皮巻くとかさ

「戦士ならやはりアクティブさを出さなければな」

「う、動きやすさも大事だと思います……!」



 街のブティック? 的な所でうゆとフェリシアの着せ替え人形にされている俺。防御力も大事だと提案したら笑って一蹴された。解せぬ。



「俺は着れればそれで十分なんだけどなぁ」

「ノクスはそれでいいかもしれないが」


 着てる本人が良ければそれで良くないか、とは思うが。


「服に興味がないのは、自分の目では見れないからというのも一因だろう。だからどの服でも一緒などと宣うのだ」

「あー、それはあるかもな。このゲーム、リアルと一緒で一人称視点だし」


 三人称視点のようにプレイヤーのやや後ろから見下ろすタイプのゲームなら服装にもこだわる派だが、一人称視点のゲームだと蔑(ないがし)ろにしがちだ。

 急にイベントシーンに入ってキャラが見えたときに、何このキャラだっさってなることも無くはない。


「の、ノクスくんは、この格好やうゆちゃんの格好ってどう、思いますか……?」

「とっても可愛くて似合ってると思うよ」

「えへへ……♪ あの、これと一緒で、ノクスくんが素敵なかっこしてると、その、嬉しい、です……」


 おっと、そういうことか。たしかに俺からすれば魔法使いのうゆと僧侶のフェリシアに囲まれてテンション上がるけど、2人からすれば村人Aのやつが一人紛れ込んでるようなもんだ。自分本位すぎたな。


「なんかわかった気がする。そういうことなら2人好みに着替えさせてくれ」

「ん! ではこの狼の毛皮を腰に巻いてだな」

「あの、腰はダボッとしたベルトだけで、お腹は見せませんか?」

「毛皮!」

「お、お腹……」


 おぉ、2人の好みが対立しておられる……。



 ――

 ――――

 ――――――



「しめて3160T(トラオム)になります」

「さ……三千!?」


 うゆとフェリシアの勝負(じゃんけん)の結果、フェリシアコーデに決まった。で、お会計を済まそうとしたが想定外の金額。いや、金がかかるのは知ってたけど、あいつら値札見てねぇのか?



「俺、1420Tしか持ってないんだけど……2人はいくら持ってる?」


 とたんに顔をそらす2人。フェリシアはめっちゃ目が泳いでるし、うゆなんか口を尖らして吹けない口笛をヒューヒュー鳴らしている。


「すみません、購入はなかったことに……」

「ま、待て! 全部は無理でも、選べば少しは……」


 短めのマントを外す、膝当てや肘当てを外す、小手を外す、チョーカーを外す、でっかいベルトを外す……のはフェリシアが断固拒否した。こだわりなのだろうが、サイズが大きすぎてベルトとしての役割を果たしてないんだけどこれ。



 ――

 ――――

 ――――――



「しめて1450Tになります」


 最終的に、へその見える上下、ブーツにデカいベルトだけが残った。が、ギリ足りない……!


「30T! 30Tだけでいいから2人とも!」


 おっ、うゆがインベントリをゴソゴソ漁ってる! そのまま財布代わりのトラオム結晶を取り出す……かと思いきやポヨゼラチンを取り出し、店員に差し出した。


「ん、これで」

「いえ、あの……」

「なんでもないです! こらっ、うゆっ!」


 ポヨゼラを奪い取りうゆの頬に押し付ける。主犯がよくそんな嫌そうな顔できるなおい。


「さ、30Tぐらいならあります……! ど、どうぞ……!」

「おぉ! 助かる!」


 コンとトラオム結晶をぶつけてなんとか急場は凌げた。30Tとなると全然響かないのなトラオム結晶。


「まいどありがとうございます」

「次はもっと金溜めてくるよ」

「どうぞご贔屓に」



 ――

 ――――

 ――――――



「ノクスくん、似合ってますよ……!」

「そ、そう? なんか落ち着かないな。ヘンじゃない?」

「だから、ヘンじゃありません……!」


 これまでへそ出し衣装とか着たことなかったし、なんか不思議な気分だ。


 ふとガラスに姿が反射する。一瞬知らないやつかと思ったが、そうか、服が変わっただけで俺か。

 一応姿見でチェックはしていたが、街の風景と一緒に映ると意外と違和感がない。


「本当はマントでボリュームを出したかったんだがな」

「まぁ今はこれでいいんじゃない? 駆け出し冒険者っぽくて嫌いじゃない」

「ん、さすがフェリシアだな」

「えへ……♪」


 サイズのあってないベルトもこれはこれでいい味出している。防御力はお察しだが……まぁ受けるより避けろって感じなんだろうな。




「しっかし、これで名実ともに素寒貧だな」


 さっと顔を逸らす2人。

 フェリシアの顔を両手で挟み、ぐっとこちらに向ける。いたずらがバレた子供みたいな顔してんな。


「別に責めてる訳じゃ……ん?」


 うゆに腕をちょんちょんとつつかれた。見てみると私も私もと、顔をぷいっ。

 仕方ねぇなぁ、テイクツーだ。顔を挟み、ぐっ。

 何この時間。これ要る?



「あー……別に責めてる訳じゃなくてさ。手持ちって服に使った感じ?」

「いや、スキルカード代もあるな。めぼしいものは買ってみたが、それでも全体の一握りだ。魔法職というのは金食い虫らしい」



「ってことは、フェリシアもスキルカード買ったの?」

「い、いえ……買った訳じゃなくて、お布施したら貰えて……」

「同じだよおなじ!」



 戦士にとって武器が生命線のように、魔法使いや僧侶はスキルが生命線だろうから、そこに金をかけるのは妥当だろう……多分。


「それじゃ、修行の成果は狩りで見せてもらうとして、なに倒すか。なんかいい案ある?」

「と、特にない、です」

「私もないな。適当な依頼でも受けて金策も平行して進めるのはどうだ?」

「異議なーし」

「い、異議なし、です……!」

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