頑張る君を応援するよ
「手を離すんじゃないぞ、フリじゃないからな?」
「わーってるわーってる」
「あ、いま離しただろ! おまえーっ!」
「俺が支えてたらいつまでも自立できないからな」
「それはそうだが……え? これ、もしかして立ててないか!?」
「すごいすごい! 立ててますよー! その調子です!」
「本当か!?」
変な女の子とのトレーニングが始まってからしばらく。
一緒に集められた人たちはとっくに旅立ち、ここには3人だけ。俺とGMがつきっきりで女の子をサポートしている形だ。
GMがいるんだから俺はもういらないんじゃとも思ったが、ここで「じゃ、俺行くから」と離脱できるほど心臓に毛が生えていない。
「……なぁ、お前も暇じゃないだろう。別に無理して付き合わなくてもいいんだぞ」
「そんな冷たいこと言うなって。最後まで見届けさせてくれよ」
「ん。奇特なやつだな」
「心配ありませんよ、ここまでくればあと少しです!
さぁ、右、左と足を動かして歩いてみましょー」
二人に見守られながらよちよちと歩きだす。
「よっ、ほっ……なんだ、意外とかんた……おおっ、あぁっ!」
気を抜いたのかバランスを崩し、そのままこてんと転がった。
「そう、簡単なんだよ」
「ふんっ。少しぐらいの軽口、見逃してくれてもいいだろうさ」
体を起こし座り直すも、これみよがしに口を尖らせ不満げだ。
「いやいや、精神論かもしれないけど、簡単って思ってみなよ。
こんなのできない、無理だって思いながらやるんじゃなくて、自分にはできる、これぐらい普通って思うのが大事だと思うんだよな」
「歩くのがか?」
「夢の中で動くのがだよ。これから俺達はソムニウム・セフィアで冒険をするんだ。
こんな所で躓いてちゃいられない、だろ?」
「……ここは精神の世界だ、精神論も一理ある、か。
よし、やるだけやってみよう」
彼女が差し出した手をギュッと掴み、ゆったりと立ち上がらせる。ここまでは慣れたものだ。
「夢の中で動くのは普通、なんのしがらみもない、当たり前のこと……」
目を瞑り自分に言い聞かせるように呟きながら、ゆっくりと歩き出す。
「目を開けないとバランス崩すぞ~」
「おっと、忘れてた………………お?
歩けてないか!? これ! ほら!」
「歩けてます、歩けてますよ~!
ゆっくりで良いのでここまで歩いて来てください、きっとできます!」
ゆっくりと、しかし着実に前へと進む彼女の隣を同じ速度でついていく。転びそうなときには支えるつもりだったが、結局その必要はなかったようでGMの下まで一人で辿り着けていた。
「み、見たか、お前! 歩けたぞ!」
「おめでとうございます~っ!
これで夢の国に入国できますよ~っ!」
感極まったGMがギュッと抱擁するが、女の子はとても慌てているようだ。
「ま、待ってくれっ、そんな特別なことでもないだろうっ!」
「時々いるんです、練習の甲斐無く歩けなくて嫌になって夢から覚めちゃう人」
あー。夢で自分の意のままに動くって相当高度なことしてるんだもんな。機械の補助ありとは言え、できない人は出てくるか。
女の子も有り得た世界線を想像したのか、難しい顔で大人しくなった
「そういう人が出る度に心苦しく思ってたんですけど、無事に送り出せそうで良かったですぅ~!」
ひとしきり感激したあと、女の子を解放するGM。俺も歩けるようになったんだからギュッとしてくれないかな。
「そこのお兄さんも」
「あっはいイヤえっ、ど、どうぞ!」
「この方が歩けるようになるまで、一緒に見守ってくれてありがとうございました!」
「えっ、あ、あぁ……まぁ成り行きというか」
「謙遜するな、成り行きでも心強かったぞ」
「そう言って貰えると助かる」
……おせっかいを焼いてよかったな。自己満足とはいえ、多少は報われるというものだ。
「そうだ。たしか、こうだったか?」
少し考えているかと思ったら、片手をあげて掌を向けてきた。
そりゃあ隣だし、見られてるとは思ってたけど。
お望みなら応えてやるのが男気だろう。
俺も片手を挙げ、身長のせいで随分と低い位置にある掌にぶつけ……。
ぺすん。
なんとも締まらない音が鳴り、女の子は目を白黒させるのだった。
片方が力抜いてるとスカるんだよな、ハイタッチ。




