遊び人アンロック
8つの神像とにょこGMの壁画に挨拶を終え、入口に戻ってきた俺達を神官が出迎える。
結局フェリシアの担当GMには会えなかった、というかフェリシアが覚えていなかった。どうやらチュートリアルはそこそこに、かなり早く歩けるようになってササッと旅立ったようだ。
思ったけど、コツ掴むの早いよなフェリシア。竹編んだりできるし意外と多芸だ。
「お帰りなさいませ。いかがでしたか?」
「いやー終始圧倒されっぱなしっすね。本当に神はいるんじゃないかと思わずにいられないほどです」
「まぁ。ジョブは貰えたかという質問でしたが、参拝自体を楽しんでくださったようで何よりですわ」
あっ……ああぁ~。ジョブね、ジョブ。すっかり美術鑑賞に意識がシフトしていたようだ。……おっ、何個か選べるようになってるっぽい。
「お陰様で無事にいくつか貰えてるみたいです」
「それはそれは。当神殿では神様をなべて祀っておりますが、他の街にある神殿では一柱に限って崇拝している神殿もございます。機会があれば、そちらもお勧めしますわ」
なんでも、ここよりも大きい神像や配下の神も祀っているのだそうだ。大仏ぐらい大きいんかな、楽しみだ。
「とりあえずジョブは適当になんかに変えといた方がいいかな。経験値とか勿体ないし」
「そ、そうですね。戦士とかに切り替えておきます……!」
相談しながらせっせこパネルを操作していると、神官がこそっと助言を教えてくれた。
「差し出がましいようですが、まずは旅人のジョブを極めてから他のジョブに取り掛かるのを推奨いたします」
「ん、旅人なら既にMAXだ」
3人ともな! と自慢げに胸を張るうゆ。
よく見てみると、旅人のマスターボーナスは全ステータス+1だった。地味にありがたい。
「まぁ素晴らしい。他のジョブもマスターした暁には、また神様に報告しに来てくださいませ。
その者に見合ったスキルカードを授かることがございます」
さわりを聞く限りでは、ランダムでその職に関連したちょっと良いスキルカードが貰えるらしい。いわゆるガチャ要素。
が、旅人は特にスキルカードが貰えた事例がないらしい。まぁ旅人なんて職じゃないしな……お楽しみは次にとっておこう。
この神様ガチャで入手したスキルカードや、ジョブに最初からついてるスキルカードは個人用となっていて、他人には渡せないのだとか。やっぱりあるか、譲渡不可。
購入したカードやイベント報酬、ドロップで入手したスキルカードはトレード可能と言っていた。
それでドロップカード勝手に装備事件を思い出したのか、うゆが頭突きしてくる。こいつ怒りを宵越すタイプか……! 今後ずっと擦られ続ける予感がする。
「うーん……みんな、どんなジョブ貰えた? 俺は戦士と商人、神官、あと鈍器使い……ふっ、鈍器使いだって」
そりゃ鈍器でバンバン殴ってたけどさ。槍使えば槍使い、斧使えば斧使いとか貰えるのかね。
神官はなんだろう。いっぱいお祈りしたからとかかな?
「私も同じだな。てっきり魔法使いでも生えてると思ったのだが」
「杖で殴りかかるぐらいじゃ魔法使いは名乗れねぇだろ」
「んっ、ノクスに剣使いが生えてないしあの程度じゃダメということだな」
なんだとこいつぅ~。いつものように髪の毛をぐちゃぐちゃっとして、ぐお~という鳴き声をあげさせる。
こいつ自分で直す気がないから、結局整えるまでがワンセットだが。
なんかムカつくからツインテにしちゃえ。
「あ、あの……」
「フェリシアも同じ感じ?」
「え、えと、皆さんと同じのと……あと、細工師っていうのが出てました……」
細工師? 生産系のジョブだろうか。
「竹で抱き枕作ってたしそれかな」
「かもしれません……」
俺も男だ、自分の使う武器は自分で作りたいみたいな欲はあるので、いずれ鍛冶師的なジョブがあればつきたい気持ちはある。やっぱり一回自分で鍛冶の真似でもしないとダメかな。ヤスリでナイフが作れる、みたいな話は聞いたことあるが……。
自作の武器で戦うの、ロマンだよなぁ。
「武闘家や盗賊、遊び人みたいな基本ジョブもないようだな」
「やっぱり最初は自分でやんなきゃなんだろうな。盗賊はどうかと思うけどさ」
索敵や罠解除、鍵開けなんかのイメージもあるけど、それってどちらかと言えばレンジャーだな。
「いっぱいあって迷うな……」
「ん……とりあえず今日は帰るか。ジョブは明日考えてはどうだ?」
気付けば外は夕暮れ、そろそろ看板娘をおうちに帰さないと怒られる時間だ。
「それもそうだな。フェリシア、ゴムとか持ってない?」
「ポヨゼラチンなら……」
「しょうがねぇな」
手で作っていたうゆのツインテを解き、代わりに頭にポヨゼラを載せる。
「……おっ?」
「はたして寝具屋まで落とさず帰れるかな?」
2歩で落とした。こいつバランス感覚ねぇな。
「全く、なにやってるんですか」
「忍者ごっこ」
「にん……え?」
こっちの世界に忍者ってないんかな。落ちたポヨゼラを拾い、うゆの頭に起き直す。
ついでにインベントリからポヨゼラを引き出し、フェリシアにも載せる構え。
「頭は平行にしないとすぐ落ちるよ」
「あっ、は、はい!」
置かれる準備万端な所悪いが、こちらに差し出していた頭を並行に戻し、すかさずポヨゼラをポンと置く。
せっかくなので俺も自分で置いてみる。昔取った杵柄、そうそう落としはしない。バランス感覚には自信があるぜ。
「コトネもやる?」
「し…………仕方ありませんねぇ!」
ここに4人のポヨゼラ戦士が誕生した。何の集まりだこれ。
そうだ、神官さんにお礼言わないと。
「それじゃあお世話になりました」
「えぇ、これからもコトネさんを仲良くしてあげてくださいませ」
「もう、余計なことは言わないでください!」
「ふふっ、遅くならないうちに帰るんですよ」
ぷりぷり言いながらも顔はまっすぐだ。落としてやるもんかと気合が入っている。
周りのプレイヤー、住人問わず奇異の目で見られている気配を感じながら、帰路を急ぐ俺達4人。
結局寝具屋に帰ったのは日が沈む直前で、身の心配していた寝具屋の親父には別の意味で心配された。
誰だ頭にポヨゼラ載せようって言ったやつ。




