↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
47/80

意外な再会

 勝利の神トライアンフの像にお祈りした後は、順路にそって鉄石の神ディアマンテの像に参拝した。

 ディアマンテは体よりも大きな鎚を持ったドワーフのような神様だった。いや、この世界にドワーフがいるのかは知らないが。

 鉄石の神というだけあって鉱石や鍛冶などの逸話もあるのだろう。大きくしなった鎚の柄は、いますぐ打ち下ろされそうで迫力がある。


「動かない像なのに、ここまで躍動感があるのはすごいな……」

「ですね……! いますぐ鉄を打ちたい、って気持ちが伝わってきます……!」


 フェリシアは中々なインスピレーションを受けた様子。まぁ美術品を見て何を感じ取るかは人それぞれだしな。俺も審美眼が育つというか、感受性が養われるってこういうことかもな。


「こういう像に小学生の頃であっていれば、図工の時間がもうちょっと楽しかったのかもしれないな」

「ん、つまりこれからは美術の時間が楽しくなるという訳だ」

「それは……あるかもな。残念ながら絵心とかセンスは全然ないんだけど」

「あ、あの……じゃあ今度、神様の像をスケッチしてみませんか……?」


 グッと手を握り、やる気に溢れた目でこちらを見てくるフェリシア。

 あー、よく美術部の連中が石膏像をスケッチしたり、デッサン? してたりするよな。せっかく目の前に何かしたくなる題材があるのだからチャレンジしてみてもいいかもしれない。


「いいね。もしかしたら、画家なんてジョブが貰えるかもしれないし。……ちょっと打算的すぎるかな?」

「入口が何であれ、興味を持つのはいいことだろう」

「そう言って貰えると助かるよ。ジョブは可能性、か。案外色んな所に可能性って転がってるのかもな」

「ん、違いない」


 ――

 ――――

 ――――――


「あれ? これって……」


 3つ目の技巧の神に参拝し終え、4つ目の薄明の神に向かう途中。ふと壁画に描かれている人物の一人に引っかかりを覚えた。

 神像が神々しすぎて気にも止めなかったが壁画も随分と手が込んでいるようで、壁画の人物は白地に茶色の2色とはいえ多種多様な服装で描かれているのが見て取れる。この人たちも神様なのだろうか。


「どうした、ノクス。何か見つけたか?」

「いや、この人、どこかで見覚えがある気がするんだけど……」

「ん? 言われてみれば確かに。フェリシアはどうだ?」

「き、記憶にないです……。船乗りさん、ですか?」


 船乗りかぁ。そんな人に知り合いはいないはずなんだが、どこで見たんだろうか。うゆも知ってるってことは共通の知り合いか?

 正直そこまで共通の知り合いなんていないんだが。


「この壁画の方たちは、神様の伝令役だそうですよ。神様の言葉を伝えにきたり、神様に代わって何かをする時にこちらにやってくる方たちだそうです」


 つまり、天使的な存在だろうか。でも船乗りが神の伝言役なぁ。隣の男性は学生服にコートを羽織ったような格好してるし、かと思えばもう一つ隣の女性はアイドルみたいな露出多めでさわやかな格好をしている。恐らく一人称はボク。コスプレ会場みたいで統一感が全くない。

 偉い人に代わって言葉を伝えたりなにかを実行する、俺とうゆの共通の知人……。


「あっ。もしかして、チュートリアルのGMじゃね?」

「……んっ!? 言われてみればこの格好、GMにょこだな!」


 あぁ、そういえばそんな名前だった。うゆはよく名前を覚えていられるな。どうやったら人の顔と名前を覚えられるかね。


「ということは、だ。壁画に描かれている人たちって、全員GMなのかも知れないな」


 これだけの規模のゲームだ、GMが3桁単位で居ても驚かない。もしかしたら4桁いくかもな。いくらAIが発達した世の中といえど、人の手というのは欠かせないものだ。


「表に出ない運営や開発も居るかもしれない。いわばスタッフクレジットの代わりだろうか」

「あー、そういう。フェリシアの担当GMも居るんかな?」

「かもしれません……。で、でも、あんまり覚えてないかも……です」


 あれ、そういうもんか? いや、俺達は随分とつきっきりでお世話になったから例外か。名前を忘れたのが不義理まである。


「あの、皆さんこの方とお知り合いなんですか?」

「ん、その節には世話になったな。恩人だ」

「す、すごいです!」


 どうやら神の家来に会ったことがあるというのは羨むほどらしい。

 い、いやぁ、関心されるほどの仲じゃないんだけどなぁ。チュートリアル担当だったってだけだし、羨まれるのはなんだか良心が痛む。



「そうだ、せっかくだしにょこ氏にも祈っておく? 神様は見守ってるだけっていうし、もしかしたらGMも見守ってくれてるかもしれないしな」

「ん……ロマンチックなことを言うじゃないか。だが嫌いじゃない」


 そういうと俺の手をそっと握り、壁画に見せつけるように立つ。急に手を握られるとちょっとドキッとしちゃう。



「GMにょこ、貴女のお陰で素敵な友人ができた。これからもこの世界で生きていくから、見守っていてくれ」

「なんだか照れるなぁ……にょこ氏も大変だと思うけど、お仕事頑張って」


 2人で挨拶していると、フェリシアが空いた片方の手を握ってきた。だから急に握られるとドキッとするってぇ!

 反対では看板娘がうゆの腕をちょこんと控えめに掴んでいる。


「お、お友達、です……! 素敵な出会いを、ありがとうござい、ます……!」

「わたしもお友達、だと思います。仲間外れにしたらイヤですよ」


 うゆは満足げにむふんと胸を張り、自慢の友人を誇る。

 実際にGMにょこにメッセージが届いたかは知らないが、というか十中八九届いてはないだろうが……それでも奇妙な充足感が胸を満たしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。