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むーむーちゃんぷれいいんゔぉーく

 神官の案内が一区切りつき、耳を傾けていた民衆は思い思いの神像へと足を向けた。

 神殿の中はドーナツ型の回廊になっており、神殿の真ん中の庭には噴水が拵えてある。

 神官の言うことには、回廊には8体の神像が等間隔で鎮座しているそうだ。左右にちらりと見えるのがそれかな?

 この神像のどれかに祈りを捧げることでジョブが貰えるのか。うーん、迷うな……。


「どの神様がどれを司ってる、とかあるんかな。鍛冶の神とか、魔法の神とか」

「はい、ございます。左手に見える神様は勝利の神トライアンフ。戦いの神であり、旅立つ者が無事に帰ってくるよう見守ってくださる神です」

「なるほど。やっぱりバトル系のジョブが欲しかったら、勝利の神に祈った方がジョブが得やすいとかある?」

「いいえ。あくまで神は見守ってくださるだけ。どの神像の前で祈っても変わりません。

 ですが、魔法を志す方は神秘の神ミュスティカに祈りを捧げるなど、人によって傾向がございます」


 まぁそうだよな。体を鍛えまくる武闘家がその神秘の神に祈っても恩恵少なそうだし。どうせ祈るならそれに関連した神様が良さそうだ。


「ちなみにコトネはどの神様にお祈りしてる?」

「わたしですか? 商売人によって信仰する神様も結構バラバラなんですが、うちは鉄石の神、ディアマンテに祈りを捧げてますね」


 鉄石の神。非常に堅固な防御を持つ神だが、転じて、口が固く信頼を守るように、と商人に人気があるそうだ。親子そろって鉄石の神を信仰しているらしい。

 信仰といっても、神様の中での推しは~、ぐらいの温度感らしいが。



「うーん、どの神様でもいいとはいえ、迷っちゃうな。2人は誰がいいとかある?」

「ん、縁結びの神様などいないだろうか」

「でしたら運命の神、フォルトゥナでしょう。良縁を結び、悪縁を断つ。少々気まぐれな所もあるちょっぴり悪戯好きな神様です」


 縁結びかー。女子ってそういうの好きだよな。

 生憎、交通安全と学業成就のお守りしか買ったことない。縁結びのお守りなんか鞄につけていった日には、友達からからかわれること間違いなしだ。


「フェリシアは?」

「え、えっと……その……ぜ、全部の神様に参拝するのは、ダメ、ですか……?」

「全部?」

「はい……。せっかくこの世界で遊ばせて貰ってるので……最初ぐらい、皆さんにご挨拶してもいいのかな、って……」

「全く問題はございません。ジョブは一柱の神像に祈りを捧げれば良いので、旅人の皆様はあまり興味がないと思っておりました。

 ぜひ神々に挨拶されていってくださいませ」


 フェリシアの提案に相好を崩す神官。

 目的がジョブの習得ではあるとはいえ、一柱にしか挨拶しようとしない旅人は印象がだいぶ悪かったかもしれないな。


「フェリシアの考え、すごくいいと思う。俺も全員に挨拶するよ」

「ん、私も同行するぞ」

「はぁ~、皆さん信心深いんですねぇ。わたしも着いていきますけど」


現地住民が一番信心深くない件。


――

――――

――――――


 参拝の順路は時計回りということで、ちらりと見える勝利の神、トライアンフの像までゆっくりと歩いていく。

 というか、遠目から見てもデカいとは思っていたが、近づくにつれその全貌が明らかになる。


 見上げるほどの高さの勝利の石像は、片手にハルバードのような長い得物を持ち、外敵を寄せ付けぬよう目を見開き、威風堂々と仁王立ちしている。雲のように流れる長いヒゲが、白一色の石像だと言うのに躍動感を感じさせ、今にも切りかかられそうな錯覚に襲われる。


「いつ見てもすごいですよね、神様の像は」


 こちらの住人である看板娘はすごいの一言で流しているが、そんな言葉で流していいものではないと思う。

 非常に精巧に作られたディティールに、その圧倒的スケール。細部に神は宿るというが、大きさにも神は宿ると思い知らされる。


「みなさーん? どうしたんですか、ぽかーんとして」


 おっと、いかんいかん。どうやらうゆとフェリシアの2人も神像に圧倒されてぽかーんとしていたようだ。いや、こんなもん見せられたらぽかーんともなるわ。


「なに、立派な神像を前に、感受性を育んでいたところだ。この神像は素晴らしいな」

「いつまでも見ていたくなるような……ここが美術館なら、毎日通いたくなりますね……」

「別にいつでも無料開放されてますから、毎日通えばいいじゃないですか」


 それはそう。……そういや近所に市民は無料で入れる美術館とかあったな。存在は知っていたけど行ったことなかったし、今度行ってみるのも面白いかもしれない、と柄にもないことを思う。


「まったくもう。同じような神像があと7つもあるんですよ?」

「ん、それは楽しみだな。じっくり見るのは後にして、お祈りしていくか」

「そうだな、当初の目的だしな」

「ふふっ、忘れるところでしたね」


 パンパンと2回拍手をして、手を合わせて目を瞑りお辞儀する。あれ、先に2回お辞儀するんだっけ? 正しい参拝方法がわかんねぇ。

 ちらりと薄目をあけて横の看板娘をカンニングすると、膝立ちになり両手を組んでお祈りしている。そうだよな、ここはソムニアであって日本じゃない。

 スススッとシームレスに膝立ちに移行し、両手を組む。二礼二拍手一礼は無かった構え。


 隣から小さく「んっ」という声が聞こえ、こそこそと姿勢を変える音がする。

 お祈りを終え目を開けると、俺とうゆ、看板娘は膝立ちになって手を組んでいる。自然と3人の目線は立ってお祈りしているフェリシアへと向いた。


「ふふ、お祈りって何を考えればいいか毎回まよっ……え、あの……え? あれ?」


 自分だけ日本式のお祈りをしていることに気付き、顔が真っ赤になってゆく。


「郷に入っては郷に従えと言ってだな」

「ん」

「いや、2人とも途中までフェリシアさんと同じだったじゃないですか」



「ん~!!!!!」



 謀られたと言わんばかりに涙目になりながら、ポコポコ殴られる俺とうゆ。ちくしょう、簡単に仲間を売りやがって看板娘め!!

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