需要と供給
「親父殿、ついでに他のもいらんか? ギガコケコの素材など採れたてほやほやだぞ」
元両手ポヨゼラガールが他のドロップも押し付けようとしている。隙あらば俺の両手ポヨゼラも押し付ける構え。
「あぁ~? なら綿羽だったら買い取るぜぇ。そこそこ良い寝具の素材になるんだこれが」
「ん、買い取りで構わない。値段はそっちでつけてくれ」
「あの、売る側も相場を知ってないと、足元見られますよ?」
あー。言ってることはわかる。ただ、売却する度にゲームの素材一つひとつ値段を調べるのも、覚えるのも面倒だ。
「そういやお前らまだ無職なんだったな」
「無職と言うか旅人っすけど」
「同じようなもんだろ」
同じようなもんか? まぁ定職に付かずふらふらしてるって意味じゃ同じかもしれないが。
親父は何か考えていたが、どこかからか1枚の白いカードを取り出した。
これで2回目だが、人がインベントリ使ってるところ見るのは慣れないな。
「ほらよ。目利きのスキルカードだ、やるよ」
それはいいが、うゆは枕を抱えており俺は両手ポヨゼラボーイ。必然的にフェリシアに差し出されることになる。
「い、いえ……そ、そんな、貰えません……!」
「いいんだよ、大した値段もつかねぇコモンだしよぉ」
「えっとぉ……」
ちらりと横目で俺達を一瞥し、すぐに視界から外す。そんなに頼りにならなさそうだろうか。
「で、では、お預かり、します……つけると物の値段がわかる、ですか……?」
「目利きは感覚スロットだぁ、どうせ空いてんだろぉ?」
「空いてます……!」
空いてるっつーか何もつけてないけどな。
「つ、付けました……! えーと……?」
「何か変わった?」
「特には……あっ」
あたりを見渡していたフェリシアが、突然俺のポヨゼラを凝視しだした。いや、俺のじゃないが。
「1個15トラオム、だそうです」
「15かぁ~」
いまいちピンと来ない。だって相場とか他に何が売ってるとかわからんし。
しかし15トラオムで売れるならここで売り払っておくのも手か?
「ポヨゼラチン、20個あるし300トラオムでどっすか?」
「要らねぇよ。寝具屋でポヨゼラチンなんて何に使うんだぁ?」
そりゃごもっとも。売買を行うNPCなら武器屋や防具屋、果ては花売り少女ですら、売りつければ何でも買ってくれてお金を無尽蔵に出してくれるようなゲームとは違う。
「目利きはなぁ、商人ギルドが買い取ってくれる金額がわかるスキルカードよぉ。あそこに持ってきゃあ何でも買い取ってくれらぁ。ただし最低金額でな」
「逆に言えば、最低保証の金額が決まっているという訳だな。大方、買い取った資材はより高い値付けをして各商人へ卸すのだろう」
「そういうこったぁ。ポヨゼラチンなら15で買い取って30で売り抜けたりなぁ。
ポヨゼラチンが欲しいやつが自分で見つけられれば、20や25で売りゃあ売り手も買い手も得って話よぉ。
ま、そうそう見つかんねぇから商人ギルドっつー仲介が繁盛してんだけどな」
そりゃあそうだ。手に入れた戦利品を必要とする人を探すだけで朝が来てしまう。
「っつーわけでだぁ。商人ギルドに売っぱらう時は気にする必要はねぇが、個人に売っぱらう時は相場を確認するんだなぁ」




