やる気がなくなれば復活できない
「倒したんですか!? ギガコケコ!?」
寝具屋へ帰り父娘に戦利品を提出するなり、さっきまで「意外と早かったですね~、ピヨリンに泣かされでもしました?」なんて生意気言っていた看板娘。
だが戦利品の中に明らかに場違いなトサカを見て俺達がギガコケコと戦ったことを知るなり「無茶し過ぎです! 怪我はしてないですか!?」なんて手のひらを返し始めるものだから思わず笑ってしまった。
「笑い事じゃないですよ! 死んじゃったらどうするんですか!」
「心配しすぎだ、コトネ。旅人は死んでもやる気さえあれば復活できる」
「…………はぁっ?」
この人なんか変なこと言い出した……みたいな怪訝な顔だ。
「え? 復活する……よな? 親父さんからもなんとか言ってくれよ」
「いやぁ……知らんなぁ」
「「「……………………」」」
冷や汗がどっと流れる。もしかして、俺達相当やばい橋を渡ってたんじゃねぇか?
死んでもリスポーンするだけと思っていたから死を恐れず立ち向かえた訳で、永久死となれば話は別だ。
普通、この手のゲームで永久死なんて考えられないが、リアルさが半端ないソムニウム・セフィアの事だ。可能性はゼロとは言えない。かけがえのない一度きりの夢を、なんてな。
フェリシアなんか口に手を当てて今にも泣きだしそうじゃねえか。ギガコケコと闘りたいって言い出した張本人だからな。
こころなしか尾羽根もへにょんとしてらぁ。
――
――――
――――――
「旅人は死んでも生き返るってさ」
「えーっ!?」
それはそれで驚く看板娘。
外に出て大通りにいたプレイヤーに質問した所、全然普通にリスポーンするらしい。というかしたんだそうな。
それを聞いてフェリシアは安心したのか座り込んで、うゆに背中を撫でられていた。
と言っても代償がない訳ではなく、次のレベルまで1割程の経験値ロスト、1時間の能力値低下が課される。
そのプレイヤー曰く、何より一番イヤなのが、強制的に起床させられることなんだとか。
死んだ瞬間ハッと目を覚まし、なんだ夢か……となる寸法だ。
入眠サポートがあるからすぐにソムニアに入り直せるが、楽しい夢を中断させられて気分がいい訳がない。
ちなみにこのプレイヤーの死因は、ポヨヨが食べている草って美味いのかなと口に含んだ結果、毒性のある草でじわじわHPが減り回復が間に合わず死んだそうな。嫌な死因すぎる。
良かったなフェリシア、ポヨゼラに毒なくて。
「なんか心配して損しました。わたしの心配返してください」
「お詫びと言ってはなんだが、ポヨゼラチン食べるか?」
「食べません」
うゆの手のひらに行き場のないポヨゼラだけが残った。
「わりぃなぁ、旅人なんて昨日今日で急に増えただろぉ? だからよぉ、あんま知らなくてなぁ」
「い、いえ……こちらも存じ上げなかったので……」
「せめて俺達は知っとけって話だけどな」
「そうですよ」
うぅ、看板娘の視線が冷たい。うゆ、なんとかしてく……いつの間にかポヨゼラを両手に装備している……。ツッコミ待ちだろ絶対にしないからな。
「まぁそれはそれとして、依頼されてた鳥の羽毛っす。50個あるんで、全部いいっすよ」
「あぁん? 必要なのは20個っつったろぃ」
「戦い方を教えてもらったり、棍棒貰ったりしたお礼も込みってことで、受け取って貰えないっすか?」
「ん、樫の棍棒がなければギガコケコには勝ててない訳だしな」
「お、お願いします……!」
「そう言われちゃあ受け取らない訳にはいかねぇけどよぉ」
押し問答の末に、渋々ではあるが受け取ってもらえた。
人には簡単に恩を売るのに、恩を売られるのは渋るなんて難儀な人だ。
「うし、しっかと受け取ったぁ。コトネ、持ってきてくれ」
「はいっ!」
看板娘は元気に倉庫に走っていくと、扉に顔と手だけ突っ込んで、枕を掴んで戻ってきた。いつでも取り出せるよう入り口近くに保管していたのだろう。
「お約束のもふもふ枕ですっ! どうぞ!」
「おぉ!」
うゆは目を輝かせ、両手のポヨゼラを俺にパスして、急ぎ枕を受け取った。
やべ、ついポヨゼラ掴んじまったよ。
「ん……! これは良いものだ。
ありがとな、コトネ、親父殿。ノクスとフェリシアも感謝する」
「そんなに喜んでくれるんなら、頑張った甲斐があったよ」
「ですね……!」
「枕の中がヘタったら持ってこいよぉ。最初はロハで直してやんぜぇ」
「お父さん、そんな安請け合いしていいんです?」
「多めに納品されたし特別になぁ。そうだぁ、そん時はコトネ、おめぇが直してやんな」
「えっ!? でも、打ち直しはお手伝いしか……」
「いい加減手伝いだけも飽きただろぉ? 明日から教えてやんよ」
はわわぁ、と慌てる姿が微笑ましい。
と子供を見る目線でいたが、よく考えれば俺より小さいのに手に職持ってるってすごいよな。いま働けって言われても果たして何ができるか。
「ん、その時は頼むぞ、コトネ」
「んもう……仕方ないのでやってあげます。でも、大切に扱ってくださいね」




