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極稀に最初から動ける人もいる

「それではGMにょこから、軽いレクチャーです! 夢で自由に動くには慣れが必要ですよ~! まずは立って歩けるようになりましょう! お時間は15分ほどを予定してしていまーす」


 立って歩けるように、か。

 起き上がるまではなんとか一人でできたが、立つのは……どうだろう、やってみるか。


 座った状態からダンッと右足を踏み込み、現実のように立ち上がって…………バランスを取れずにコケた。無様なもので、受け身も取れずにズサーとヘッドスライディング状態だ。


「おい、大丈夫か?」


 見上げると隣に座っていた小学生ぐらいの女の子だ。くぅ、小学生に心配されるなんてなんだか恥ずかしい……いや、このゲームは中学生からだったよな? 見た目通りの年齢ではないだろう、だからセーフ、セーフ判定。


「大丈夫そうだな。だがその意気や良し。どれ、私も見習うとしよう」


 変な喋り方をするなこの子。何かのキャラのなりきりかな?

 俺のファースト無様を皮切りに、周りの人達もセカンド無様、サード無様とどんどん積み重ねていく。

 自分だけができないのなら途中で心が折れてしまうかもしれないが、周りもどっこいなら意外と頑張れるものだ。


「みなさ~ん、その調子ですよ~!

 協力しあうとより上達する傾向があるので、周りの人達で支え合ってみてくださいね~」


 人と言う字は支え合って~、と古典を引用しながら、GMはプレイヤーを立ち上がらせる手伝いをしている。


「人によって夢で体を動かす感覚は違いますからね、コツを掴んだら周りの人にも教えてあげてください!

 さて、立つ練習をしながら、ネットマナーのお勉強をしましょう!

 一応利用規約に書いてあることなんですけど読んでませんよね、軽くおさらいでーす」


 皆さんオンラインゲームを遊んだことはありますか? というGMの元気な声に、大多数が手を挙げる。俺はゲームでオンライン機能は使ったことあるが、オンラインゲームは経験がない。


 GMにょこの話では、夢と言えど他人と関わる場なので人の嫌がることをしないようにしましょう、という常識の範囲なお話だった。

 俺の夢なんだから自由にやりたいことをやらせろ! と暴走した人がそれなりにいたらしく、運営初期はまぁまぁ荒れたらしい。


「一人用コンテンツでしたらどんな事でもやって構いませんよ!」


 とのことで、ある程度棲み分けがされているそうだ。

 オンラインに繋いだ状態で素行のよろしくない行いを続けていると、自動で同類しかいないサーバーに振り分けられてしまうそうな。意図して迷惑行為を繰り返さなければ大丈夫とは言っていたが、肝に銘じておこう。


 ちなみに、ワンダリングドリーマーはソムニウム・スフィア以外にもコンテンツが充実しており、フルダイブ型ゲームを筆頭に、遊園地のようなテーマパーク、映画の登場人物視点で体験できる没入型シアターなどがあるらしい。

 なんと怖い夢、いわゆる悪夢を見ることもできるそうで、物好きの支持を集めてコンテンツが拡充の一途らしい。俺には関係ないな、うん。

 関係がないといえば、ワンドリには成年向けコンテンツがあることも小耳に挟んでいる。早く大人になりたいね。


 そうそう、楽しい夢だけじゃなくて睡眠導入モードもあるようで、コンテンツを楽しむ気力がないけど良質な睡眠はとりたい人、サクッと夜をスキップしたい人にはオススメだそうだ。


 なんて話を聞きながら、何度か立つチャレンジをしてはいるのだけれど……ああっ、立つまでは行けるんだけどバランスとるの難しっ!


 隣の女の子も「ぐぬ~」とか「むお~」とかいいながら長い髪を暴れさせコロンコロンしている。癒されるぜ。


「見世物じゃないが?」


 おっとすまんすまん。

 ジトッとした視線にバツが悪くなり顔を反対に向けると、俺と同じ背丈ぐらいの赤髪の男性と目が合うのだった。

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