VSデカピヨ
「コケーーーッ!!!」
いざ巨大ニワトリ戦……言いづらいからデカピヨ戦。
近付いてみるとこれはまた……デカいな。見上げるほどの鶏冠も含めれば2mは優に届くだろう。
ピヨリンが成長すればこうなんの? 嘘でぇ。
左右にバラけた俺とフェリシアには目もくれず、デカピヨはうゆに突撃し突っつき攻撃を繰り出す。
「んぬっ、これは……そこまで長く避けられん!!」
後ろや左右にちょこまか避けながら器用に突っつきを回避しているが、一番足元に不安があるのがうゆだ。
あまり悠長に見学していられないだろう。
樫の棍棒を握りしめ、デカピヨの斜め後ろから襲いかかる。
まずは弱点看破だったな。見るからにすぐ折れそうな、ほっそい脚に目掛けて軽く一閃。
キンッ!
キンッ!? 金属みてーな音でなかったか!?
感触も鉄棒を殴ったみたいだ。鉄棒を殴ったことなんてないけど。
「脚はやばい! めちゃくちゃかてぇ!」
これは全力で殴ってたら、反動で大きな隙を晒すこと間違いない。手も痺れてしばらく使い物にならなくなりそうだ。
「ノクス、タゲいったぞ!」
突如うゆから指示が飛ぶ。攻撃したことでヘイトが増えたのだろう、俺に向きを直し突っつき攻撃を開始する。
2m近い高さから振り下ろされるクチバシはあまりにも鋭利で……。
「うおぁ!! あぶねぇ!!」
体勢が万全だったから避けられたが、これを連続で避けるのはキツイ!
2人がヘイトを稼ぐまで避けに専念するゲームが始まった。
うゆのやつ、よく避けられたな。
「脚の上のお肉部分はポリゴンでます!」
「翼はダメだ、羽毛で通りが悪い!」
うゆとフェリシアによって攻撃の所感が伝えられる。
くそっ、鈍器なんだから頭が一番攻撃が通りそうなのは自明の理なんだが、攻撃を差し込もうと色気を出したら即被弾する自信がある。じれったいぜ。
「決まりだ、ダメージが通るモモを狙うぞ!」
「わ、わかりました……!」
一先ず方針が定まり、モモを狙っていく作戦になったようだ。
無駄に大振りにならないよう、スマートな一撃を繰り返している。
少しずつポリゴンが削れており、時々身じろぐ姿が散見された。
っていうかタゲ変更まだ!? 俺ばっかり執拗に狙いすぎじゃないキミ!!
いや、多分30秒も経ってないけど、体感2分ぐらい経ってる。
「ぐぅっ!」
ついに避けきれず突っつき攻撃を肩に貰ってしまう。ピヨリンの体当たりとは比較にならないくらい痛ぇ。
「ノクス、後ろに動け!」
「お、おぉっ!」
痛みに体が止まってしまったが、声の指示通りにバックステップ。
直後、俺が居た場所にクチバシが何度も振り下ろされる。うおっ、こえっ。
あと2回……いや、余裕を持って1回は攻撃を受けられるかもとは言え、できれば攻撃されたくない。
「共有! 一撃食らうと頭が真っ白になるほど痛い! あと頭に直撃したらたぶん一撃で死ぬ! 頭だいじに!」
「はいっ!」と「うへぇ~」という声が聞こえてくる。痛いの嫌だよな、俺も俺も。
っていうか何でタゲ剥がれねぇんだよ、なんでヘイト俺だけ高いんだ?
俺だけやった、ヘイトが高まる特殊な行動……ファーストアタックぐらいしか……後は脚を攻撃しただけだが、もしかしてそれか?
「フェリシア! 脚を殴ってくれ!」
「は、はいっ!」
指示はすぐさま行動に移され、ゴンッと重い音を響かせた。
直後、デカピヨは攻撃を中断し、フェリシアに向きを変える。
「すまんフェリシア、タゲそっち行った!」
「ふぇあい!」
「多分だけど、脚を殴るとヘイト爆増する!」
「ん、つまり脚以外なら全力で攻撃しても平気という訳か!」
ヘっヘヘっ、へいとぉ!? と叫ぶ声が聞こえるが、多分知らない単語なんだろうな。すまん、今は説明してる余裕がない。
今度はフェリシアが回避に専念し、俺とうゆが攻撃する番だ。ヘイトがそうそう移らないということで、スマートな攻撃から強振に切り替える。
デカピヨのモモの部分は比較的高い位置にあり、めちゃくちゃ攻撃しやすい。
ポヨヨやピヨリンは50cmぐらいしかなくて微妙にやり辛かったからなぁ。
あと、本格的に攻撃側に回って理解したが、回避役が大きく動くとデカピヨも追従して動く。つまり回避役の活躍如何によって攻撃側がどれだけ手数を出せるかが変わってくるのだ。
俺達戦闘素人、過剰に回避してしまい距離を離されることが結構ある。まぁギリギリ回避しようとして被弾するより何倍もマシだが。
「よいっしょおっ!」
体を半回転させて下から上にえぐり込むような一撃をモモに当てる。これは手応えあった!
ポリゴンも赤く飛び散る。これはクリティカルヒットってやつだな!
デカピヨも痛かったのか、一瞬身震いをした。これは決着も近いかも知れ……。
「コケーーーーッ!!」
ぶわっ!
デカピヨは突如一鳴きし、翼を広げる。風圧で俺とうゆは攻撃を中断させられ、たたらを踏んでしまった。
幸い、回避役のフェリシアは風圧の影響を受けていないようで、しっかりクチバシを凝視して攻撃に備えている。
この調子なら心配は無さそう……いや、なんか違和感がある……!
あの高鳴きは何の意味が?
攻撃速度が上がるか、行動パターンが変わるか……もしくは大技の前兆!
「フェリシア! 大技が来る、備えろ!!」
実際、その考えは杞憂とはならず直ぐに現実のものとなった。夢だが。
デカピヨは翼を羽ばたかせジャンプすると、フェリシアに向かって足蹴を繰り出す。
「見え……ました!」
咄嗟に横っ跳びで回避を試みるフェリシア。すぐ横を硬く鋭い爪が通り過ぎる。
間一髪だった。とは言え、横っ跳びで地面に腹這いになっているフェリシアは隙だらけだ。
いま攻撃されると連撃を受けポリゴンになるのは免れない。
「「フェリシア!」」
急いでヘイトを奪うべく駆け出し、担いだ棍棒を大きく振り被る。
奇しくも反対側の脚にはうゆが近づいており、棍棒を振りかぶっているのが見えた。
きっと、俺と同じことを考えたのだろう。俺は左足、うゆは右足。
それぞれの足目掛けて、全力で棍棒を叩きつける。
ダメージは稼げない、ヘイト稼ぎの一手。
金属のように堅い脚に棍棒を叩きつけた代償で、ぐわぁ~んと金属質の反動が手から胴体、足へと伝わってくる。
恐らくヘイトは奪えただろうが、手や足が痺れてまともに動けない。攻撃を避けられるかわかんねぇなこれ。
っていうか俺とうゆどっちが狙われる?
「っらぁ! デカピヨぉ! こっち見ろぁ!」
意味があるかわからんが、大声を出して威嚇しておく。狙うなら俺から狙え!
大技の硬直から復帰したであろうデカピヨが動く。
でかい図体を俺達の方に振り向かせ……。
「クケェーッ!」
ようとして、足を縺れさせて転倒した。
まだやる気は十分なようで、起き上がろうとジタバタしている。
なんだ? 足が痺れたのか? 俺達とお揃いだな!
しからば、転倒している今がチャンス!
「フェリシア!」
「頭だ、頭を狙えっ!」
転倒したデカピヨの頭はフェリシアのすぐ側だ!
復帰したフェリシアは千載一遇のチャンスをものとするべく樫の棍棒を振り上げ、バタバタ動く頭を見定める。
「やぁぁぁぁっ!!!」
気合一閃、裂帛の掛け声と共に棍棒がデカピヨの頭を打ち据える。弱点であろう頭部から大量に飛び散るポリゴン。
この一撃がトドメになり、全身からポリゴンが軽快な音を出しながら弾けて、跡形もなく消えていった。




