初討伐
昨日ぶりに街を出て南側、俺達は初めてモンスターと邂逅したエリアに戻ってきた。
目の前にはにっくきピンクのぽよぽよ……お前ポヨヨって大層な名前があるらしいな。あと別に憎くはない。
「今度こそ、絶対に倒す!」
親父から貰った棍棒を取り出し、握りしめる。剣を握った時のような高揚感はないが、このどっしりとした安心感が心強い。
「が、頑張ります……!」
戦うときは目を瞑りがちだったフェリシアは、気を抜くと目を閉じてしまうのか目を細くして睨みつけているように見える。
「ま、先のとは違う個体だろうがね」
うゆは身長が低いからか、杖のように地面についていた棍棒を掬い上げ、勢い余って後ろに倒れそうになり、フェリシアが支えた。
枕は抱いてないが、棍棒を握っていればまぁまぁなんとかなるようだ。
凶悪な形の棍棒を持ち、ゆっくりとポヨヨを取り囲む。
ノンアクティブモンスターと言えど、害意を持って囲まれれば流石に警戒はするようで、草をもぐもぐしながらこちらを睥睨している。
「まずは俺が一太刀キメる。そしたら後は流れで」
「かっこいい所見せてくれよ、ノクス!」
「の、ノクスくんはかっこいいですよ……!」
うぅ~ん、いまいち噛み合ってるんだかいないんだか。
まぁいい。樫の棍棒を握りしめ、上から下に力いっぱい棍棒を振り下ろす。
どんっ!
思わず力んで動きが硬くなってしまったが、先端がポヨヨに当たりポリゴンをまき散らす。
その飛散具合で、いつかの剣で斬りつけた時とは比べ物にならないことが物語っていた。
戦い方を教えてくれてありがとう、親父……!
「ぐぁっ!?」
とクリーンヒットの余韻に打ち震えていると、突如衝撃が走り、尻もちをついてしまった。な、なんだ!?
「ノクス、まだやっつけてないぞ!」
そう言うやいなや、うゆは体当たりの反動で宙を舞うポヨヨを棍棒でスイングし横薙ぎにする。
その一撃で体力が尽きたのか、ポヨヨはドロップアイテムを残して完全にポリゴンになった。
「大丈夫か?」
突如カットインして助けてくれたうゆの横顔に不覚にもときめいてしまった。
ぐぬ……なんだか複雑な気分だ。
「わり、助かったよ」
「まったく、親父殿は当てるだけでなく避けるのも重要と述べていただろう」
ん、と差し伸べられた手を掴み、グッと起き上がる。体重差とか大丈夫か、と思ったがそこは同ステータス、問題はなさそうだ。
「ありがとな、うゆ。かっこよかったぜ」
「どうせならかわいいと言われたいものだな」
「う、うゆちゃんはかわいいですよ……!」
むふー、と鼻息荒くドヤる。こいつぅ~~。まぁ今回は助けられたし見逃してやろう。
「そうだ、ノクス」
片手を上げてスタンバるうゆ。そんなに楽しみにしてたのか、これ。
俺も片手を上げ、掌をぶつけ合いパァンと音を鳴らせる。今度はいい音がなったな。
「おぉ……! 意外とひりひりするな、これ!」
「お気に召したか?」
「ん!」
「そいつはよかった」
何はともあれ、ピンクぽよぽよにリベンジ完了した訳だ。
ドロップアイテムを拾ってみたが、ピンク色のゼリー状の何かだ。ポヨヨの体の一部だろうか。多分桃味。
「しかしあれだけ苦戦してたのにあっけなかったなー。コトネが驚くのもわかるぜ」
「2回叩いただけですもんね。でも、痛そうでしたけど、大丈夫ですか……?」
「まぁこれぐらい……嘘、結構きた」
武器の新調で攻撃力は上がったが、喰らったら痛いのはそのままだ。防具はそのまんまだからな。
「殴ったあと離れないとだな。折角だから、本命に移る前にポヨヨで練習しておく?」
「ん。次はフェリシアが戦ってみるか? さっきは加われなかったしな」
「で、できればやりたいです……!」
棍棒をぶんぶんと振ってやる気をアピール。仕草はかわいいが持ってるものがかわいくない。
「いたぞ、ポヨヨだ」
「い、行きます……!」
「殴ったら退避な!」
「目を開けるんだぞ」
そろりそろりと草を食むポヨヨに近寄り、スイカ割りみたいに一撃! ぽこーん!
すぐさま後ろに飛び退き、ポヨヨからの攻撃に身構え……あれ?
「し、死んでる……」
「ポヨヨを一撃か。やるな、フェリシア」
流石我らのバーサーカー、攻撃力に定評がある。
「ち、違うんです……! れ、レベル、そう! 上がっちゃったから……!」




