渡りに船、それも豪華客船
「おいやめろぃ、そんな腰低くされたらやりにくいだろぉ!」
「でも俺らさっき冒険始めたばっかのレベル1なんで」
「よくそれで寝具屋探そうってなったなぁ!?」
ごもっとも過ぎる。
「親父殿の言う通り、あまり下手に出ると足元を見て不誠実な対応をする者も出てくるだろう。
だが、見るからに駆け出しな私達を見兼ねて依頼を振るようなお人好しだ。
まくら屋の2人ならば、そう無下に扱うこともあるまい」
寝具屋な、と訂正をいれつつも、顎髭を撫でて照れているので満更ではなさそうだ。
娘の方には若干敵視されてそうなのが気になる所だが。
「ほんじゃ、調達してきて欲しいのは鳥の羽毛だぁ。ざっと20個もありゃ十分だな」
「鳥の羽毛……お、お布団の中身、ですか?」
「おう。街の南側にピヨリンっつー黄色い飛べない鳥がいんだろ?
そいつらを倒すとドロップするぜぇ」
討伐依頼……!
思わずゴクリとツバを飲み込む。
2人も同じような心境だろう、と思ったが、フェリシアは「お布団!」とやる気に満ち満ちている。我らのバーサーカーさんは心強いなぁ、地面ずっと殴ってたけど。
「おいおい坊主、なに緊張してんだ。ちと面倒だがぁ、雑魚だから苦労はしねぇだろぉ」
「いや、そのぉ……」
「ん、言いにくいのだがな。実は先程、ピンク色のぽよぽよしたモンスター相手に負けてきた所でな」
言いにくいと言いつつ、俺の代わりにはっきりと述べるうゆ。まぁ実力を隠して依頼を受けても碌なことにならないから、言うしかないんだけど。
やはり想定外だったのか、寝具屋の親子は驚いているようだ。
「えーっ!? ポヨヨ相手に!?」
あいつ、ポヨヨっつー名前なのか。どうやらあいつに負けるのは信じられないぐらいヤバいらしい。
というか看板娘でも倒せるぐらいなのか?
ぽよぽよの体当たり喰らったら吹っ飛びそうな図体なのに偉いな。
「まぁ、戦えなくても仕事はいくらでもあるがぁ……」
「そ、そうなんですか?
……で、でも、戦えるようになりたい、とは思ってます……!」
ぐっ、と肩の前で拳を握りしめて決意表明するフェリシア。ピンクのぽよぽよ……ポヨヨにタコ殴りにされてた時は辞めちゃうかもなとよぎったが、杞憂に済んだようだ。
どこからそんな闘志が湧いてくるのかは謎だが。
「まぁ戦えたほうが仕事の幅が増えるのは確かだけどよぉ、ポヨヨに負けてんだろ?」
ふーむ、と顎を撫でながら考え込む親父。
ボタン1つで敵を攻撃できるゲームと違って、実際に身体を動かして敵を攻撃できるのがフルダイブの面白い所だと思っていたが、とんでもない。
画面の向こうでアクロバティックに動くキャラクターの真似をしろと言われてできるやつなんて、ほんの一握りだろう。
フルダイブでの戦闘が苦手な人もそりゃあいるし、そんな人の為に農業や料理、製造なんかのコンテンツがあるのだろう、恐らく。
って言っても、それらも自分で身体動かすんだよな?
フルダイブって巷で言われてるようなテレビゲームの上位互換かと思ったけどそんなことはなく、どちらも良い所がある一長一短だと思えた。
そんなアテもない事を考えていると、うんうん唸っていた親父が考えを纏めたようで、顎を撫でるのをやめて話しかけてきた。
「あいわかったぁ。
俺が稽古をつけてやろう。おめぇら、裏庭に来いや」




