善意の暴走機関車
「全く酷いやつだな、ノクスは。やり返していいぞ」
「いえ、そんな……」
「実行犯が全面的に悪いだろ。やり返してやれ」
「い、いえ……」
フェリシアを挟み責任をお互いなすりつけながら町中を歩く。
町は正直RPGの2番目の町という感じで、門番もスッと通してくれた。
煉瓦造の町並みで、そこそこ栄えている感はあるが、正直プレイヤーが多すぎて情緒もへったくれもない。
こんだけプレイヤーが跋扈して訪れたらパニックの一つじゃ済まないと思うのだが、どうも事前に神託があったらしく、今のところ喧騒は起きていない。
門番も問題を起こさなければ滞在しても良いが、なんか問題起こしたら即刻叩き出すぞと声を張り上げて言っていた。
が、いるんだろうなぁ問題を起こすやつ。まぁ他人の心配より俺達が問題児にならないよう気をつけるしかないか。
冒険者ギルドらしき場所を探しながら歩いていると、フェリシアがなにかに気付いたようで、あっと驚きの声をあげる。
「ん、どうした?」
「えっと……うゆちゃん、枕落としちゃったんですか……?」
枕……うゆが抱えてたやつか。
「あぁ、その事か。夢幻世界からソムニアには身一つ以外は持ってこられない。だから無くした訳ではないよ、安心してくれ」
一足先にベッドに戻って熟睡してるだろう、と笑い飛ばす持ち主。
フェリシアも安心したと人心地ついたようだ。
「それにしても良かったよ。枕なくても全然平気じゃねーか」
「…………あ」
「あっ?」
突然プチフリーズしたかと思うと、徐々に涙目になっていき、突然セミのように腕にしがみついてきた。
「は!? ちょっ、今まで平気だったじゃねーか!」
「思い出させるノクスが悪いんだろう! ……一度意識するとダメみたいだ」
こら、引っ付いて見上げるな、庇護欲が唆られるだろ。
「まぁ迂闊な一言だったのは確かだけど」
これは責任とって我慢するしかないか。
しかし、マジでなんか抱えてないと落ち着かないタイプなんだな。
緑色の推定オークは多分居ないだろうが、ピンクのぽよぽよは十分脅威だと認識してしまったし、不安に思うのも気持ちはわかる。
「の、ノクスくん……」
フェリシアが服をちょんちょんと引っ張って、何かを伝えたそうにしている。
「なにかあった?」
「あ、あの……まくら屋さんを探しに行きませんか?」
「ま、まくら屋ぁ?」
RPGでまくら屋……寝具店だよな?
そんなゲーム聞いたことないけど、あるんだろうか。
「この世界がどこまで作られているのか分からないが、住人がいる以上生活雑貨を売る店がある可能性は少なくないだろう」
「ですよね……!」
「だが、先に冒険者ギルドに行くのが……」
そう言いかけるも、フェリシアの暴走は止まらない。街ゆく人にまくら屋さんはどこか聞きに行っている。
「え、まくら屋さん? 僕さっき始めたばっかりで……」
「あっ、プレイヤーさんでしたか、すみません!」
「話しかけるなら初心者装備っぽくないやつにしとけー」
「わ、わかりました!」
善は急げと、プレイヤーを遠巻きに見ている住人らしき人たちに突撃しにいったフェリシア。
そんな行動力の塊を、うゆは遠い目をして眺める。
「私は柔らかくて抱えられる大きさの物なら、人形でも良いんだが……枕でないとダメか?」
「……せめて材質は良いの選ぼうぜ」




