ガイドの指示通りに進むだけも味気ない
紆余曲折あったが、無事に合流できたところで改めて辺りを見渡してみる。
どうやら町外れにいるようで、多数のプレイヤーは遠くに見える町を目指して歩いている。
「こういうのって町中にスポーンするもんじゃ無いのか?」
「そ、そうなんですか……?」
「説明不足な所はあるかもな。
もっとも、次の目的地や目標をガイドされるのに現代人が慣れてしまっただけかも知れないが」
たしかに、レトロゲームをやると投げっぱなしだと感じることが多い。
次に進む為のフラグが特定のNPCに話しかけなきゃならないとかいう鬼畜仕様で、一本道シナリオなら目的地ぐらい教えてくれと何度思ったことか。
「じゃ、手探りしながら遊んでいくか」
「ん。何も言われないという事は、自由に遊べという開発からのメッセージだと受け取ることにしよう」
しかし完全に自由となるとそれはそれで困りものだ。
「2人はこの世界で何かしたいことはある?」
「その、お友達ができたらいいなとは思ってて……でも、もう叶っちゃいました……!」
「そういう意味なら、私も当初の目的は達したようなものだ」
おいおい……夢が叶ったのは何よりだが、早すぎやしませんかね?
「そういうノクスは何がしたいんだ?」
「俺か? そりゃあせっかくのフルダイブRPGなんだし、剣と魔法のファンタジーだろ」
「ん、なるほどな。武器を振ったり魔法を使ったりなど、現実ではできないからな」
一応、剣道部とかに入れば竹刀を振るったりはできるとは思うけどな。流石に生き物に殴りかかったら一発で少年院行きだ。
「じゃあ、町に行く前に草原に寄り道でもするか」
「も、モンスターを倒すんですね。が、頑張ります……!」
フェリシアは殴ったり倒したりするのに躊躇がないよな。ストレス溜まってんのかな。
「っていうか、俺のやりたいことに付き合って貰って悪いな」
「え、そんな全然……!」
「なに、熱意のある者に引っ張られるのも時には悪くはあるまいよ」
熱意ねぇ。あまり買い被られても困るが、RPGの華と言えば戦闘だからな。
どんな戦闘システムなのか体験してみたいぜ。
――
――――
――――――
「いた」
身を屈んで手を挙げ、後ろに合図する。
うゆもしゃがんで俺の後ろに隠れ顔をにゅっと出し、フェリシアも理解するのに時間がかかったが5秒遅れでうゆの後ろにしゃがむ。
と言っても標的と俺たちの間に遮蔽物はなく、お互い姿は丸見えなのだが。
20mほど先に見えるはピンク色のぽよぽよとした丸い物体。俺達に気付いているだろうに意に介さず、近くの草をはみはみしている。
「か、かわいい……!」
フェリシアが唸るのもわからなくはない、いわゆるマスコット枠なモンスターなのだろう。
「なぁ、あれを本当に倒すのか?」
うゆが何か言いたそうに聞いてくる。あんまり可愛いモンスターだと倒すの躊躇うよな。
「でも、他のプレイヤーは戦ってるしさぁ……」
横目で見れば、別のぽよぽよと交戦している冒険者。ぽよぽよも反撃してるし、戦っていいやつなのだろう。
しかし戦うにしたってどうやって?
自慢じゃないが俺は格闘技を習っていない。習い事は精々そろばん7級ぐらいだ。
せめて短剣でもいいからなんか入っていてくれと虚空を2回叩きインベントリを開くと、なんと選べる武器ボックスなるアイテムが鎮座していた。
「お、好きな武器種を1つ選べるみたいだ」
軽く2人に共有し、インベントリとにらめっこを再開する。
ざっと見た限り片手剣、短剣、槍、斧、棍棒、ただの棒、杖、メリケンサックと色々選べる。流石にカタールや刀なんかの変わり種は無いが十分だろう。
……棒と杖の違いってなんだ?
武器選びに迷うと言いたい所だが、やはり冒険といったら王道の片手剣だろう。
剣道なんて習っていないが、なんとかなると思いたい。
「まずは俺が倒してくるよ。2人はそこで見てて」
インベントリの片手剣を実体化させ握ると、謎に勇気が湧いてきた。
分不相応な力を持つとろくな事にならないとは言うけれど、その気持ちがわかる気がする。
刺激しないようゆっくりと立ち上がり、草をはむはむしているぽよぽよに立ち向かう。
女の子2人とは違い、俺はかわいいぽよぽよでも少ししか心は痛まない。
「……いや、そういう訳にはいかない。私もやるだけやってみよう」
覚悟を決めたのか、いつのまにか杖を装備したうゆが隣に立つ。
杖ってことは魔法か?
「…………」
フェリシアも俺と同じ片手剣を選んだようで、じっとぽよぽよを見つめている。
まぁ、知らんプレイヤーを襲撃するぐらいだから、これぐらい訳ないわな。
「い、行きます……!」
当然のように一番槍を務めたのもフェリシアだった。片手剣を両手で握り上段に構え、ぽよぽよに向かって一直線に走り出す。
俺達のバーサーカーは相変わらず肝が据わってるぜ……!




