行動しないやつより行動するやつの方が偉い
「あっ、実績? 貰えました……。フレンド登録で100ポイント、だそうです……!」
無事にフレンドになった俺とフェリシア、笑い袋のうゆは、ソムニウム・セフィアへの行軍を再開した。三人でも立派な軍だ。
軍は最低5万人からだぞ、と笑い袋に突っ込まれるが、なんでそんなの知ってるんだよ。
「そ、それじゃあ、白夜くん達も年齢下限引き下げで、ワンダリングドリーマーが使えるようになったんですか……?」
「も、ってことはそっちも?」
「は、はい……両親が、これで社会経験を積むように、と……」
ということは、俺と年齢が近いのか。
やっぱり今日からしばらくは中学生ぐらいの初心者が街に溢れて、その何割かが勘違いしてプレイヤーを襲撃しちゃうんだろうか。
「ん、ワンドリは下手な交流ツールよりセキュリティがしっかとしてるからな。
悪い大人にひっかかる可能性は低いから親も安心できると聞く」
天網恢恢ならぬ電網恢恢だな、とのたまうが、良くわからなかったのでそのボールはキャッチできない。
フェリシアはあははと愛想笑いをしており、恐らくこっち側だ。
会心のジョークを潰されたのが納得いかないのか、めっちゃ頭突きしてくる。悔しいが今回は甘んじて受け入れよう。
「それで、その……自分ってばリアルでもこんな感じで……。
知人の居ない夢の世界では変われるかなって思って、その……頑張ってみたんです、けど……」
「それで人を襲ってちゃ世話ないわな」
「ひうぅ……」
「ガッツは認めよう。
挑戦に失敗は付き物、次は間違えなければいい」
「そ、そう言って貰えると……。つ、次は頑張ります……!」
ふんす、と両手で小さくガッツポーズをする仕草がなんだか小動物系だ。さっきはその小動物に押し倒された訳だが。
「ところで、あのぉ……お二人は仲が良さそうですけど、お友達同士なんですか……?」
「あぁ、まだ歩けもしない頃からの付き合いだぞ」
ついでにお隣さんだな、と誇らしげに胸を張る。システム的に割り振られただけだろうが、奇遇なこともあったものだ。
「えっ!? …………そうなんだぁ」
「さっきも私の部屋で駄弁ってたしな。
今度ノクスの部屋で宝探しと興じる予定だ」
「だから何もないってーの!」
今はまだ、だろう? と上目遣いでおちょくるクソガキだが……残念だったな、俺は挑発に弱い。
頭に手を起き、整った髪の毛をわしゃわしゃーっと乱せば報復完了だ。
女のいのちがーとわめいて手櫛をフル稼働しているが、ニヤけているので楽しいは楽しいらしい。
「いいなぁ…………」
おっと、何が琴線に触れたのか知らないが羨望の気配。
だがさっきフレンドになったとはいえ、出会ってすぐの女の子の髪の毛をわしゃわしゃする度胸はないし、多分わしゃわしゃが羨ましい訳ではなさそうだ。
オリジナリティ溢れる髪型のうゆもフェリシアの呟きが聞こえたらしく、髪を整えるのもそこそこに枕を小脇に抱え胸を張る。
「ふふん、良いだろう?」
「あ……すみません、つい……」
「こらこら、煽んなって」
「ん? どっかの誰かと違って、私はマウントを取る趣味はないが?」
そんな趣味持ってないですぅと言う抗議の声が聞こえるが、要審議だな。
「っていうか、良いなって何のことだ?」
「決まってるだろう、フェリシアもノクスの部屋を家探したいそうだ」
「ち、違います……!
えっと、あの、仲の良い友達がいるのっていいなぁって……」
仲の良い友達かぁ。
「ふふん、良いだろ?」
私のセリフ取るなよ、とねこパンチが飛んでくるが、PvP禁止エリアだからノーダメージだぜ。
心なしかフェリシアの目元が細くなった気がする。
「焦ることないさ。人には人の距離の詰め方とか、適切な距離感っていうものがある」
同じ部屋に無言でいると気まずいという人も居れば、無言が心地よいという人も居る。
俺も初対面の人間にいきなり肩を組まれてウェ~イされると、戸惑いの方が勝ってしまう。
「ん、無理に合わせる事はない。フェリシアのリズムで仲良くしてくれればいいだろう」
その言葉が胸に届いたのか、は、はい! と元気な返事をして一拍。
意を決して一歩踏み出し、
「うぇ、うぇーい!」
突然叫んでラリアットをかましてきた。もしかして、肩組もうとしてる?
これにはうゆも呆気に取られたようで、目をパチクリと瞬かせている。あんな表情もできるのかあいつ。
「え、えっと……ち、違いましたか?」
「うん、違うと思う」
「ガッツは認めよう」
この時、その日一番の「ひぁー」が街にこだました。




