仲間になりたそうに後ろから見ている
ソムニウム・セフィアへの道すがら。
横に並んで歩く2人と、少し離れて歩く1人。
「なぁ、あいつついて来るぞ」
「目的地が一緒なんだろ、戦う気満々だったしな」
「気をつけろ、また押し倒されるかも知れないぞ」
本当かぁー? と後ろを振り返ると、アサシン少女が首を素早く左右に振って全力で否定していた。
「残念だったな」
「なんだ、うゆは押し倒されたいのか?」
「趣味じゃないが、1回ぐらいなら良い経験かも知れないな」
と後ろを振り返ると、顔を赤くして先程より猛烈に首を横に振っていた。
うーん、実にからかい甲斐があるな。
「というか、さっきから思っていたのだが」
うゆが軽口を止め、後ろに向き直る。
「後ろからちょろちょろついてこられると気になるな」
「ひぅっ、すみません……! 向こう行きま……」
「どうせ目的地は一緒なんだ、こっち来い」
「すぅ…………え?」
「そうそう、一緒に行こうぜ。こいつぶっきらぼうな喋り方だからビビるかも知れないけど、悪いやつじゃないよ」
「なんだぁ、友人殿はどんな喋り方がご所望だぁ? んぅー?」
頭をぐりぐりしてうざ絡みするのやめろ。猫か。
「で、でも、襲っちゃったし……」
まぁついさっきタコ殴りにした相手だしな、気後れするのもわかる。でもなぁ。
「なぁノクス、まだ気にしてるか?」
「いや、別に」
「だそうだ。悪びれない人間は論外だが、自分を責め続ける人間も大概だぞ」
「ふえぇ……」
たしかに申し訳なく思う気持ちは美徳だけど、許してるのにずっと謝罪されても気分悪いよな。
もしかして、アサシン少女の中で禊がまだ済んでないのかもしれない。こういう時はなんでもいいから罰があれば自分を許せるものだ。
例えばジュース一本奢ってくれとか……この街には自販機なんてないな。コンビニも当然見当たらない。
うーん、ここでサッと済ませられるのは……そうだなぁ。
「じゃあさ、俺とフレンド登録してくれない? それでチャラってことで」
「えっ!?」
フレンドになれば対等な関係だし、と思ったが、借りがある相手に断りにくいよな。軽率だったか?
「嫌なら無理にフレンド登録する必要はないぞ。キチッと断っても文句は言うまい」
お、ナイスうゆ。
なんだかんだ機微に聡いんだよな。
「い、イヤじゃないです! むしろ、いいんですか……?」
「嫌じゃないのか。お前も変わったやつだな」
何か引っかかりがあるがまぁいい。手早くメニューを開き、フレンド登録を開く。近くのプレイヤー一覧が表示されるが、目の前のアサシン少女は……そう言えば名前知らないな。
「わりぃ、名前は?」
「あ、えっと、フェリシアって言います……!」
フェリシア……これか。フェリシア=シオンまでがフルネームのようで、名前をタップして申請を飛ばす。
通知音に驚いたのか小さく身体を跳ねさせ、慌ててメニューを開き画面と俺の顔を交互に見る。
「白夜……ノクス、くん……? ですか……?」
そういえば言ってなかったな。
やったぁーお友達だぁーと喜ぶ少女を見て羨ましくなったのか、ついでに私ともフレンドになっておくか? うゆも便乗して申請していた。
そんな、え、いいんですか? と顔を縦に何度も振って是非、と歓迎している。お、通知鳴ったな、フレンド登録したのだろうか。
「……あ゛っ゛」
さっきまでフレンド登録に喜んでいた嬉しい悲鳴とは別種の悲痛な声が聞こえた。
嫌な予感がしてメニューを開くと――
『フレンド申請が却下されました』
という無情な通知。驚いてメニューとフェリシアを交互に見比べてしまうのも仕方がないことだ。
「こ、これ……」
「ち、違うんです……! 手が滑って……!
すみません、今度は間違えずOKするんで、もう一度お願いします……!」
「だ、だよな? わかった、もっかいやるわ」
フレンドメニューからフェリシア=シオンの名前を選択し、もう一度フレンド申請を……。
『嫌がらせ防止の為、このユーザーには一定期間フレンド申請を送れません』
「しばらく再申請できないって。……俺たち友達になれないかも」
ぎゃーっ! っと大きな叫びをあげて、赤べこもかくやの勢いでペコペコするフェリシア。
不幸な事故だった、時間をおいて再チャレンジしようとなだめすかせる俺。
結局、腹を抱えてひとしきり大笑いしたうゆの「フェリシアから申請すれば通るんじゃないか?」という一言で事なきを得たのだった。




