夢の国の襲撃者(アサシネイト)
「や、やぁっーーーー!!!
えい、えい、えーーーい!!!」
ポコポコポコポコココココ……
「な、なんだ!? 痛っ……くはないけど」
馬乗り襲撃者の攻撃は顔面に届いてはいるが、グーというよりニャンな拳はなんの痛痒にもなっていない。
「そりゃそうだ、ここは戦闘禁止だからな。痛みは極力カットされているのだろう」
びっくりはしたけど痛みが無いなら冷静になるというものだ。襲撃者を観察する余裕もでてくる。
ニャンハンドでぐるぐるパンチを行う犯人は、目を瞑って攻撃を繰り出してところを見るに現実では暴力とは無縁なタイプなんだろう。
これでは痛みがオンだとしてもあまりダメージにはならなさそうだ。
気になるのは服装。そう、俺達と同じ始まりの服なのだ。ちなみに同じと言っても微妙に細部が異なり、キャラメイクの時に形状を数パターンから選べる。
この女の子の服装は、スカートのように見えるズボンの形状だ。後で調べてみたら、キュロットと言うらしい。
「満足したか? そろそろ良いだろう、私の友達を解放してやってくれ」
「えい、えい、え…………あ、あれ?」
恐る恐る目を開けた彼女は、何が起こったのか理解できず目を白黒させてぱちくりしている。
「なぁノクス、一体どんな恨みを買ったんだ?」
「心当たりがないなぁ。強いて挙げるなら、うゆの隣を歩いてたぐらいだけど」
「む、原因はまさかの私か? 熱烈なファンがいたものだ」
下に敷いている俺と横でけらけら笑っているうゆを交互に見ながら、状況の把握に努めようとしているのが見て取れる。
「プレイヤー……? え、モンスターじゃ……ええーっ!?」
……
…………
……………………
「ご、ごめんなさいっ……!
ぜ、全然知らなくて……!」
正気を取り戻したアサシン少女は、状況を理解し平謝りだ。むしろ憔悴しすぎて気の毒に感じてしまう。
「私は構わないが、ノクスがなんて言うかな?」
「なんも言わねぇよ」
「本当にすみません、すみません……!」
話を聞けば、どうやら俺と同じく既にソムニアの中だと勘違いしており、マイホームから一歩出た所で緑肌のクリーチャーを見かけたものだから、ここは既にモンスターの巣窟だ、と思い込み意を決して襲いかかったらしい。
緑肌のって、あの推定オークだよな。
あれを見てビビらないどころか覚悟を決めて殴りかかるなんて肝が座りすぎてないか?
っていうか初心者エリアを練り歩いてたのかあいつ。もはや愉快犯だろ。
「あ、あの、お怪我は……」
「あんな可愛いねこぱんちで、こいつが怪我する訳ないだろう」
「ひぅ……」
「それに、乗られてる時に口元が緩んでたしな。乱暴なのは嫌いじゃないらしい、どんどん乗ってやれ」
「え、ええ……」
「やめろやめろ、俺をヘンタイ扱いするな」
見てみろ、ドン引きしてるじゃねえか。可愛い女の子に乗られて嬉しくない訳ないだろ! にやけるのも不可抗力だ。
軽く肘で小突いて抗議の意を示すと、少し強めの体当たりが返ってきた。なんだぁこいつぅ。
「いや、こんな事をしている場合じゃないな。そろそろソムニアに行こうぜ」
「ん、寄り道が過ぎたな。まぁそういうことだ、もう他の奴に襲いかからんようにな」
「お、襲いませんよぉ!」




