いつのまにか・・
「おかあさん、あのね、きいてる?」
「え?ええ、きいてるわ。
それでどうなったの?」
「うん、あのね、ここならだいじょうぶ。テラのおかあさん、そう言ったの。
みんな、まっくらだけど、この中だったらね、何にもしんぱいいらないねって・・・・・そう言ったの。
寒かったぁ・・・・・・・。
だからね、みんな、毛布にくるまってたの。
れんげちゃんもね、もう十五さいだったから、がんばって、おとうとたちとかくれてたの。
でもね、
ズドーンっていうのと、ビカーッていうの、
光ったり、石がおっこちたり、みんなみんないっしょだったの。
お山がね、火をふいたみたいだったの。
みんなみんな、まっくろこげ・・・・・・・・・
あついよう・・・・・ここから出して・・・・・・・。
いつだったかしら・・・・・・・
日本からお坊様がやって来るまで、ずっとずっとそこにいたんです。
くらい穴の中に、お経がながれました。
なんどもなんどもくりかえし、お線香をあげてくれました。
わたしは、
じぶんが死んだことを知りました。」
いつのまにか、れんげちゃんの話し方は、うんとおとなになりました。
そして、れんげちゃんの目は、どこかとおくを見ているようでした。
「おかあさん、あのとき、唄ってくださいましたよね。
テラの前で立ち止まって、手を合わせ、ゴメンネ、ゴメンネって言いながら・・・・・・・。
きれいな歌・・・・・。」
れんげちゃんの口から、そのときのメロディーがながれました。
「わたし、ついていきたくなったんです。
おかあさん、あのとき、ほんとにありがとう。
まっくらなへやから、外に出られてうれしかったの。
そばにあった、金色のモスクまで、つれていってもらえたから、わたしは、ねむることができました。
あのね、
だからいま、れんげちゃんのそばにいるんです。
もう二度と、あんなにかなしいことがおこりませんように、みんななかよくできますようにって。」
おかあさんが、ふと見ると、れんげちゃんはいつのまにか、すやすやとねむっているのでした。
~おしまい~ '93,2,25
ここで、童話「かあさんあのね」はおしまいです。次回からは、この童話が生まれた背景を、少しずつお話していこうと思います。




