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童話「かあさんあのね」が、生まれた背景  作者: 琴乃夕月
第2章 現実に見えていたものと、そこで感じたもの・・
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伝え続ける決意・・

当時、日本に帰るとまず、自分の家族・親戚・友人・・そして、自分が元いた職場のみんなに何を見たのかを報告した。

あまりにも、日本で報道されていたことと違っていたから・・


もともと中東のことについてほとんど何も知らない状態で出かけた私の話だけに、行く前と帰ってからとで全く違うものの見方になっていたことにも驚きながら、みんなが信じてくれた。

特に元の職場の人たちは、私が無事に帰ってきたから、当然のように「復帰してくれるよね」と言って温かく迎えてくれた。「生きて戻ってこれる保証はないから、私のポストは空けておかずに次の人を入れてほしい」と言ってあったのに、みんな、私が戻ってくることを祈って、一人減った穴をみんなで埋めながら頑張ってくれていた。涙が出るほどうれしかった。


でも、私は戻れないと思った・・また出かけなくてはならなくなる・・それがわかっていたから、また同じように自分の大切な人たちに迷惑はかけられなかった。

「ごめん・・また行くことになると思う・・・だから、もう待たないで・・・」

イラクの状態が、もしも、報道にあった状況とそれほど変わらないようなこと・・つまり、とんでもなくひどい暴君のせいでかわいそうな目にあった国民という構図だったのならば、多少被害は報道より大きかったとしても、私は一過性のものとして、区切りの付いた段階で元の職場に戻っていたと思う。


その後も、中東にかかわり続けることになったのは、フセイン大統領の描いたイラクの未来図があまりにもすごいものだったこと・・そして、現実にそれに向かって突き進んでいたこと・・医療のこともインフラも教育も・・そしてイスラム圏という特殊な状況下での女性の権利の向上や貧困に対する福祉政策に至るまで、彼が大統領に就任して以来、かなりの速さで実際にそういったことがすでに実現されていた段階だったこと・・私たちがそれをすべてぶち壊してしまったことを知ってしまったから。

少なくとも、見てきた以上、それを自分にできる限り伝え続けるのは自分の使命なんだと思った。


もちろん、向こうでの写真を見せると、その光景だけでたいていの人がびっくりした。

ピンポイント攻撃で、両端を落とされた橋の写真、南部で、クウェート国境に続く道に、墓標のように散っていた戦車の写真、がれきの山と化していた南部の街・・(バスラやナシリアなど戦争直後に蜂起したシーア派との内戦で粉々になってしまった街)そして、空爆によって破壊された粉ミルク工場(化学兵器工場だと報道されていた)や、アムリエシェルター。

そして、3か月経っても道路のあちらこちらに転がっていた触るまでは爆発しないクラスター爆弾の写真・・

(実は、初めてこれを見たとき、なんだろうと思って、思わず触りそうになった。一緒に行った人の中にそれまで数々の戦場をつぶさに見てきたジャーナリストがいて「触っちゃいけない!!!」って止めてくれたおかげで、私はそれに触ることなく無事に帰国できた)

・・そしてむろん、これは写真に収めるようなことはしなかったけれど、そんな爆弾によって犠牲になった子供たちが、たくさん収容されていた病院の話・・


そんな中で、自分が全く知らない人たちにも少しずつでいいから伝えていこうと思うようになった。

もちろん話しやすい、病院の実情から・・


ちょうどそんな時に、フェリシモ出版で公募していたエッセイのテーマが「赤ちゃん」だった。

そこに応募するのはある意味すごく冒険だった・・でも、一人でも多くの人に伝えたかった。

もし、本にならなくても、少なくとも審査にかかわる人にだけは伝えられる・・

そう思って、私の見た「赤ちゃん」を描くことにした・・

そして、その作品が、桐島洋子先生の目に留まり、賞をいただくこととなった。

私の全く知らない人たちの目に、イラクの実情のほんの断片だけれど、届けられる・・

受賞そのものよりも、そのことがとてもありがたかったのを昨日のことのように記憶している。

受賞作品については、版権のことがあるので、ここに記載していいのかどうか迷いましたが、絶版になってしまっている作品なので、自分が描いたイラストとともに、次回記載しようと思います。


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