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童話「かあさんあのね」が、生まれた背景  作者: 琴乃夕月
第2章 現実に見えていたものと、そこで感じたもの・・
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ハンムラビ法典・・ハンムラビ王の想いとは?

あの有名なハンムラビ法典は完全なかたちで残る世界で2番目に古い法典である。

紀元前18世紀にバビロンの王によって建てられた玄武岩製の背の高い碑は、聖書の律法以前に作られた最も完全な古代の歴史的著作と法令集である。


(現存する世界最古の法典はウル・ナンム法典およびエシュヌンナ法典、リピト・イシュタル法典⇒すべての法典がメソポタミア文明と繋がっている)


なぜ、フセイン大統領がリスペクトしたのが、同じく現在のイラクの地となるウルのウル・ナンム王(紀元前2100年頃)やイシンのリピト・イシュタル王(紀元前1930年頃)のふたつのシュメールの法令ではなくて、「ハンムラビ法典」だったんだろう?

最古の法典を作り、その時代から法治国家として存在していたのだということを誇示したいのであれば、ウル・ナンム法典でもよかったはずなのに・・彼がこだわったのはなんだったんだろう?

とすると、なおさらハンムラビ王が制定した「ハンムラビ法典」についてきちんと理解する必要があると思って、例の一文について、友人となったアラブ人に尋ねると、だれもかれも私の解釈の間違いを必死で正した。


私は、中学の頃、歴史を習った時に、教師から「復讐を誓う残虐な法典」と聞かされたし、当時の教科書には残念ながらこの一部分しか記載されていなかった。本当にあの一部分だけで、全くハンムラビ王の考えたことを理解していなかったことに気付かされた・・


実はこの碑に書かれている文書は(楔形文字とアッカド語で書かれており)、3つの部分に分かれている。

正義の神である太陽神シャムシュの町シッパルに建てられたとされるこの記念碑の序文では、「弱者と虐げられた者を護る者」の役割の中で、ハンムラビ王の叙任および彼の帝国とその関係について述べられている。


序文に当たるところは、かなり詩的なので、神々に関する部分を除いて簡単に言えば、

神々が「神々を敬う私ハンムラビに正義を国の中に輝かしめるため、悪者とずるい者を無くす為、人々の福祉を増進させる為にアヌム神とエンリル神は、私ハンムラビに支配権を委ねたもうた。

・・ 私ハンムラビ国王は、法律と正義を、以下のようにアッカド語で規定することによって人々の福祉を増進させた。」

の一文に見受けられるように、この法典(2章はどちらかというと判例集)では、基本理念に「人々の福祉を増進させる」というのが置かれている。

そしてこの抒情的に書かれた序章から見られる目標とは、「1、バビロン国の中に正義を輝かせ、2、悪事や不正を行う人を無くし、3、 強者が弱者を虐げないようにする。」となっている。


2章では、バビロン王国の日常生活の規則に準拠する200近い法または裁判の判例が挿入されている。

そして実は、この判例の中に「目には目を歯には歯を」の一文があるのだ・・しかも、この法律は、「やられた以上のことを仕返しすることがあってはいけない。報復が報復を生み、それがエスカレートしていくと争いはとどまることがない」という王の考え(個々の判例の中ではこのもととなる考え方が記載されていない)から、法律としてこういった限度を決め、わかりやすくしているのだ。


法律の部分では、日常に使われている言葉が用いられ、王がすべての人にそれを理解してもらいたかったという理由から、ここでは文書が簡略化されている。

裁判の判決は、すべて同じ構成に従って組み立てられ、条件節で書かれた文章で、権利と社会秩序が述べられている。

「もしだれそれがこういった行為をしたなら、こんな事が起こるだろう」というふうに、過ちを犯した者(その人がどういう立場の人間かまで詳細に記載されている)にどういった処罰が待っているのか、あるいはどういう状況に置かれることになるのかといった決め事を定めた条例の形で、未来形で記載された答えが続いている。

この判例集に収められているテーマはそれぞれ章にまとめられ、民法と刑法を扱っている。

内容をつぶさに読んでいくと、犯罪被害者や遺族に対しても、加害者側に賠償を命じる条文や、加害者がわからないといった未解決の場合には、公金をもって損害を補償するといった条文も存在し、そしてまた被害の程度に応じて賠償額(銀を何シェケルというように)まで定めてあったのだ。


ハンムラビ法典は犯罪に対しての刑罰に関する記載のみが主になっているわけではなかった。

そこに記載されているものには財産の保障に関する項目もあれば、(当時は奴隷制度があり、その身分によっても刑罰の程度が変わっていたりはしたが)奴隷階級に対しても一定の権利を認め、条件によってはその奴隷の解放を認める条文が存在するし、女性の権利についても、女性の側から離婚する権利や夫と死別した寡婦を擁護する条文までもが含まれている。


叙情的な終章では、彼の正義の業績を要約し、「強者が弱者を虐げないように、正義が孤児と寡婦とに授けられるように」の祈りの言葉で結ばれている。


ハンムラビ王に対する見方が少し変わったことで、なぜ、フセイン大統領が、ハンムラビ王をリスペクトしていたのかが少しだけわかったような気がした。同時に、フセイン大統領が行っていた政治が、教育・福祉を重んじ、女性の権利を認めたものだったことも・・

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