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童話「かあさんあのね」が、生まれた背景  作者: 琴乃夕月
第1章 そしてわたしは目撃者の一人となった・・
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フセイン政権と女性の地位・・教育と福祉・・

アラブの人はおしなべて、漆黒の長いまつ毛で黒目がちのうるんだような瞳をしている人が多い。

私はまつ毛が短いほうなので、風によって砂が舞うとすぐに目に入ってくるような気がして大変だったけど、これだけ長いまつ毛なら、きちんと砂から目を守ってくれるのだろう・・

バグダッドのホテルでは、当時はまだ、カフェがなんとか機能していた。もちろんいろんなメニューが出せるわけではないが、20代くらいのきれいなウエイトレスさんが運んでくれる砂糖たっぷりのチャイ(紅茶)がうれしかったのを覚えている。


イラク女性総連合(General Federation of Iraqi Women)で、知ることとなったフセイン大統領の最大の功績は、この湾岸戦争直後の頃、イラクはおそらくアラブ社会で一番女性の地位が高く、そして教育レベルが高かったと思われること・・これは男女を隔てることなく国家として取り組んだ教育レベルの向上政策と、それを可能にするだけの福祉政策とにあったと思う。


1978年に、バース党は識字キャンペーンを始め、14歳から45歳までの男女に対し、政府が後ろ盾となって2年間の識字プログラムに国民の義務として参加するように呼び掛けた。

その翌年に、サダム・フセインが大統領に就任し、この政策を推し進めていった。

(のちのUNIFEMの調査によると、1985年には8%だった女性の識字率は94年には45%にまで上がったとされている)


フセイン政権というのは、特にアラブ社会においてはすごく画期的な政権だったし、かなりフェミニストだったんじゃないかと思われることが多い。というのも、専門的な資格が必要な職業についている女性が多かったのだ。

当時、教師のほぼ半分近く、医師の3割ほど、歯科医の半分弱、薬剤師の7割を女性が占めるようになっていたというのだから・・


イラクの女性が社会に出て働くことができるようになったのには、もう一つ大きな要因があった。

フセイン政権の時代、バース党の政策の中には、育児をしながら働く女性が必要となるだろう環境を整えていくというのがあった。職場の近くには無料保育が当たり前のように提供され、もし、乳児を世話する必要のある母親なら、午前と午後とに休憩時間を設けて、世話することができるようにしていたという。

そして、出産の1か月前から始まり、産後6週間に及ぶ出産休暇というのがあって、その間は給料の全額支給が行われ、さらに、その後半年間は育児休暇が認められ、給与の半額が支給されていたのだという。


また、勉学に携わる者に対しては、学校給食は無料で支給され、特に低額所得者への補助の申請を行うときに、普通のイスラム圏だとこういった申請は女性が一人で行うことはできないのだけれど、ここイラクでは、女性が、男性の保護者を必要とせずに、自分一人でこういった手続きを行うことができたというのだから・・

そしてこれは、男女の区別なく、就業する機関が国営工場の場合は職場までの交通費はすべて支給され、医療費は無料だったり、あるいは補助されていたのだという。


そして・・・この後のことは、私はそこで暮らしていたわけではないから、どんなふうにイラクが変化していったのかはわからない。

ただ、経済封鎖がその後12年間続き、イラク経済が疲弊して、すべての福祉政策が無に帰したと思われる頃・・2003年にアラブの民主化を謳ってイラク戦争を起こし、アメリカがフセイン政権を崩壊させた後、そこに待っていたのは、女性の人身売買や名誉殺人などの女性の人権侵害とされる現象の増加・・明らかに女性の地位は下がり、おそらく男中心の社会に逆戻りしたということだろう・・


イラクの人たちは、自分たちの歴史に対してものすごく誇りを持った人たちだということを、滞在していた間に何度も感じることがあった。そういった世界に誇れる文明を築いた自信が、イラクの人たちの精神を支えていたような気がしていた。


彼らのほとんどが、日本が直接には戦争に手を出していなくても、130億ドルを出したことを知っていた。

何度も聞いた言葉・・「お前はこうして来てくれた・・どこの国の人間であるかは関係ない」

そして、遠くから来てくれた友人として、迎えてくれていた。

多くの人たちは、自分たちが手に入れるのが難しい水でさえ分け与えようとした・・


アメリカの占領統治によってイラクは壊れた・・

彼らは、フセイン政権が順調だった時代を知っている・・その時のイラクに戻さない限り、イラクにとっての復興はあり得ないんじゃないのかな・・

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