暗躍
窓を打つ雨に男は気づいた。
男は、窓越しに空を睨み、イラついた表情を見せる。絶え間なく窓を打ち付ける雨粒が男を攻撃している様だ。
男のいるビルから、遠くの方で稲光が起き、数刻の静寂の後、低い音がビルを包んだ。
室内は、男ひとりで、執務机の上には飲みかけのコーヒーのマグカップとノートPCが置かれ、PCの液晶だけが、この部屋の照明になっている。
男は、しきりに愛用しているタグホイヤーの腕時計を確認している。
ノートPCの画面に動きがあり、着信を知らせるアラート音が鳴る。
画面に、『計画は滞りなく』と表示され、男はそれを見て緊張の色を少し緩める。
続いて、『次の定期連絡は、3時間後に』
男は、腕時計を見る動作をして、ノートPCを閉じた。
ゆうは、食事の後、決められた運動をこなすためにトレーニングルームに来ていた。レフが先にいて携帯端末を操作している。ゆうに気づき、さりげなく携帯をポケットに入れて操作を中断する。
「おじゃまだったかな」
「いや、そうでもない。今終わった所だ」
「そうなんだ。奥さんに?」
「まあ、そんなところだ。ゆうは何をしにここへ」
「ああ、さぼり気味になる運動をちょっとね」
「そうか」
そう言葉を残して、トレーニングルームから出ていく。入れ替わりにソフィアとジョンが
やってきた。
「私は医者よ。ゆうが怠けないか見張りにきたの」
「信用ないな。ジョンはどうしてここへ」
「あ、さっきそこで捕まえて来たの」
「テレビ中継までは暇なんだよ」
月軌道到着まで2時間を切った。




