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食事会

全員が集まり、食事会が始まった。

船長のオフィーリア、精神科医のエレン、マニュピレーター担当のカルヴィン、ゆう、主操縦士ジョン、医療担当のソフィア、船外活動担当のグレック、副操縦士のレフ、が並び円になる。

船内での食事は、本来何を食べても自由だが、3年前に地上で行った8か月間の閉鎖訓練では、各自が適当に好きな物から食べていたがために、訓練の最終日付近で毎食同じメニューでうんざりしてしまった。その反省を踏まえ、暫くはみんなで同じものを食べることとなった。

宇宙での食事は味気ない。みんなで食べても、食器がカタカタなる分けてでもなく、チューブから吸い出す音とか、パッケージについた食材をスプーンでこそぎ落とす音位しか聞こえない。その代り、宇宙では地上と違う楽しみ方がある。

隣にいたカルヴィンが、水を浮かべてゆうをけしかける。

「ほら、ゆう、みず」

カルヴィンとは、このプロジェクトが始まる前から知っている間柄だ。

コンピュータのリアルタイムシステムを開発するため立ち上げたGitHubにいつのまにかメンバーとしていてSNS越しに議論を交わしていた。言葉のニュアンスの違いについて話をすると、英国から参加しているとのことだった。

火星探査船でこのリアルタイムシステムが採用されると、現地での保守要員をNASAがSNSを通じて打診をしてきた。採用されただけでも凄いことなのに、宇宙に行けるとSNSがにわかに騒ぎはじめ、クローズドでの発言でなかったことから炎上騒ぎとなる。

騒ぎを聞きつけた人々がメンバーに登録しろと、ゆうとメンバーを脅迫したり、プロジェクトをFork(コピー)して、自らがオリジナルだと主張するグループまで現れてしまった。

ゆうは、プロジェクトをクローズドして沈静化を図り、それまでに所属していたメンバーで行きたい人を募った。

最終的に、カルヴィン、ゆう、共同で立ち上げた留学中の某国人ワンの3人が残った。

NASAは、英国人枠はオフィーリアが決まっているのでカルヴィンを選考から外した。

また、ゆうは、日本側は建設業界(ゼネコン)と押していた現地監督員兼船外作業員として若田健二を押していたが、すったもんだの末、NASAがゆうを押してきたため、日本側が折れる結果となった。建設業界の落胆は大きかった。

その後、某国が火星探査プロジェクトを降り、ワンがプロジェクトを去るとカルヴィンがそこを埋めることになる。

彼女が、ジョンソン宇宙センターに着任した日、初めて対面した。

肩まで伸びたソバージュの赤毛の髪が印象的で、薄らと化粧した頬には、そばかすが見え隠れしていた。

このプロジェクトで、カルヴィンとゆうは、相互にバックアップする補完関係にある。

カルヴィンが、マニピュレータ操作をメインに行い、システム監視はゆうがメインに行う。

ゆうは、照れくさかったがやらないともっと照れくさくなる。グレックが気づきてもしたら大変だ。

ゆうが、カルヴィンの出した水を空中で飲み、ゆうも水を空中にだし玉を作ってカルヴィンをけしかける。

すると、グレックが寄ってきて、水の玉を横取りする。

「なに、お前らいちゃついてるんだよ。お前らやっぱ出来てるんだろ」

「そんなわけないって、カルヴィンが迷惑するからやめろよ」

「まあ、いいや、カルヴィン、そこのPC取ってくれよ」

「カルヴィンとゆうの関係より、PCの方が大事なわけ」とエレンが横からちゃちゃを入れる。

「いや、カナックスの試合結果が気になってな」言いながら、カルヴィンからPCを手渡された。

「試合の結果は」とグレックが、PCを操作してストリーミング配信のニュース映像を見はじめた。

ニュース映像に映し出されたのは、プラカードをもって練り歩く市民だった。

テロップには、火星探査船のスイングバイの是非とある。

火星へは地球の引力を使ったスイングバイと呼ばれる加速方法を使って向うが、帰りは、エンジンの力のみとなる。当初は、「ホールスラスター」エンジンを採用していたのだが、

火星航行用の「ホールスラスター」エンジンの開発が難航したため、現状考えうる最大のエンジン「熱核エンジン」を搭載することとなり、「ホールスラスター」の採用は見送られた。

「熱核エンジン」の燃料には、プルトニウムが積み込まれている。

火星探査計画が発表されたとき、世間の受け止め方は好意的であった。

しかし、「熱核エンジン」を採用が発表されると、地球を利用したスイングバイの計画との関連を一部の科学者が問題にし、万が一に墜落した場合の被害を予想を発表した。

これにマスコミが飛びつき、否定的な意見が報道されると、好意的だった世間は、火星行を反対する意見が大勢を占めた。

それに加えて、某国が自国が抜けたあと成功を収めつつある本プロジェクトに危機感を覚えつつあるとの噂まで飛び出した。某国が直接攻撃を仕掛けて来ることは考えられないが、某国が支援するテロ組織の噂もある。

流石に宇宙に出でまでテロ行為を起こせるとは考えられないが、こうしている間も、米国宇宙軍による警備を受けている。

「地上の反対運動は過熱する一方だな」と他人事の様にグレックが感想を述べる。

ジョンは、「絶対成功する」と自信をのぞかせた。

食事が一段落した所で、オフィーリアが月に着いてからの段取りを話し出した。

「事前にミーティングは済んてるが、もう一度確認しておきたい。

月に着くと最後のテレビ中継が予定されている。エレン、テレビ中継の段取りを再確認したいんだけど。」

エレンは、意を得た感じで、意気揚々とテレビ中継の段取りについて語りはじめた。

船長のオフィーリア、英雄ジョン、船外活動担当のグレックがテレビに出演し、エレンがカメラマンとなる。

ゆうはソフィアと2人で裏方としてカメラスイッチャーを担当。

カルヴィンは、マニュピレーターを操作してドッキングの一部始終を撮影する。

レフはコックピットで不足の事態に待機する。

テレビ中継の段どりは、最終訓練の中で何度も何度も確認しているので、いまさらとも思えたが、エレンの熱のこもった説明を止めれる者はこの船に乗っていなかった。


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