いない子供たち 四
「今日は何の御用でしょうか?」
水蓮様は椅子に深く座り氷のように冷たく言い放つが王は気にもせず芯のある声で告げる。
「子供はいない。そんなことはあり得ない…でしたね?」
「それがどうしたのですか」
彼女はあくまで知らないという形をとるつもりらしいな。ならなぜ、刻印入りの布など使ったのだ?違和感が消えない。
彼女は私たちに一体何をさせる気なのだろうか……
「あなたは私たちに嘘をついてますね?」
「嘘などついていません。私に子供はいません」
「そうですか……ではこれは?」
彼は刻印入りの布を広げて見せる。
「これはあなたの家の刻印ですよね?」
「そ、それは…」
彼女は動揺しているような態度に見えたが、それは分かっていた事態のはず、ならばあの態度は演技なのかもしれない。
(刻印が彼女の子供だと物語っている…でも、なんであの遺体は骨が少し大きかったのだろうか?)
ずっと違和感があるままで会話は進んでいく。
「なぜ遺体の一人がこの布を持っていたのですか?」
「それは盗まれたものよ」
「盗まれた?この警備が厳重な宮でですか……」
あり得ないな。市井で起こった盗みとは訳が違う。上級妃の持ち物が盗まれた。それは盗みより侵入されたと言う事実が問題だ。
何よりそんな高価なものを売るでもなく、自分の子供を捨てる際に一緒に捨てるなんて意味が分からない。私には彼女の証言はめちゃくちゃで、その場しのぎにしか見えない。
(なぜそんな嘘を?余計に彼女だと言ってるようなものだろうに…)
疑いはより一層強くなり皆が彼女の子供だと思うはずだ。
「まさか……自分の子供だとばれることが狙いなのですか?」
私の口からは自然と言葉が漏れていた。
「何を言ってるの。この付き人は」
「い、いえ。すみません。何でもありません」
私は即座に謝罪して口を閉じるが彼が私に告げる。
「いい、続けろ。許可する」
私は言い淀み言っていいのかと水蓮様を見るも彼女は何も言わない。無言は肯定。そういうことなのだろう。ゆっくりと私は続ける。
「気になっていました。なぜこんな分かりやすい布など使ったのか」
私は少し息を吐きまっすぐ水蓮様を見て告げる。
「誰かに見つけてほしかった。そういうことなのですね?」
「……」
彼女は何も言わずただテーブルにあった紅茶を飲む。ソーサーにコーヒーカップが置かれて甲高い音が静かに部屋に響き反響していた。そして水蓮様は先ほどまでの慌てた表情でなく非常に落ちついた顔でぽつりとつぶやく。
「惜しいわね……足りないわ」
「え?」
彼女は確かにそう言った。
「もう一度考え直してきて」
そう言って彼女は私たちを部屋から追い出す。
「どういうことなのだ……私にはさっぱりわからん」
彼は頭を抱えていたが、それは私も同じだった。
(いったい何が足りない……)
謎は深まる。
私は彼女という螺旋に飲み込まれているのかもしれない。
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