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後宮特殊清掃員の骨がたり  作者: 水海雫
第一章 後宮の歪み

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5/14

いない子供たち 参

そこは木々が生え、陰で覆い隠されていた。

誰にも手入れされていない場所、故に隠すことや捨てる場所としては最適な場所だな。今のところ赤子の死体は見えないが鳥の鳴き声が響き渡り一層この場所を不気味に感じる。


「ここが「赤子の捨て場」ですか……」


私もここ来るのは初めてだが、その異様な空気にのまれそうで背中に寒気がする。ふと隣のを見ると王は目を細めて眉を歪めていた。彼もその異様さを感じているということか。


(ここに水蓮様の子供がいるかもしれない……)


「手分けして探すぞ。ある程度の遺体を集められたらここに戻ってきてくれ」

「分かりました」


そうして、私たちは左右に分かれて捜索を開始する。


______________________


あれから30分ほどたった。そして、気づいたのはその異様な赤子の遺体の数だ。遺体は一か所に集めているが限度を知らない。


(もうこれで3人目だ……)


定期的に父が確認に来ているはずだが………それでもこの数あるのは驚愕だな。それにしても、ここの無法地帯ぶりは酷い。


そこら中に朽ちた家具などが捨てられおり中には高価なものもあるじゃないか。しかし、上の人にとってはごみ同然。そう言うことだろうな。


そうしていると家具の影にまた遺体があった。その遺体は少しほかのより骨が大きく、布で覆われている。


「これで4人目……そろそろいいか」


私は遺体を荷車に入れて元の場所に戻るとすでに王が先にいた。


「どうだった」

「4人ほど集まりました」

「そうか……こちらも4人だ」


遺体を地面に並べる。


遺体はほとんどが裸で捨てられていたが、いくつかは布などで体を覆っていた。そして、ほとんどの遺体はどれも虫や鳥などに食われていたりしていたので骨が露出している。


そんな状態の遺体を見る彼の顔はすぐれなかった。


(まあ、仕方ない……)


彼の顔から視線を逸らす。原因は分かっているがただ黙る。気休めの言葉などは意味もなく軽いと判断したからだ。


彼はいい親の元に生まれたようだな、そうでなければ他の後宮の者のように無関心でいられるはずだ。しかし、彼はそれをしない。


(いや……できないのかもしれないな)


「おい!聞いているのか?」


思考していて彼の話は耳に入ってなかった。


「す、すみません。なんでしょうか?」

「はあ、この中に水蓮の子供はいそうかと聞いていたのだ」

「……そうですね…いくつか気になる点はあります」

「それはなんだ?」


私は一体の遺体を指さして告げる。


「この遺体は他と違って骨が大きいです」

「そうだな……」

「あと、いくつかの遺体は丁寧に布で覆われていました」

「それだけでどれが水蓮の子供だと断言できるのか?」

「いえ」


私は静かに首を振って遺体に近づき一人ずつ骨に触っていく。どれも小さく本来ならこれから太く、大きくなるものだ。


(私もこうなっていたのかもしれないな……)


一つだけ。そう一つだけ私は違っていた。


それが彼らと運命を変えた。


(そう思い込んでいるだけかもしれないだけかもしれないな……)


そう考えると背筋の冷たさは無くなっていく。


「おい、あの布妙に明るくないか?」


思考を切るように彼が言う。なのに目をやるとそれは確かに妙に明るい気がする………

気になり私は改めて布を手に取り広げる。


(この違和感はなんだ?)


布は手に自然となじむように質感がよくやけに軽い。これだけで安物でないことが分かった。そしてやけに明るく見えた。


(なんでだろう?薄汚れていてとても綺麗には見えないのに…)


布を優しく撫でてみると肌を擦るような感覚がした。


(これは……金?)


微かに重さが感じられた。私は立ち上がり骨の大きな遺体を指して彼に告げる。


「見てください」


私は彼に布を広げて見せる。


「下女や武官の子供ではこんな高価な布は用意できません。水蓮様の子供かもしれません」

「それだけでは断定は……いやこれは」


彼は私から布を奪い布の端を凝視する。


「水蓮の家の刻印…」


布には彼女の家の刻印が刻まれていた。まるで見つけてと言わんばかりに。


「しかし、よくわかりません」


私は刻印を指でなぞる。


「刻印は身分の証明………なぜこんなものを……」


わざわざ隠して捨てているのに見つけてくださいと言わんばかりにしたんだ?


(それに骨がなぜこの子だけ大きいのだ?)


今一つ腑に落ちない……

私は刻印に視線を向ける。布は風に吹かれて揺らいでいるように見えた気がした。


「とにかく、明日もう一度彼女に会いに行くぞ」

「私もですか?」

「ああ…命令だ」

「か、かしこまりました」


私は少し唖然としながら返事をする。


(彼から命令と直接言われたのは初めてだな……)


木々の揺れる音は重く低く響いていた。







読んでいただき、ありがとうございます。

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