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後宮特殊清掃員の骨がたり  作者: 水海雫
第一章 後宮の歪み

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3/14

いない子供たち 壱

雨が激しく地面を打ち付け濡らす中で上級妃の一人水蓮(すいれん)は傘もささず外にいる。豪華な着物は濡れて泥に汚れていた。


腕の中で生まれたばかり子供は泣き叫び続けていた。

母の愛情を欲するように。


「ごめんなさい……ごめんなさい」


そんな意味もない言葉をかけながら彼女は子供を人気のない場所に捨てる。そこは「赤子の捨て場」そう言われている。


去る彼女は振り返りしばらく赤子を見つめている。視線は途切れることなく赤子に釘付けだ。

しかし、彼女は背を向け迷いを振り切るように走り出した。そんな彼女を隠すように雨は降りしきる。


真実は雨の中に隠されたのだった…


_____________________


(派手だな…)


窓の外にある煌びやかな大きな建物は全体が白くところどころに金が混じっている。それは後宮の権力の象徴とでも言うようだ。

薄暗い部分を表しているように見えた建物は上級妃たちが住んでいる宮だ。

そこもまた後宮らしかった。


(私には縁遠いな…)


特殊清掃はいつも発生するものではない。

なのでいつもこうやって宿舎でのんびりしている時間が多いのだが、不満はない。

私好みの仕事だし、お金払いもいいのだから。


(こうなるはずではなかったけど……)


昔の話だ。

気にしても仕方ないとそこで思考を打ち切る。


「蓮華、暇なら手伝ってくれ」

「はーい」


父に呼ばれて私は作業室に向かう。

作業室には今までの骨を保管されており事細かに骨の状態を記録しており無数の引き出しには今までの遺体の骨がしまわれている。


その数はあくまで後宮内で起こった事件のや自殺の遺体の骨だけだ。しかし、その数は少なくない。


父はそこの管理を任されているが昔は父も現場に出ていたのだ。しかし、私が出るようになってからはもっぱら整理ばかり。


「そこの指の骨を取ってくれ」

「はい」


小さな子供の指の骨を父に渡す。

後宮内には子供はいないのだがその実たくさんいるのだ。


___見つかった時には死んでいるのだが。


「また、下女と武官の子供?」

「ああ、おそらくな…」


父は少し眉をゆがめて告げる。


(まあ、この人的には許せないのだな…)


私と似ているから……

父からすれば娘を捨てられたようなものだからだろう。その表情は明確に怒りや戸惑いがあった。私は気にしなくていいと言っているのだがなんとも優しい父だと思う。


武官は暇を持て余し、下女は外の刺激を知らない。気づけば関係ができる。そして生まれた子供だけが隠される。


結果、後宮内では子供は見ないが子供の遺体だけは多くある。そう言う歪な状況が出来上がる。


(何とも因果な場所だ…)


ドンドン。


入口をノックをする音が聞こえた。


「私が出る。蓮華は続けていなさい」

「分かった」


父は私に背を向け入り口に向かっていくその背中を少し視線で追って見ていた。

少しして壁越しから声が聞こえた。


「あなた様は……どうしてここに?」

「蓮華に用があってな」


あの声は聞き覚えがある。どうも王が来たようだった。私は骨を箱にしまって作業室を後にする。


入り口に行くと頭を深く下げている父がいた。


(この方はいったいどれだけ偉いのだ……)


父はここが長いのでベテランだそんな父があそこまで深く頭を下げているは珍しいな…。想像はしたくないが王はかなりえらい方なのかもしれない。


(ただの武官ではなさそうだ……)


役職付きかその上か。

雲の上どころか天界の方の可能性が出てきたな……言葉と行動には改めて気を付けよう。そう心に刻んだ。


「今日は何用でしょうか?」

「蓮華、事情を知っているお前に頼みたいことがある」


(事情?彼の身分についてだろうか?)


まあ、身分を知っている人なら頼みやすいからな。お偉方も誰にでも命令を下すのはよくないとされているし私は都合の良い駒になると言うわけだな。


「頼み事……また事件ですか?」

「いいや、事件ではないが確認したいことがある。それを手伝ってくれ」


もうわかっているがこの方からの頼みは強制で、断ることはできない。

つまり、私の返事は決まっている。


「かしこまりました」


深く頭を下げる。


それが私にできる生きる方法だ。















読んでいただき、ありがとうございます。

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