彼のことを知
「これは……」
私は遺体を作業室に持って帰り引き続き遺体の状態を確認していた。
「なんだ?また、何かわかったのか?」
「ええ、見てください」
彼女の頭蓋骨は粉々だがその他の数か所にも打撃の跡がある。メスを入れ骨を確認すると打撃があった場所はひびが入っている。これは複数回犯人に殴られた証拠だろう。
どうも犯人はかなり執拗に花瓶で殴打したようだ。その跡からは犯人の強い意志を感じる。
恨みか……怒りか……分からないけど強い意志の元で犯人は薬師を殺している。
「ひどいな……」
「ええ、あなたでは考えられません」
「ああ……だが確たる証拠には……」
「なりませんね」
私は肩を軽く下げ肯定する。
「……お前俺を助ける気はあるのか?」
ジーと彼に見られているのが分かる。
「ありますよ。確かに証拠にはなりませんがあることは言えます」
「あること?それは?」
「それは骨が粉々ではあなたがやった可能性が低いということ、そして動機が一切ないのに計画的なところです」
「?、まてまて一つずつ説明しろ」
「分かりました。ではまず動機と計画的なことですが、これは花瓶を見ればわかります」
そう言って回収した花瓶を指さす。太陽に照らされて綺麗に反射している花瓶は底が少し欠けている以外は綺麗で傷一つない。
「考えてみてください。もし衝動的なら花瓶の底が厚いことは知りません。もし普通の花瓶なら一回目で割れていたでしょう。ですが、執拗なほどの殴打の数。犯人はかなり強い意志を持って彼女を殺した。犯人は知っていたのですよ、花瓶の底が厚く殺人に使えると。」
「……つまり犯人はあらかじめ犯行計画を立てていた。そして、強い動機があったはずだ。そう言いたいのか?」
「ええ、ですから特別な動機がないあなたが犯人の可能性は極端に低い」
「……なるほど…しかし、私が彼女と知り合いだったらどうする?」
「……知り合いなのですか?」
目を細めてしながら問う。
「い、いや…違うぞ?」
「そうですか。なら問題ありません」
「そ、そうだな」
これで彼がやった可能性が低く拘束が間違っている可能性が上げられた。しかし、真犯人につながるものはない……
「で、骨が粉々の件はどういうことなのだ?」
私の思考を切るように王が話しかけてくる。
「ああ、その件は簡単です。骨は案外丈夫です。ですので複数回殴打しなければ骨が粉々はあり得ません。ですが、あなたのその体格なら少なくても殺すのに一撃与えれば十分ですし、下手をすれば花瓶が耐えられません。強い動機がないあなたには不必要な事です」
「二つのことがつながり俺の犯行を否定してくれる。そう言うわけか…」
これで真犯人が分からなくても十分彼が犯人でないと証明できる。
あとは骨と遺体の状況、花瓶を見せて説明すれば彼はきっと釈放されだろう。
「ご満足いただけましたか?」
「ああ、大満足だ」
これで事件は無事終息につながるかとも思われた。
だが、それをさせまいと彼は動き出す。
……余計なことを。
あの清掃員さえ、来なければ。




