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後宮特殊清掃員の骨がたり  作者: 水海雫
第一章 後宮の歪み

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12/14

彼のことを

「聞いた?」

「あの人が……」

「本当にかしら?」


朝の後宮は少し騒がしい。

いつもなら掃除をしている下女たちでさえひそひそと話している。

本当に捕まっているらしいな…


「父さん、現場は?」

「離れの離宮だ」


確かそこは病気で弱っている人間が集まっている場所だ。


「患者が死んだの?」

「いや、薬師がやられたらしい」

「薬師……彼と何の関係が?」

「分からない……ただ帝は事件をお聞きになり即座に彼を捕まえたそうだ」


不自然だな…いつもなら王が調査して慎重に犯人を捕まえるはずだ。なのに今回は即拘束した。迷いがない。まるで決められていたかのように。


「とにかく私、行ってくる!」

「あ、おい!蓮華!」


父の言葉を振り切って私は離宮に向かう。

後宮から隔離されるようにそれは池に囲まれた場所にあった。離宮前には役人が立っている。私が構わず入ろうとすると手で制される。


「今はここから先は立ち入り禁止だ!戻れ」

「特殊清掃員です」

「清掃員……お前が」


役人は少し目を細めて告げた。


「だめだ、通せない」

「なぜですか!いつもなら……」

「通してやれ」


いつもなら入れるのにそう言いかけた時後ろから声が聞こえた。聞きなれた低い声だ。


「……元気そうですね?」

「……ああ、まあな」


そこには拘束された状態の彼が役人を連れて立っていた。そんな彼の状態を気にせず。いつもの会話をし始める。


「王ではありませんよね?」

「……お前にはどう見える?」

「あなたはやっていない……そうですよね?」

「………」


彼は肯定も否定もしないが答えは分かっている。


「で、なぜここに?」

「帝より言われたのだ。疑いを晴らしたければ自分で証拠を探して来いとな」

「…合理的ですね」

「……はあ、そうだな」


彼は深く息を吐きうなだれる。


「とにかく中に入ってもいいですか?」

「あ、ああ」


役人は扉をゆっくりと開ける。中は匂いが籠っており薬の匂いなどで満たされている。奥に進んでいくと一室が封鎖されていた。


「ここみたいですね」

「そうらしいな」


中に入ると頭から血が出て倒れている女性がいた。私は役人に目配せするとしゃがみ込む。誰も止めない。いつものことだからだ。バックからメスを取り出し、彼女の頭を少し切り頭蓋骨の状態を確認する。出血量自体はあまりないようだがこれは……


……頭蓋が粉々だ。


彼女の近くには落ちている底が厚い花瓶があった。


「これが凶器のようですね」

「ああ、血がついてるな」

「ええ、どうも厚い底を使って殴ったようですね」


他の箇所なら割れていた可能性があるだろうからな。


この時点で彼が犯人でないことは確認できた。しかしこれだけでは弱い。やはり真犯人を捕まえる必要がある。


「できるか?」

「やります……この答えでいいですか?」

「ああ、満点だ」


そんな二人の会話を静かに後ろで真犯人は聞いていた。


(そんなことはさせない)






読んでいただき、ありがとうございます。

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