表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強ドラゴンだけどビビりなので勇者に倒してもらいます  作者: マコPON


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/40

第2話 動けない理由

第2話です。


まだ動けない状態ですが、少しずつ状況が見えてきます。

また、一つ崩れた。


 小さな影が近づき、触れた瞬間に形を失う。そのまま、何の抵抗もなく“中”に流れ込んでくる。


(……またか)


 拒む感覚はもう薄い。むしろ、どこかで分かっている。これが続くほど、自分の輪郭がはっきりしていくことを。


 実際、さっきよりも“見える”。ぼやけていた景色が、わずかにだが形を持ち始めている。


 暗い空間。荒れた地面。ところどころに、くすんだ鉱石のようなものが転がっている。


(ここ……どっかの洞窟か?)


 確信はないが、それっぽい。問題はそこじゃない。


(……動けない)


 何度試しても同じだ。力を入れる、という感覚はある。だが、何も動かない。まるで地面と一体化しているような、不自然な固定感。


(麻痺……じゃないよな、これ)


 試しに、別の方向へ意識を向ける。腕っぽい部分、脚っぽい部分。そもそもそれがどこにあるのか曖昧だが、それでも“動かそう”とする。


 ――動かない。


(……なんだこれ)


 ただ力が足りないわけじゃない。そもそも、“動くための前提”が足りていないような違和感。


 その時、また一つ影が崩れた。


 流れ込む。


 そして――


(……あ?)


 ほんの一瞬、何かが繋がった気がした。


 視界の端、自分の“体らしきもの”の一部が映る。崩れた骨のようなもの。ひび割れて、ところどころ欠けている。


(……骨?)


 人間のそれじゃない。大きすぎるし、形も違う。だが、“壊れている”という感覚だけははっきり分かる。


(もしかして……)


 今の状態を、無理やり言葉にするなら。


(壊れてる……から、動けない?)


 しっくりきた。


 完全じゃない。欠けている。だから動かない。


 いや――


(動けないんじゃなくて、“まだ動ける状態じゃない”のか)


 その考えに至った瞬間、妙に納得してしまった。


 直後、また影が一つ、二つと近づいてくる。


 崩れて、流れ込む。


 すると、今度ははっきりと分かった。


 内側のどこかが“埋まる”。


 欠けていた部分が、少しだけ繋がる。


(……これ、直してるのか)


 吸っているんじゃない。取り込んでいる。自分を“修復”している。


 そう考えると、今までの違和感が一本に繋がった。


(じゃあ……もっと来れば)


 思考が、自然とそちらに向く。


 さっきまで怖かったはずなのに、今は違う。必要なものを補っている感覚。足りないものを埋めている感覚。


 それが分かってしまった以上、もう拒否は難しい。


(……早く、来い)


 無意識に、そう思っていた。


 次の影が近づく。


 崩れる。


 流れ込む。


 ――その瞬間。


(っ……!?)


 初めて、“痛み”に近い感覚が走った。


 鋭いわけじゃない。だが、確かに内側で何かが軋む。


(今の……なんだ?)


 違う。今までと違う。


 流れ込んだ何かが、ただ“埋まる”だけじゃない。もっと奥に入り込んでくる。深く、強く、残るように。


 そして――


 視界が、さらに広がった。


(……見える)


 今度ははっきりしている。ぼやけていた景色が、一段階クリアになった。


 地面の質感。散らばる鉱石。自分の“体の一部”。


 そして――


 少し離れた場所に、まだ崩れていない“影”。


(……あれ)


 さっきまでと違う。


 消えていない。まだ形を保っている。


 だが――弱い。今にも崩れそうな、不安定な存在。


(……来るのか?)


 影が、ゆっくりとこちらへ向かってくる。


 そして、一定の距離に入った瞬間。


 崩れた。


 ――だが、今回は違った。


 流れ込む直前、ほんの一瞬だけ、“何か”を感じた。


 感情のような、記憶のような、断片。


 恐怖。焦り。逃げようとする意思。


(……今の)


 理解する前に、それは消えた。だが、確かに“残った”。


(これ……魂か?)


 ようやく、言葉が追いつく。


 さっきから取り込んでいるもの。それはただのエネルギーじゃない。


 “何かの名残”だ。


 そう考えた瞬間、背筋が冷える。


(いや待て、それってつまり……)


 自分が今やっていること。


 それは――


(……食ってる?)


 沈黙が落ちる。


 否定したい。けど、状況がそれを許さない。


 そして何より。


 それでも、止める気が起きない。


(……はぁ?)


 自分に引く。


 だが同時に、理解してしまっている。


 これをやめたら、“完成しない”。


 動けないまま、終わる。


(……それは、無理だ)


 静かに、結論が出る。


 怖いとか、気持ち悪いとか、そういう問題じゃない。


 生きるために、必要なこと。


 だから――


(……来いよ)


 次の影を、待つ。


 自分から動けない以上、来るものを受け入れるしかない。


 そのはずなのに。


 ほんのわずかに。


 “引き寄せている”ような感覚があった。


(……気のせいか?)


 確信はない。


 だが――


 遠くにいたはずの影が、少しだけこちらに寄ってきた気がした。


違和感は、気のせいじゃなかった。


 遠くにあったはずの影が、わずかにこちらへ寄ってくる。ゆっくりと、だが確実に距離が縮まっている。


(……なんでだ)


 風もない。地形が動いているわけでもない。それなのに、“寄ってくる”。


 試しに、意識を向ける。


(……来い)


 半信半疑で、そう思った。


 その瞬間――


 影が、明らかに加速した。


(……は?)


 さっきまでの鈍い動きが嘘みたいに、一直線に近づいてくる。そして一定の距離に入った瞬間、崩れて流れ込んだ。


(……今の、俺がやったのか?)


 偶然じゃない。もう一度やれば分かる。


 別の影に意識を向ける。


(……来い)


 同じだ。引き寄せられるように近づき、触れた瞬間に崩れる。


 流れ込む。


(……マジかよ)


 理解が追いつく。


 自分は、待つだけじゃない。引き寄せている。


 しかも無意識じゃない。今のは、明確に“意思”でやった。


(これ……便利すぎるだろ)


 同時に、少しだけ怖くなる。


 今まで偶然だと思っていたものが、全部“自分の力”だったとしたら。


(いや、でも……)


 止める理由がない。


 動けない以上、これしか手段がない。そして、取り込むほどに自分が“完成に近づいている”のも事実だ。


(……やるしかねぇか)


 意識を広げる。


 今までは目の前だけだった感覚が、少し外まで届く。暗闇の中に点々とある“影”の存在が、ぼんやりと分かる。


(あそこにも、あっちにも……)


 意識を向ける。


(来い)


 複数の影が、一斉に動いた。


 ぞわりとした感覚。まるで見えない糸で繋がっているみたいに、こちらへ引き寄せられてくる。


 次々に崩れ、流れ込む。


(っ……!)


 量が違う。


 一つ一つは小さいが、数が増えたことで“重さ”が増す。内側に押し込まれるような圧迫感。


(……でも、いける)


 さっきの痛みに近い感覚が走るが、耐えられないほどじゃない。むしろ、耐えた先で確実に“繋がる”のが分かる。


 欠けていた部分が埋まる。


 歪んでいた輪郭が整う。


 そして――


 周囲の景色が、一段階はっきりした。


(……見えるな)


 暗い空間。岩肌のような壁。散らばる鉱石。ここが洞窟のような場所であることが、ようやく確信に変わる。


 同時に、もう一つ気づく。


(……なんか、濃くないか)


 空気が重い。視界にうっすらと靄のようなものがかかっている。


 さっきからずっと感じていた違和感の正体。


(これ……煙?)


 いや、違う。煙にしては動きが遅い。霧にしては重すぎる。


 だが、確実に“満ちている”。


 その中を、影たちはさまよっている。


(……ああ、これか)


 ようやく繋がる。


 影が近づいてくる理由。崩れる理由。流れ込む理由。


(この中に入ったから、こうなってんのか)


 確証はない。だが直感的に分かる。


 この“靄”に触れたものは、長く持たない。


 弱いものから崩れていく。


 そして――


(そのまま、俺に来る)


 ぞくりとした。


 つまりここは、ただの洞窟じゃない。


(……俺の周り、全部これで満たされてるのか?)


 意識を広げる。


 見える範囲すべてに、その靄がある。濃淡はあるが、切れている場所はない。


 そしてその中心に、“自分”がいる。


(……発生源、俺じゃね?)


 一瞬、思考が止まる。


 否定したい。けど、状況がそれを許さない。


 影は、この靄の中で崩れる。そして自分に流れ込む。


 つまり――


(……これ、俺が出してる?)


 確信はない。だが、限りなく近い答え。


 もしそうだとしたら。


(ここ、俺の狩り場じゃん……)


 言葉にして、自分で引く。


 だが同時に、妙に納得している自分もいる。


 動けない理由。影が来る理由。吸収できる理由。


 全部が繋がる。


(……都合良すぎるだろ)


 誰かが用意したみたいな環境だ。けど、今はそれでいい。


 生きるための条件は揃っている。


 なら――


(……使うしかねぇよな)


 意識をさらに広げる。


 遠くの影に向けて、“引く”。


 微かにだが、反応がある。さっきよりも遠い距離からでも、寄ってくる。


(……範囲も広がってる)


 吸収した分だけ、できることが増えている。


 単純で分かりやすい。


(これ、やり続けたらどうなるんだ?)


 想像はつく。


 もっと見えるようになる。もっと繋がる。もっと動けるようになる。


 そして――


(……そのうち、動けるか?)


 初めて、はっきりとした“先”が見えた。


 今はまだ無理でも、いずれ。


 その時、自分はどうなっているのか。


(……いや、考えるのやめよ)


 深く考えるとろくなことにならない。


 今は目の前のことだけでいい。


 来るものを引き寄せて、取り込む。それだけだ。


 そのはずなのに。


 意識の奥に、妙な違和感が残る。


(……なんだこれ)


 さっきから、時々混ざる“感覚”。恐怖や焦りだけじゃない、別の何か。


 言葉にできないが、確かにある。


 そしてそれは、少しずつ増えている。


(……気持ち悪いな)


 振り払うように、意識を外へ向ける。


 影を引き寄せる。


 崩れる。


 流れ込む。


 繰り返す。


 だが――


 その中に、明らかに“違うもの”が混ざり始めていた。


 重い。濃い。さっきまでのものとは比べものにならない。


(……なんだ、これ)


 遠くで、何かが動く。


 影じゃない。もっと形を保っている存在。


 靄の中でも崩れずに、ゆっくりとこちらへ向かってくる。


(……おいおい)


 嫌な予感がする。


 だが同時に、逃げられないことも分かっている。


 向こうも、気づいている。


 こちらへ、来ている。


(……マジかよ)


 初めて、“来るのを待ちたくない相手”だった。

読んでいただきありがとうございます。


少しずつ“できること”が増えてきました。


次もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ