表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強ドラゴンだけどビビりなので勇者に倒してもらいます  作者: マコPON


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/39

第13話 名前を呼ばれた日

勇者との初共闘。

アルクは“倒さない戦い方”で支える。

だがその方法は、少しだけ特殊で――。

村を離れ、そのまま森を抜ける。


(よし……これで準備は整ったか)


 頭の中で整理する。


 ボスの位置、強さ、行動パターン。


(事前確認もできたし、あとは勇者に当てるだけだな。ここまで来ると、もう完全にイベント直前って感じだ)


 気配を探る。


 すぐに見つかる。


(いた。あのまま真っ直ぐ来てたら、普通にぶつかってたな……危な)


 勇者パーティは、村の手前で止まっていた。


「遅かったな」


 勇者がこちらを見る。


(いや普通に怖かったんだが……まぁそれは言わんでいいか)


「……確認していた」


 短く返す。


「何かあったのか?」


(来たな、この流れ)


「……いる」


 それだけ言う。


 空気が変わる。


「敵か?」


「……擬態型」


 仲間たちがざわつく。


「人間に化けるやつか……」


「厄介だな」


(まぁ普通に考えてそうなるよな。俺も最初ちょっと焦ったし)


 勇者は逆に笑う。


「面白ぇ」


(出たよこの人……ほんとブレねぇな)


「どこだ?」


(即行動かよ、いやまぁそういうタイプか)


「……村の中だ」


「よし、行くぞ」


(早い早い、ちょっと待てって)


 そのまま歩き出そうとする。


(このまま行ったら普通に接触するな……それだと流れが雑になる)


 少し考える。


(タイミング調整しないとダメだな。せっかくここまで仕込んだのに台無しになる)


「……待て」


 勇者が止まる。


「どうした?」


(ここでちゃんと理由付けないと怪しまれるな)


「……まだ動くな」


「なぜだ?」


「……準備が必要だ」


(それっぽく言ったけど通るか……?)


 仲間の一人が口を開く。


「罠か?」


(あ、それいいな)


「……近い」


 短く返す。


 勇者は少し考え――頷く。


「分かった」


(通った……よかった)


(これで時間は稼げる。あとは配置だな)


 ノクスが静かに言う。


「……配置最適化、推奨」


(やるか)


 視界が変わる。


 村の構造。


 建物の配置。


 人の動き。


 そして――


 “あの位置”。


(やっぱあいつだな。隠す気あるのかってレベルで分かりやすい)


 ルミナが楽しそうに言う。


「ボスいるのー!」


(いるな。しかも結構強いタイプだこれ)


(じゃあ配置を組む)


 見えない“線”を意識する。


(勇者がこのルートで入って――この位置で接触)


(逃げ道はこっちで潰して、こっちに誘導すれば……)


 イメージを組み立てる。


(これ、かなりいい形になるな。無理なく当てられる)


 自然と口元が緩む。


(めっちゃ楽しいんだがこれ……完全にボス戦前の準備じゃん)


 勇者がこちらを見る。


「もういいか?」


(タイミング来たな)


「……行け」


 短く言う。


 勇者が笑う。


「任せろ」


(いや任せるのはこっちなんだけどな……まぁいいか)


 パーティが動き出す。


 村へ。


(開幕だな。ここからが本番)


 胸が少し高鳴る。


(頼むぞ勇者。いい感じに倒してくれよ)


 ビビりながらも。


(……いや、普通に楽しみだわ)


 戦いが始まる。


勇者パーティが村へ踏み込む。


(よし……ここまでは予定通りだな。あとはちゃんと当てて、崩さずに繋げるだけだ)


 視界を広く取る。


 建物の影、人の流れ、気配の歪み。


(あいつも警戒してる。なら、むしろ動きは読みやすい)


「困っていることはないか!」


 勇者が声を張る。


(出たよ王道ムーブ。でもこれでボスも動く)


 村人が集まり、空間の密度が上がる。


(……いた)


 紛れている。


 擬態したボス。


(真正面からの不意打ち狙いか……そのままは通さない)


 一歩。


 二歩。


 三歩。


「勇者様――」


(来る)


 踏み込み。


 死角からの一撃。


「ノクス、少しだけズラせ」


「……干渉開始」


 敵の足がわずかに引っかかる。


 ほんの数センチ。


 それだけ。


 だが、そのズレで。


 本来なら死角に入るはずの軌道が、


 勇者の視界へ滑り込む。


「――っ!」


 勇者が反応する。


 剣が振られる。


 ガキンッ!!


 刃がぶつかる。


 その衝撃で。


 擬態が歪む。


 皮が裂ける。


 異形が露わになる。


「チッ……!」


(はい確定)


 戦闘が始まる。


 勇者が踏み込む。


 だが。


 ガキンッ!!


「……ぐっ!」


(押されてる……出力差があるな)


 ボスが押し込む。


「終わりだ」


(このままだと崩れる)


「ノクス」


「……防御、頼む」


「……了解」


 体が動く。


 勇者の前へ滑り込む。


 盾を構える。


 ドンッ!!


(……っ!)


 衝撃が走る。


 腕に伝わる重さ。


(力で負けてるわけじゃない……ただ、この距離で受けるのは普通に怖い)


 一瞬、本能が引く。


(でも、ここで退いたら意味がない)


 踏みとどまる。


(ここからだ)


 距離が一気に縮まる。


 顔と顔が、ほぼ接触する距離。


(……うわ近っ)


「何のつもりだ……?」


 敵が睨む。


「……行動固定」


 ノクスの声。


 体が止まる。


 敵も、自分も。


 見えない“線”に縛られたように、完全に硬直する。


(よし……今なら確実に入る)


 後ろから声が飛ぶ。


「おい……何してる?」


「近すぎないか……?」


「まさか、交渉してるのか?」


(いや違う違う違う!!)


 だが今しかない。


(いけ)


 口を開く。


 ――ゾンビブレス。


 腐敗の息。


(出しすぎるな……殺すな)


 量を絞る。


 濃度を調整する。


 狙いは――敵の口内。


 直接、叩き込む。


「――ッ!?」


 内部から崩壊が始まる。


(効いてる……いい、この状態なら“仕上げに繋げられる”)


 その時。


「主様は息がとっても効くのー!」


(やめろ!!)


 一瞬でテンションが落ちる。


(褒め方が最悪なんだが……!)


 内心で軽くダメージを受ける。


 硬直が解ける。


 同時に。


 敵の反撃。


 ドンッ!!


 盾に直撃。


(ぐっ……!)


 あえて後ろへ仰け反る。


(これで自然に見える)


「……交渉不成立だ」


 それっぽく言いながら下がる。


(これでバレないだろ)


 敵はまだ悶えている。


 隙が完全に開いている。


「アルク!!」


(……来た)


 名前で呼ばれる。


(今、アルクって……)


 だが。


(今だ)


 視線で誘導する。


 勇者が踏み込む。


「おおおおお!!」


 一閃。


 剣が振り抜かれる。


 ボスが完全に崩れる。


 消滅。


 静寂。


(……終わった)


 息を吐く。


(普通に怖かった……)


 勇者が近づいてくる。


「アルク」


(また呼ばれた……)


「助かった」


 手が差し出される。


(マジかよ)


 握る。


 握手。


(うわ……これ完全にイベントじゃん)


(勇者に名前呼ばれて、握手してるんだけど!?)


(やばい……めっちゃテンション上がる……)


 表情は抑える。


 だが内心。


(最高なんだが)


 完全にテンションが振り切れる。


「……見直したわ」


 魔術師が口を開く。


「正直、怪しいと思ってたけど」


 一拍。


「今のは助かった」


(お、認められたな)


 空気が変わる。


 完全に受け入れられる。


「仲良しなのー!」


(そう見えるよな!?)


「……戦闘終了」


(いやそれどころじゃねぇ)


 空を見上げる。


(やっぱこの世界、最高だわ)


読んでいただきありがとうございます。


アルクが初めて「名前で呼ばれる」回でした。

小さな変化ですが、関係性は大きく前進しています。


そして戦闘は相変わらず裏方スタイル。

ただし今回は少しだけ、体を張ったサポートになりました。


次回は戦闘後の流れと、さらに距離が縮まるやり取りへ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ