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10−4 騒動の翌日

 そういう訳で、全員が王子が今回こんな場所に皆を連れて来た理由を知った。ただ、夕食は王都より新鮮な野菜を使った料理が出た為、皆一応怒りの矛は収めた。


 問題は夜、地下の方から悲鳴が聞こえて来た事だが、そこは自業自得だろうから皆気にせずに熟睡した。殆どが魔女だから人間の悲鳴如きで眠りを妨げられる事は無かった。


 クリスティンは早朝、懲りずにクロちゃんを誘って散歩に出た。

「隣国が騒がしいと、こちらにも騒ぎが波及してきて嫌ね」

いや、既にひと騒ぎを終わらせたから、慰労でここに連れてこられた筈なんだが、とクロちゃんは思ったが、今必用なのはクリスティンを宥める発言だと思ったのでそれは言わなかった。

「要するに介入して欲しくないだけなんだろうが、だったら手を出して来るなと言いたいよな」

「まあここで食い止められたから良かったけどね」

「あとは王子経由で国王が上手く交渉してくれれば良いんだが」

「まあ、上手くあの王子様を使っている王様だから、隣の国とも上手く交渉してくれそうだけどね」

「下々の者は国王の評判など分からないからな」

「それぞれ異端の村や里の住人だった者としては、自分達にちょっかい出してこなければ比較的良い王様、という程度にしか思わないものね」

「普通は領主が良いか悪いか程度しか噂しないからな、平民は」

「そうね」


 チチチチ、と小鳥の幼鳥が囀るのが聞こえた。幼鳥とその母親を驚かせたくないから、二人は道を変えた。

「春だな」

「ふふふふ、春が過ぎたから騒がしいのだけどね」

また答えにくい発言を、とクロちゃんは思ったが、案外クリスティンだから動物達の事しか考えていないのかもしれない。

「学院の裏の森で猫とかが騒がないと良いんだが」

「あら、雄同士の決闘ならよくやってるわよ。負けた方が可哀相なんだけど、一目散に逃げていくから治してあげられないの」

「それは仕方がないよ」


 そろそろ花が咲く草も多く、蕾を多く抱えた草や、もう小さい花を咲かせている草もあった。しばらく獣道を歩いた後、クリスティンが言った。

「今朝はいないみたいね」

「そういう目的じゃないかとは思っていたよ。俺にも不審者は感じなかったな」

「そういう言い訳で二人で過ごしたんだけど、嫌だった?」

「もちろん、嫌じゃないよ」

好きな女の子と手を繋いで歩く。それが至福の時間でなくて何だろうか。相手の女の子にとっては犬の散歩の時間かもしれなくても。


 朝食を済ました後のお茶の時間に、第三王子エドウィンが口を開いた。

「昨日の賊の事だが、やはりノルマン公の部下の様だ。ここから南にある村に騎士団を待機させておいたから、彼等を呼んで午後には王都へ連れて行く予定だ」

この中で、王子以外で政治的な事に一番興味のあるのはクライブだったから、クライブが質問をした。

「王家としては、どう処理されるおつもりで?」

「もちろん、事を荒立てないで貸しを作る方向だ。何しろ北の国の王が誰になるか分からない状態だからね」

「それならよろしいかと思います」

純粋に好奇心でクリスティンが質問をした。

「彼等はこちらに上陸作戦を行った者達と関係があるのですか?」

「現時点では分からない。但し、恨みがあるとしても、上陸作戦自体は正体を明かさぬ蛮行だった事から、それを恨みと明言する事は外交的に許されない。ノルマン公自体が蛮族の王と見做されるから。そこは気にしないで良い」

「そうですか…」

クリスティンの心配も分かるが、風塵の魔女の方では容赦なく皆殺しにしたと聞く。恨まれるならそっちだし、恨んで襲えば情け容赦ない返り討ちに会うだけだろう、と皆思っていた。


 昼食前に騎士団が王家の別荘にやって来た。犯人護送用の装甲馬車にぼろぼろになった犯人達が乗せられていった。女性に見せるものでもなかったが、犯人達が暴れた場合にそなえて魔女達を控えさせていたんだ。


 もっとも、カーラがらしい発言をしていた。

「ボロ雑巾にするなら一人くらい任せてくれれば良かったのに。って言うか三人は拷問する権利があった筈だが」

止めてあげて、切り傷の出血で死んだらどうするの、と皆思っていた。

「拷問とか下品だよね」

「そうだな」

等とデボラとレジーナは他人事みたいに喋っていたが、彼女達の連行して来た三人は別荘に着いた時に既に消耗しきっていた。実質拷問代わりの扱いをして来た自覚は無い様だった。


 そうして不法侵入の犯人達の送り出しが終わったところで王子の護衛達の手が空いたので、ようやく一行も王都へ向けて出発する事が出来た。ブルーベルの保護地に着いた時は午後二時であり、何となく太陽が傾いた午後の気怠い雰囲気が漂っていた。それでもクロちゃんと手を繋ぎながらブルーベルの近くでしゃがんだクリスティンは、幸せそうに微笑んでいた。

「ふふ、可愛い花ね」

「そうだね」

クロちゃんは口には出さなかったが、君の方が可愛いよ、と思っていた。


ジェシカはクライブと並んでしゃがみ、ブルーベルを見ていた。

「こうやって見ると可愛い花ね」

「君の方が可愛いよ」

クライブは普通に口に出した。ひたすら尽くさないとジェシカは逃げていくタイプと分かっていたから。

「そういう言葉は何度も口に出すと軽く聞こえるわ」

ジェシカは恥ずかしがってそう言うが。

「仕方が無いよ。君がとっても可愛いのだから」

ジェシカも頬を薄く染めていた。満更ではないんだ。


 もっとも、傍で見ていたジャッキーからすれば、今からここまで尽くして今後どうするんだと思っていた。

 連休に入ったので弛んでおります。毎日1話しか書けてません。そういう訳で明日のキアラの分までは書きました。余裕があったら短編書きたかったんだけど…


 

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