2−3 MAN & WOMAN
アッシュ、あなたなら幼い時はどう成長したのかしら
私の可愛い子犬は里の魔女の怖さは知っている様だけど
知っているつもりなだけかもしれない
大やけどをすればそれが成長に繋がるかもしれないけど
できれば辛い目に会って欲しくないの
氷結系の魔法は3年生で習う事だった。クリスティンは氷結系の呪文を調べてみたが、射出系と壁系の呪文が存在した。一方、水面を凍らせる様な呪文は無かったから、アイスウォールかアイスボックスの応用と思われた。
(或いは、やはり魔女の里の出身だからこその無詠唱の魔法故の自在の氷結なのか)
しかし魔女の里の出身なら泉の一つや二つ簡単に凍らせられるのではないか、という推測もある為、無謀な1年生の暴挙という説も捨てられなかった。クリスティンは魔法の呪文に興味があるからどんどん先を覚えようとしていたが、まだ氷結系には辿り着けなかった。呪文を覚えきれないし、発音により効果が微妙に変わるから十分な練習が必要と思われた。
(入学前から予習が進んでいた1年生か、それとも2年が先走っているのか、3年なのに氷結系が上手くいかない者か)
色々想定は出来たが、あの泉の凍り方から断定は出来なかった。
昼休みは4組のクロちゃんに何らかの噂が立つのを避ける為、2組あるいは上級生のハワード兄妹もクリスティンもクロちゃんに近づかなかった。
そういう訳で昼休みのクロちゃんは『孤高のビースト』だった。眉に皺を寄せたまま食堂で昼食を食べた。そして裏の森に向かった。彼には悩みがあった。もちろんクリスティンの事だ。彼は一個の少年としてクリスティンに好意を抱いているが、クリスティンは一個の少女としてクロちゃんの事をどう思っているか…少なくとも一飼い主として飼い犬を可愛がってくれている事は確かだった。でも、彼は犬扱いされたい訳ではなかった…このままで良いのか、もっと男としてアピールすべきでないのか…でも、もし男アピールをしたら嫌われてしまうのではないか…
(ああああ、どうしたら良いんだ!?)
彼は何度も木の幹に頭をぶつけて苦悩した。
ご存じの通り、彼は木槌で殴られても大丈夫な石頭であるから痛みはなかった。いや、痛みはあったが苦悩の方が深くて痛みを無視していた。それは兎も角、この風景を遠目に見た者は、『ビースト』が頭突きの練習をしている、と認識した。4組他、悪い子が多いクラスでは誰かが『ビースト』を怒らせた、と騒ぎになり、悪い子達は震えあがった。暫くは『ビースト』を見かけるとその視界から逃げようとする少年達が続出した。
誰かが『ビースト』を怒らせた、と言う噂を聞いたジャッキーは事態を正確に把握した。だから午後にクロちゃんを見かけると、肩を抱いてこう言った。
「よう、クロちゃん、ちょっと顔貸してくれんか?」
そうして裏の森で二人は話し出した。
「俺はお前とやりあうつもりはないぞ?」
もちろん、そんな事をすればクリスティンに嫌われてしまうかもしれないからだ。
「何言うてんねん。男同士の話しあいや」
「お前女じゃねぇか」
「細かいこと気にすんな。男だろう」
「普通は気にしないと怒られると思うぞ」
「そういう訳でな、あんたが何に悩んでるかは男同士だからよう分かるんや」
「いや、だからお前女だし、その妙な方言何だよ」
「ただの西部訛りや、気にすんな」
「…まあ、良い。流してやるよ」
「それでな、あんたの悩みはお見通しや。だから言うてやるで?あんた、男として大切なのは、男の気持ちか、女の気持ちか、どう思う?」
クロちゃんは衝撃を受けた。そう、自分は自分の気持ちしか考えていなかった。自分がどうしたいかでなく、彼女がどうされたいかを気にしないといけなかったんだ。彼は跪いた。
「…すまん。俺は一番大事な事を忘れていた」
「分かれば良いんや。ほら、立てや」
ジャッキーはクロちゃんの腕を持って立たせた。
「まあ悩むのはええが、みっともないとこ、女に見せたらあかんで?」
「ああ、そうだな。ともかく、彼女に笑って貰える様に頑張ってみる」
「そうや、それでこそ男や」
「すまんな、手間をかけさせて」
「何、男同士や。あんたの悩みはお見通しや」
「だから、お前女だろ」
そんな話をしながら、ジャッキーは思っていた。
(所詮犬っころ、チョロいぞ。貴様如きのケダモノに、クリスティンの大事な物はそう簡単にはやらないからな!)
…一人と一匹からすれば大きなお世話だった。
次回分は書けているんですが…まあいいや。明日投稿します。




