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10−2 遠出

 今度は公務扱いでは無いのだが、私用により土曜の授業を休みにし、土曜の午前中に王子一行は王都を発った。ハワード兄妹はジェシカ・フィールディングと同乗する事になった。サンドゲート海岸以来、ジェシカの機嫌が直らないからだった。

「大体、あの女は年長者に対する気配りが足りないのよ!」

「いや、でも年寄り扱いは嫌だろう?」

「そこを上手くやって見せるくらいでないと女同士上手くやって行けないでしょ!」

いや、それなら年長者のジェシカの方で上手く扱うのが筋だろうとジャッキーは思ったが、ここは好きなように話させるのがクライブの方針だと思ったので黙っていた。

「彼女は用件以外は言葉が少ないところがあるからね。愛想は足りなく見えるかもしれないね」

「その用件の伝え方に問題があるんじゃない?」

「まあ、君なら細かく言わなくても酷い勘違い等は無いと思っているんじゃないかな。デボラ相手みたいに手取り足取り指示されるのも嫌だろう」

「いや、デボラと同じ扱いは絶対嫌だけど」

ジャッキーからするとデボラは無邪気で可愛い弟分みたいなもの…地元でガキ大将をやっていた頃の子分は皆男だから、そいつらに似ているデボラは妹分というより弟分の方が似合うと思っている。ジャッキーからするとやんちゃな弟分はむしろ可愛いと思えるのだが。

「君なら一を聞いて五くらいは分かってくれると思っているんじゃないかな」

「それでもちゃんと気を使って説明して欲しいとは思うのが普通でしょ!?」

ジャッキーが聞けば、やはり文句の持っていき場所が欲しいだけに聞こえる。まあ、それがクライブだと言うならそれはそれで幸せな事かもしれない。クライブにとっては。


 その他クリスティンとクロちゃんの馬車には侍女が同乗していたが、黙っていただけなので二人はのんびりと春の山や森の花々の話をしていた。危険人物のカーラはイザベラと同乗したが、一方は目の前に不平不満がなければ余計な事は言わないし、一方は愛する人の話題が出なければ特にお喋りな方でもなかったから、居眠りをしていた。勿論、デボラとレジーナの組は居眠りどころか熟睡していた。


 昼の軽食休憩の後、遠くにブルーベルの保護地を見ながら馬車は進み、午後三時過ぎに王家の別荘に辿り着いた。

「五時に一度鐘が鳴るから、それまでは近場の散歩をしていて構わない」

第三王子エドウィンのお許しが出たので、それぞれが別々の方向に歩き出した。


 クリスティンとクロちゃんは北向きに歩き出した。別荘のある丘から少し歩いたところに森が広がっていたから、お互い田舎育ちなのでそちらを歩いてみたくなったんだ。

「この季節の森は少し香りが強いわね」

「香りというか花粉の臭いだな」

「クロちゃんは鼻水出たりしない?」

「今の季節よりは冬の方が出るな」

「そう。出たら言ってね。拭いてあげる」

クリスティンとしては面倒を見たいのかもしれないが、クロちゃんとしては男としてあまりみっともないところは見せたくなかった。

「まだ大丈夫だよ。ありがとう」

「木の隙間から若芽が出ているわね」

「木陰だからあまり伸びないだろうな」

「鹿が食べたりするしね」

「鹿なら良いんだが」

二人とも気配に気付いた。人が話しながら歩いているのに、気配が分かるまで近づくのだから、野生生物でない可能性がある。クリスティンはクロちゃんの耳に囁いた。一芝居を打とうと思ったんだ。


 歩いて行く二人に対し、一人がそっと足音を忍ばせて近寄る。そして、後ろに気を取られた二人を、先に待つ仲間が襲おうと言う作戦だ。後ろから近寄った賊がクリスティンの首に手を回して、ナイフを近づけ…ようとした途端、ばしゃんとクリスティンが崩れた。そしてそのまま賊に纏わりついて凍り付いた。

「な…」

腰から下を凍り付かせて地面に縫い付けられた賊は間抜けな声を上げた。


 前方から二人の男が片手剣を持って走って来たが、既にクロちゃんはナイフを逆手に持って構えていた。そして、二人の内の一人が足元から浮かび上がった水流に飲まれた。水流を避けた一人にクロちゃんが飛び掛かり、引き倒して後ろ手を掴んで拘束した。木陰からすっと現れたクリスティンが口を開いた。

「うん、まあ別荘でお話しましょうか」

賊の三人は水で顔を囲まれ、気を失った。


「魔女に慣れていないのか?」

「気配を殺す相手に慣れてないんじゃないかな?」

クリスティンは水を操り人に見せかけていた。いくら気配を殺しても動けば気付かれる可能性があるから、クリスティンは離れた木陰でじっとしていた。対して賊は自分から動いていたから、隠密作戦に慣れていないと思われる。相手が近づくのを待って動くべきなんだ。


 クリスティンは水魔法で木の中の水分を操り、木を倒して加工し、即席の台車を作った。その台車に三人の賊を載せて、二人で押して別荘へ向かう登坂を押して行った。


「ご苦労様」

エドウィン王子が二人を出迎えた。

「こういう人達がいるから、私達を連れて来たので?」

「いや、餌を撒けば出てくるかなと思っただけだよ」

「そういう噂があったんですか?」

「いや、ノルマン公の手下で南部近くに残っているのは出世コースを外れた連中だ。戦場で敵を倒して功績を挙げるチャンスを逃しているんだから。王族が別荘を訪れるという噂を聞けば得点稼ぎに動き出すだろうと思っただけさ」

それは相手が動き出す様に噂を流したって言っている様なものだろう、と二人は思った。まあ、この王子だからこのくらいはするか、と納得していた。

 続きが書けてない…水曜は在宅にして通勤時間分を浮かして書こう。毎週そうしてるんだけど。ちなみにキアラの月・火分は書きました。明日はキアラの更新です。

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