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9−10 サンドゲート海岸の朝 (3)

 さて、クリスティンは海賊の一部を跳ね飛ばしたが、それで気が晴れた訳では無かった…じゃなくて、それで海賊の侵攻が止まる訳では無かった。だからもっと大規模な侵攻阻止行動が必用だった。すると、海賊達の走る10ft先の砂浜が捲りあがり、絨毯を巻くようにぐるぐると波打ち際の方に巻かれていった。その幅は1マイルにも及び、海賊達は根こそぎ巻き込まれ、海に戻って行った。


 イザベラは再び狂喜した。

「わはははは!生き埋めにしながら海に捨てるとは!このくらい残酷でないと魔女の鑑と言えんだろう!あはははは!」

一方、第三王子エドウィンは海賊達に感情移入していた。

(ああ、なす術もなく埋められ巻き上げられる恐怖…息が詰まり気が遠くなりながら微睡む様に死へ誘われる甘美な死にざま…なんという陶酔的な死だろう)

だから死に誘われるのはお止めください王子様。言って聞く奴じゃないのだが。やがて波打ち際に達した砂の絨毯巻きは、爆散して海賊達を海上に吐き出した。サイクロンに続いてのこの地獄絵に海賊達の心は完全に折れた。海賊達は全員、船に向かって泳いで行った。


 それでも船上の指揮官は傍で見ていただけだったから、まだやる気が残っていた。

「待て、砂浜に引き返せ!損害は少ない!攻撃を続けろ!」

損害が少ないのは相手が手加減してくれているからだ、というのは明らかだったので、副官が指揮官を後ろからオールで殴って昏倒させた。

「指揮官が負傷された!指揮官を後送するのと同時に兵を退く。早急に皆を乗船させよ!」


 そういう訳でようやく手が空いたクリスティンがデボラ達を見ると、相変わらずアザラシと追いかけっこをしていた。

(飽きない娘ね。でもそろそろ疲れたでしょうから、終わりにしてあげる)

クリスティンはアザラシ達の前に50ftの高さのウォーターフォールを発生させ、その水流でアザラシ達を海へ押し流した。それを見たデボラは叫んだ。

「そんなのが出来るんなら、最初にやれ~~~!!」

クリスティンは聞いていなかった。

(もうちょっと遊びたいのかもしれないけど、先輩さんはもう年だから付き合いきれないでしょ)


 そういう訳で事態が収束しつつあったので、クリスティンはクロちゃんにかけるべき言葉をかけた。

「恐い思いをさせてごめんなさい」

うん、全然海賊が近づいて来なかったから別に恐い思いはしなかったよ、とクロちゃんは思ったが、クリスティンの意を汲んで答えた。

「いや、大丈夫だ。君が頑張ってくれたから」

クリスティンの胸がキュンと鳴った。クロちゃんの首に抱きついて、その温もりを感じながら言った。

「ごめんね、次はもっと頑張るからね」

もっと頑張ると被害が増大する気がしたので、クロちゃんはともかくクリスティンの意を汲みながら答えた。

「無理しなくて良いよ。今の君は充分頑張っているんだから」

クリスティンは愛する子犬からの思いやりの言葉を噛みしめながらその温もりを楽しみ、かつてなく幸せを感じた。


「おい、クリスティン。雰囲気出してるところ悪いが、一人やって来るぞ?」

イザベラは本当に無粋ね、と思いながらクリスティンはクロちゃんから離れた。空中をふわふわと飛んでくる魔女は、主属性は闇魔法の様だった。同じ闇属性に相手させれば良いのではないかと思って近くに埋まっているレイラを見ると、砂を風で吹き飛ばそうとしていた。もちろん中々飛んで行かなかったが。

「はあ、あなた水魔法を使えたでしょ?土魔法が使えなくても、海岸の砂の中には大量の水分が含まれているから、そちらを操作すれば良いじゃない」

「そう言う事は早く言え!!」

いや、言われなくても気づかないといけないでしょ、とクリスティンは思ったが、色々未熟なこの娘ではアザラシ40匹を操る闇魔法師には対抗出来ないだろうな、とも思ってしまった。自分が対応するとしても、とりあえず侵略者の記憶に残る様な闇魔法の使い方は出来ないな、とは思っていた。仕方が無いので、ショルダーから丸い物体を取り出し、体の後ろに隠しながら持っていた。


 クリスティンまで30ftまで近づいた中年と思われる闇の魔女は、過たずにクリスティンに話しかけた。

「お前がここの魔女の頭か?」

「見ての通りよ」

誰が一番の魔力持ちか分かるならとやかく言っても仕方が無い。相手が怒り出して殺し合いになっても制圧する手段はいくらでもある。だが、相手が闇魔法師であるから、対処はもう決まっていた。

「よくも我らが企みを妨害してくれたな」

「あなたは大した事してないじゃない。男達が失敗しただけよ」

闇の魔女は青筋を立てた。

「私が操る海獣を弄んでくれたじゃないか」

「それは動物好きの女の子が戯れていただけよ」

闇の魔女はクリスティンの言い草に怒りを覚え、むしろ目の周りが青くなった。

「そうか、あくまで私如きは相手にならぬとあしらうつもりか。なら、これでも食らえ!」

闇の魔女はくわっと両目を開くと、その眼前から黒い霧が発生し、クリスティンに向かって来た。クリスティンは後ろ手に持っていた丸い物体を自分の顔の前に構えた。それは丸い鏡だった。鏡に当たった黒い霧は闇の魔女に向かって跳ね返され、その霧に囲まれた魔女は砂浜に落ちて、倒れこんだ。


「は?闇魔法を鏡で反射する!?そんな馬鹿な!?」

レイラは近くで見ていただけにショックを受けた。近くに歩いて来たイザベラが説明を始めた。

「阿呆か。鏡で魔力を反射出来るものか。森の魔女の里ではあらゆる魔法とその対抗手段が研究されている。あれは闇魔法を反射する魔法陣が鏡の裏に書かれているから反射出来たんだ」


 とりあえずクリスティンとしては、闇の魔女を拘束する必用があった。肩にかけたショルダーから太めの棒を4本放り出すと、それぞれが両端から折れ曲がり、その端は二つに分かれて犬の様に歩き出した。その木製の犬?は闇の魔女に近づくと、今度は上半身?を持ち上げ、今まで前足だった棒が更に先端で5つに分かれて手となった。その手で闇の魔女の両肩を掴み、ごろんと転がして仰向けにしてから上半身を立たせて座らせた。


 その間、闇の魔女は虚ろな目で言葉一つ口に出さない状態だった。

 不味い、明日の分が完成してないよキアラの方は。こちらも水曜分は多分水曜の夕方に書く予定。


 今季のアニメですが、おっさん剣聖はweb版も少し読んで止めたんですが、アクション確認しました。竹とんぼ回し蹴りみたいな(正式技名知りません)ブンブン回転斬りがありましたが、仕合中に敵から目を切るのはどうかと思いました。


 ご指摘があり後書きを修正しました。ご忠告ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
おっさん剣聖で評判を聞くのはコミカライズ版の方なので、触れるならそっちかもしれませんね。 めっちゃ余計なお世話なんですけど、他人の作品をアレでナニで興味ない見ないと話すのはただリスクがあるだけで、後…
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