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8−6 海獣

 海獣は浜辺で日向ぼっこをしていたのかもしれない。暫くレジーナを見ていたが、近寄ってこないと知ると興味を失い、体を捩って海に向けて方向転換をし始めた。ずるずると小さい弧を描いて海に向きを変えて、そのままずるずると海へ向かって行った。

(なんか、こう、芋虫を想像する嫌な動きだな…)

砂浜に引き摺った様な跡を残して、海獣は波が返すのに乗って海へ入って行った。


 村長の家に戻ってその話をすると、知っている様だった。

「そいつぁ、西の内海に居るっていうフォーカって奴だろう。西の帝国で毛皮取りやら油取りやらで随分捕ったから、数が減ってるらしい」

「この辺の海にもいるんですか?」

「そんな奴がいたら漁にならんだろう」

「じゃあ、最近の不漁はあれが原因じゃないんですか?」

「無ぇ事も無ぇが、一頭紛れ込んだくらいでこの辺の海全体が不漁になるもんかね」

「それは分かりませんが」

そうこうしている内に出発の時間になった為、レジーナは村長の家を発った。


(あれが何らかの営巣地を作っているなら、不漁になるのも分かるが、それで不漁になる程魚が減るなら、それこそ営巣地にならんだろうな。子育てが出来ない)

騎乗しながらレジーナも報告内容を考えてみるが、予備知識が無い。何せこの辺りには居ない海獣だ。そして、水籠りの魔女は内陸部の池の近くに住んでいる。淡水魚ならともかく、海獣を見る事など無い。

(まあ、ありのままとりあえず報告するんだな。追加調査が必要なら王都の図書館への入館許可でももらおう)

そこでデボラへの土産を手に入れていない事に気づいた。

(ぐずると困るな…シーフォードの街で珍しい焼き菓子とか探してみるか)

それなりに約束を重視するレジーナだった。


「そういう訳で、現地では不漁気味ですが、全く魚が捕れないと言う事は無い様でした。漂着物等は特に無く、珍しい東の内海に住むフォーカと言う海獣が見つかっただけでした」

レジーナは第三王子エドウィンに報告を行っている。結局海獣に関する知識を埋める事は無く、素の状況だけ報告した。

「その目撃証言は多数あるのかな?」

「私が見るまでは噂も聞きませんでしたので、目撃例は少ないと思います」

「その海獣に関する情報は、一般的にはあるのかな?」

「西の帝国では盛んに狩っている為に数が減っているとは漁村の村長の話でした。なので西の帝国に関する文献には載っている可能性があると思います」

「ふむ、そちらは人を使って調べた方が良いだろう。こちらで調べよう。とりあえず良くやってくれた。追って指示を出すから待機してくれ」

「分かりました」


 報告が終わってレジーナは魔法学院の寮にデボラを訪ねた。

「ほら、シーフォードで買ってきたお土産だ」

「うん、ただのクッキーじゃん」

「いや、ニューヘブンの女という名物菓子らしい」

「すごくありふれたお菓子の名前だと思うけど…大体、シーフォードでニューヘブンの女って何でよ?」

「つまり、隣街の女が性格がきついと評判らしい」

「お菓子になんでそんな名前付けるの?」

「さあ?とりあえずよく聞く名前を付けたんだろ」

それなりに話がいい加減なレジーナだった。

「それで、東の海には何か落ちてたの?」

「特に変な物は落ちてなかったが、海獣がいたな。海の獣だ」

「海獣…アイスランスで倒せるかな?」

「おいおい、風塵の魔女じゃないんだから、正体も分からない生き物をいきなり殺すなよ」

「殺さないけど、変なのが出てきたら痛い目に合わせないと危ないでしょ?」

「いやいや、あっちがその気でない時には痛い目には合わせない方が良いだろう?」

「えー、その気にならなくなる様にガツンとやるんじゃないの?」

「うん、あんたには何か再教育が必要なのは判った」

「えー、何で?」

「そのな、生きとし生けるものにはまず愛情を持って接する事がだな」

「えー、人生とは闘争だ、って誰か言ってなかった?」

「…うん、それは強い者なら言っていいが、駄目な奴が言ったら駄目だぞ」

「駄目じゃないなら言って良いじゃん」

「…」

(まず自覚させる事が必要かね)

何も考えていないのに乱暴だと長生き出来ないよな、とレジーナは思った。渡る世間は何処にバケモノがいるのか分からないのだ。大体、見ていないから攻撃するなんて言い出すのだが、寝転がっているとは言え、あれは人間より全長は長そうだった。あれにケンカを売るとかなり面倒そうなんだが…王子の方で調べるとは言っていたが、今後は多分追い出す方向で進むんだろうな、そうなると打撃で逃げてくれるのか?生き物は火を恐れるという説もあるが、火を見たことが無いかもしれない海の生き物が火を恐れるだろうか。とりあえず水魔法で撃退は難しいのではないだろうか。そうなると他の属性の魔女をお勧めするしかないな、と依頼があった場合の逃げ方をレジーナは考えていた。

 そう言う訳で、書きたいものが書けなくなったのは、『大西洋にはアシカはいない』という点が調べて分かった事でした。泣く泣くアザラシになりました。地中海アザラシというのがギリシャとかにはまだ群れがいる様です。でもさ、陸上で芸をするのはアシカやオットセイなんです。まあ何とかしよう。この小説はシリアスじゃないから。


 とりあえずこちらの水曜分はまとめました。明日はキアラの方を更新します。

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― 新着の感想 ―
デボラ自身は全く役に立たないが、レジーナでお釣りが来るな……
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