7−3 目的
一発殴ったからこれで手打ちだ、と言う意味を込めてクリスティンが答えた。
「こんな事をしている目的を話す気になりましたか?」
「まあ、そういう事だ。色々気持ちのすれ違いはあったが、この王都の平和を守りたいという気持ちは皆も同じと思う。応接室に来てくれ」
平和を守りたい?そんな言葉が第三王子エドウィンから出てきても、皆は説得力を感じなかった。
応接室で王子は説明を始めた。
「まず、森の魔女の里から『恐怖の魔女』なる者がやって来るという、分かりやすい敵を示す扇動の目的を想像したのだ。クリスティンが言う様に、それは目くらましで、本当の目的は隠れている筈だと。それは普通に魔女を集めて国家転覆を目的としているのではないか、と考えたんだ。それで噂の魔女達を集めて対抗する事を考えたという訳だ」
それもありそうな話であるが、それを名目に他人の秘密を暴いて喜んでいるのではないかという疑いを皆持っていた。要するにこの王子は信用が無かった。
「それを話すおつもりになったという事は、相手も四人の魔女を集めているとお考えで?」
クリスティンが確認の言葉を発した。どう考えても自分が主力扱いされている様だから、他人事ではなかったんだ。
「疑いのあるのは三人だ。だが、知っている様に有能な工作員もいる。戦力は充分に確保する必要があった」
クリスティンが逃げたがると思ってそういう発言をしている様だが、必要ならクリスティンは前に出るのはやぶさかではない。問題は必要かどうかで、それを確認したいのだ。
「情報から推定される相手の属性は何ですか?」
「火、水そして闇だ」
「それで森の魔女が必要な訳ですか。一方で、こちらの魔女が対抗すると一人は王子様の護衛となる訳ですね。北風さんが納得するかどうかですが」
「それぞれの魔女が、多分先輩にご恩返しをするのを邪魔するつもりはないさ。王子に近づく者を切り刻む役で構わないぞ」
いや、切り刻むとか血生臭い事を最初から考えてるなよ、と皆は思ったが、王子はせっかくやる気のある発言をしたカーラを掣肘する事はしなかった。
「頼もしい発言は嬉しいよ。他に質問はあるか?」
デボラが流石に察して慌てて質問をした。
「あの、水の魔女が出てくるんだったら、名前とか年とか分かりませんか?」
「魔法学院は出ていないらしいが、卒業生相当の年齢らしい」
「あぅ~」
デボラとしては三才以上年上に敵うとは思えなかった。
「アイスちゃん、時間稼ぎをしてくれれば相手を溺れさせてあげるから。心配しないで」
「心配するよぅ~…」
「じゃあ、特別にハリセンボンがアクアマリンを咥えている魔法棒を作ってあげるから」
「それ持つとこないだろ!」
「あなたにしては鋭いわね」
「絶対地味子なら使う人の事を考えないのを持ってくると思うだろ!」
「何か誤解がある様ね」
「誤解じゃない!正しい理解だ!」
この二人の漫才に付き合いきれないジェシカが口を開いた。
「殿下、炎熱の魔女は年齢とか名前とか、その他の特徴とか分かりませんか?」
「魔法学院には通っていないが、学院生相当の年らしい」
「そうですか…」
クライブは不安そうなジェシカを励ましたくて口を開いた。
「ジェシカ、不安ならクリスティンが水風船を十個くらい作ってくれるから」
「それ持って歩けないでしょう…」
ジェシカは火魔法の魔女の里では劣等生だったから、同年代との対決は心細かった。十才を越えた頃からはその美貌で目立ってしまったから、虐めは酷くなっていた。だから力のあるクリスティンには被害妄想気味に対応してしまうのだ。その辺りはクリスティンも分かっていた。
(別に景気よく雷撃ぶっぱなせば良いのに)
王子の指揮で戦うのである。しかも国家反逆罪と判定した相手である。責任は王家が取るんだ。
その頃、国王エルフワルドはフィールディング侯爵、クリフォード男爵、パーマー男爵およびフランクランド男爵と非公式の謁見を行っていた。
「その方達の心配は分かる。エドウィンの人集めは私が許可して動いているから問題ない」
対してフィールディング侯爵が口を開いた。
「恐れながら陛下に申し上げます。愚昧なる臣には深遠なる陛下のお考えを伺い知れず、そのお心の内を少しだけでもお聞かせ願いたく存じます」
ふぅ、とエルフワルドは小さく息を吐いた。
「簡単に言えば反乱の疑いがあり、魔女を集める必要があった。魔女の機嫌を損ねればその者を魔女の里に渡さねばならず、この仕事を長男、次男にやらせる訳にはいかなかった、というのが建前だ」
「それでは、本当のお考えは?」
「もちろん、思い切った事が出来るという点ではエドウィンが一番という事がある」
「それでは、お世継ぎは彼の方にお決めになるのですか?」
「あれは趣味人でな、興味がある事しかやらん。あれが自分でやると言い出したから任せたが、あれに国王の由無し事を行う忍耐力は無い。世継ぎは長男が良いと思っている」
「しかし、反乱鎮圧に功があれば、後継争いに発展する可能性もあります」
「心配する事は無い。すぐに変わり者と呼ばれるに相応しい馬鹿をやるに決まっている」
さすがに父親、息子の事がよく分かっている、と出席者は納得した。
ハリセンボンの胴体を持てないなら、尾鰭を持てば良いでしょう?と王妃様は言ったとか。
次は土曜の更新予定です。今回思ったより話が進まなかった。LのG田さんの自主トレとか別れ話とかが気になってつい検索してしまったせいでは多分ないです。




