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7−4 タイミング

 第三王子エドウィンがここで急いでクリスティンの正体を暴きにきたのは、緩い証拠が集まったという事もあるが、相手の動きも散見されているからだった。そういう事で魔女達には心の準備をしながら待機という事になった。


 別途クライブの招集で集まった面々は、魔法練習場で相談をする事になった。

「北風さんはジェシカの練習相手として、強めの風でランダムに攻撃するように相手をしてもらえる?」

「つまり相手の攻撃を迎撃する練習をさせるという訳だな。ジェシカはそれで良いか?」

「…そういう練習をすべきでしょうね。頼むわ」

「アイスちゃんは水魔法を水魔法で迎撃する練習、私が相手をするわ」

「地味子相手の練習で役に立つのかな…」

「あなたはまずスキルアップが必要なんだから、現状より速度と精度アップの練習という事よ」

「うぅぅ~ん」

氷結こと水籠りの魔女デボラはやる気減退中であった。里では年上にこてんぱんにされていたのだろう。


 ジャッキーが自分達の練習について質問した。

「私やクロちゃんはどうしようか?多分魔女三人の方じゃなくて王子の傍にいるべきよね?」

「カミナリさんとアイスちゃんは速度アップが急務だから、連携の練習は後でしょうね。多分間に合わないから、皆は王子に付く事になるでしょう」

ジェシカがムッとした。

「カミナリさんとかイメージが悪くなるから止めて!」

「バリバリさんよりはいいでしょ?」

「もうちょっと愛らしい呼称は考えられないの!?」

「よくクライブお兄さんに怒ってるからカミナリさん、って言えば皆理解してくれる愛称でしょ?」

「そんなに怒ってないわよ!」

…それなりには怒っているんだね、と皆は察した。賢明な事にクライブはこの件については無反応を貫いた。


「だから、ジャッキーとクロちゃんは例の工作員相手の速度アップ、連携で意表を突く攻撃を検討する、第四の魔女相手の魔法防御の練習をする、というところでしょうね」

クロちゃんがその点、気になって口を開いた。

「第四の魔女はいると思うか?」

「土壁の魔女の名前が出てこないから、一応用心は必要でしょ。ただ、それに拘らず何らかの魔女が出てくる可能性がある以上、魔法防御は心の片隅に置いておいて」

「そうだな。分かった」

荒事には弱いクライブはこうなると発言力が低いが、それでも何もしない訳には行かなかった。

「私とエグバードは何の練習をしようか?」

「互いの攻撃を盾で防御する練習が良いのではないでしょうか?魔女に対して魔法で対抗するのは無理があります」

「そうだな。そうしよう」


「アイスちゃん、練習はちょっと待って」

「いいよ。どうしたんだ?」

「ちょっとバリバリさんと北風さんの対応を見たいの」

「せめてカミナリさんにして!」

そう言ってジェシカが自分で選択した以上、クリスティンとしては今後カミナリさん呼ばわりを徹底する事にした。

「じゃあ、ちょっと2・3回攻防をしてみて」

クリスティンは物差しを目の前に掲げてジェシカとカーラの攻防を眺めた。

「参考になったわ。じゃあ、自分達で内容を決めて練習してね」

「ああ」「そうするわ」

という事で、クリスティンはジェシカとカーラは放っておいてデボラに向かった。

「それじゃあ、アイスちゃん、良いから速度優先でウォーターボールを出す練習をする様に」

「速度優先で何とかなるのか?里のみんなの魔法の威力は強いんだぞ!?」

「迎撃が間に合わなければ威力なんて意味がないでしょ?何なら私が息が切れるまで水魔法を連発して速度優先以外の練習は意味がない事を体感させてあげましょうか?」

「そう言えば地味子は無詠唱で魔法を出せるのか?前回は魔法を連発して息切れしてたけど?」

「前回までは偽装だし、無詠唱で連発してもあなたの勉強にならないでしょ?」

「詠唱したら勉強になるのかよ!?」

「だから、毎回、呪文ごとの魔法工程を感じろと言っているじゃない」

「そうだっけ?」

…うん、ともかく体で覚えさせるのが良いな、この娘の場合。ある意味クリスティンは吹っ切れた。

「じゃあ、まず壁相手に詠唱せずにウォーターボール10回当ててみせて」

「おうっ」

…大きさがばらばらのウォーターボールが飛んで行った。しかもクリスティンが見て魔女レベルとしては充分遅い連発速度だった。

「次は短縮詠唱で10回やってみて」

「お…ぅ」

短縮詠唱はお気に召さない様だった。けれど速度自体は少し早かった。威力は最小限だったが。

「…分かったわ。じゃあ、私が短縮詠唱で10回あなたを攻撃するから、迎撃してみてね」

「無詠唱で良いのか?」

「好きにして」

デボラが迎撃出来たのは最初の2回だけだった。あとは迎撃を諦めて逃げまわった。

「じゃあ、次。短縮詠唱で迎撃して」

「だって威力がないじゃん、短縮詠唱」

「こちらも本当にしょぼい水玉を出してあげるから何とかして」

「うぃ…」

今度は5回まで迎撃が間に合った。当然、後はひたすら逃げ回るデボラであった。もう脳筋扱いで良いかな、とクリスティンは思い始めた。

「地味子、今は手を抜いたか?」

「さっきから短縮詠唱してるでしょ?発動間隔は一緒よ」

デボラは納得がいかない様だが、遂に自分から言い出した。

「じゃあ、私は無詠唱より短縮詠唱の方が速いのか?」

「そうね。短縮詠唱の方が各行程をしっかり行っているから速くなるの」

「じゃあさ、短縮詠唱の方が何時か威力も出るのかな?」

「それは無理。私が言っているのは、各工程をしっかり終わらせる、その速度を速くする。それを呪文詠唱で練習して覚えなさい、って事よ。最終的には無詠唱に反映して欲しいの」

「だったら最初にそう言ってくれれば良いじゃん!」

「…最初からそう言ってるわよ」

デボラは他人の話を聞かない娘であった。

 学習しない、という事は、良い事があっても悪い事があっても、夜は何も考えずにぐっすり寝ている人だと思われます。


 次の更新は月曜かぁ…明日書いておかないと。水曜の分も半分くらい書いておかないと。(私は月曜出勤です)

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