↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/109

6−7 王子の呼び出し

 冬休みだと言うのに第三王子エドウィンから招集がかかった。平民街の高級店の個室の予約を取って呼び出したのだ。寮生でないハワード兄弟に気を使って学院外に呼び出したというより、寮生達を餌で釣ろうという魂胆だった。

「やあ、クリスティン。君から見て皆の仕上がりはどうだい?」

「一般的な練習は行っております。相手次第かと」

「君の想定する相手に対しては通用しそうかい?」

「相手のカード次第でしょう」

「なるほど、よく分かったよ。とりあえず食事を楽しもうか」

そもそも呼び出しがあった段階でそういう話とは思っていたが、食事前にわざわざクリスティンとその話題をするのだから、食後の話題は確定した。ガタガタ言ってもどうせ相手をしないといけないのだから、せめて食事くらいは美味しく頂いておこう、と皆思っていた。


 季節柄、新鮮な野菜は手に入らないからオードブルから入ったが、グラムチャウダーが続き、白身の魚の煮込みと続いた。王都はご存じの通り、海に近いから、魚介料理はこの店の名物なのだろう。そうしてデザートが出たところで、王子が口を開いた。

「ところでクライブ、申し訳ないが明後日の午後は開けておいて貰えないかな。野暮用が出来て、つきあってもらいたい」

二日後なら、既に予定があったとしても詫び状を届ける時間がある。

「ここにいる全員に明後日の午後、来て欲しい訳ですね。場所はどちらで?」

「すまないね、デートがあったら延期してくれ。貴族街の東公園に噂の人物を呼び出す事が出来てね。正体を探って欲しい」

「聞き取り調査でもすれば良いのですか?」

「相手が魔女でなければそういう手もあるだろうがね。誰何しても答えてくれそうにない。手段は任せるよ」

「…ちなみに、何と言って呼び出したんですか?」

「お前の秘密を知っている。バラされたくなければ東公園に来い」

うん、喧嘩にしかならないな、と皆思った。何でこの人は堂々と魔女に喧嘩売っているんだ、馬鹿なの、とも思った。

「…こちらは顔でも隠した方が良いですか?」

「私の名前で呼び出しているから、顔を隠す必要はないよ。第三王子特別調査隊の存在は公にしているからね」

だから学院祭で展示を行わせたのか?計画的な犯行に全員眉を顰ませた。ちなみに学院祭時はメンバーでなかった風塵の魔女カーラは目を細めて王子を睨んでいた。


 他にアドバイスはないか?とクライブは聞きたかったが、手段は任せる、と言ったからには丸投げなのだろう。クライブは溜息をついた。

「女性達にスイーツのお代わりを頂いても構いませんか?」

「ああ、欲しい者は挙手を」

ジャッキーとデボラとカーラが挙手をした。クリスティンはお茶だけお代わりを、と発言した。

「では明後日の午後2時に東公園の南入口で会おう」

そう言って第三王子エドウィンは店を去った。


 クライブとしては河岸を変えて話がしたかったから、平民向けの中級店で個室を取った。皆新たにスイーツを頼んでいたが、クリスティンとしては別腹にそんなに入らないのでスコーンを頼んだ。ジャッキーでもクロちゃんでも最初に分ければ余分を食べてくれるだろうと思いながら。

「クリスティン、率直な意見をお願いしたいんだが」

「予想通りですよ。喧嘩を売って押し付けるとまでは予想出来ませんでしたが。どうせ対決するのだから大した差は無いですね」

「他には?」

「確定情報を頂けないのも予想通りですから、まあ手探りで序盤の攻防をすべきか、さっさとカタを付けるかは前衛陣に任せます」

「ジャッキーはどう思う?」

「魔女相手に待って良い事は無いでしょ?なら一気に攻めるべきじゃないかな?」

「クロちゃんはどうだい?」

「接近しないとどうにもならない。だから早期に近づくべきだろう」

「じゃあ、速攻で決まりだな。他に意見のある人はいるかい?」

カーラが口を開いた。

「王子はその娘を特別扱いしている様だけど、理由は何?」

カーラはフォークをクリスティンに向けた。行儀が悪いな、とクリスティンもクライブも思ったが、風塵の魔女にその手の話題が通じるとは思えないから黙っていた。仕方がないのでクリスティンが説明した。

「あの人は秘密主義者なのよ。だから何を考えているんだ?と言われたくて仕方がないの。それが分かっているからこちらは興味がないという姿勢を貫いている。面倒くさい人と話をしたくないからね。そうすると、興味を引きたいのよ。それだけ」

クライブはこめかみに指を当てた。

「…そうだね。そういう面倒な人だよ。話を聞こうとすると説明しない。話を聞く気がないとそれっぽい話で気を引く」

クリスティンが話を引き継いだ。

「だから、話を聞きたがる人には話を振らないの。秘密を話したくないから」

カーラもさすがに苦笑いをした。

「面倒臭い奴だな」


 店を出る前に、ジャッキーとクロちゃんの袖をクリスティンが引いた。

「相手は普通の攻撃をある瞬間から変えてくると思う。つまり序盤は様子見をする筈。だから、空気が変わったと思ったら迷わずウォーターウォールを斜めに作って、地面で支えて攻撃を上に反らすつもりでいて」

「いきなりピンチになる訳ね?」

「切れて致死攻撃をしてくる可能性があるの」

「分かった」

「気を付けるよ」

二人は納得してくれたが、ジャッキーが気になる事を指摘した。

「二列目以降には言わなくて良いの?」

「怯えた相手は手近な敵をまず倒すから」

「なるほど」


 作戦会議で終わる訳にはいかなかった。クリスティンは学院に入る直前の民家に寄って、クロフォード男爵への伝言を頼んだ。

「明後日に炎熱と対決」

この民家は緊急事態の際にクロフォード男爵と連絡を取るための窓口だった。もちろんクリスティンなら魔法関係で連絡を取る事も出来るが、王子による監視が寮内に一人、寮外に一人、学院外に一人いるので、派手な事は出来なかった。

 もういくつ寝ると、というタイミングになってきました。気温低下が予想されていますので、お体には気を付けて下さい。


 あ、次回更新は30日の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。