6−5 冬ざれの林
冬休みは長い。だからクリスティンは魔法練習場を借りて、魔法の呪文の効果の確認を行っている。水魔法はこの季節は凍りやすいので、氷結系の呪文の検証が容易になっている。やはり9月には確認しづらいものがある。しかし周辺温度を更に下げてしまう為、火魔法の検証と交互に行っていた。
(短縮詠唱でタイミングを決めて速度を上げるというのも、やはり本人の魔法行使力、魔法干渉力が係わるから、アイスちゃんに多くを求めるのは無理があるか)
個人的には水属性の魔女としてデボラの魔法行使の速度は遅すぎると思うが、一足飛びに速度を上げるのも難しい。何か対策を考えてあげたいが、時間が無かった。クリスティンは予定時間より早く魔法練習場を後にした。ベテランと思われれる魔法師を連れて、近くで観測をしている者がいたからだ。
「やあ、冬休みというのに勤勉な事だね」
第三王子エドウィンが魔法練習場の近くの林、葉が落ち切った木々の中に佇んでいたんだ。
「王子様におかれましてはご機嫌麗しく…」
「そんな事は気にしていないのだろう?言いたい事があれば言ってごらん?」
「特に言いたい事などありませんよ」
「そうかい?それでは次の魔女との対決についてはどう考えているんだい?」
「クライブお兄さんから情報がありませんので、カーラとデボラを二列目にする事くらいしか決まっていませんよ」
「君の事だから、もう相手の属性も分かっているのだろう?」
「相手が分からないのだから何も分かりませんよ」
「惚けないでも良いよ。どうして私がそんなに魔女を集めているのか知りたくないかい?」
「下々の者には高貴な方のお考えなど分かる筈もありませんよ」
「…こうも袖にされると傷付くね…」
「心にも無い事を仰られても困りますわ」
フフフ、とエドウィンは笑った。
「まあ、君の気付いている通りだよ。間もなく次の対決となるだろう。他の魔女達を鍛えておいた方が良いだろう」
「ご忠告には感謝しますが…それは彼女達の靴の問題ですから」
「冷たいね」
「魔女など人の言う事を聞く生き物ではありませんから」
「実感が籠っているね。まあとりあえず健康には気を付けて欲しいね」
「お心遣い、ありがとうございます」
クリスティンは葉の落ち切った林の中を去って行った。それは、出番を待つ者がいる事を知っていたからだ。
そこに現れたのはカーラ・フランクランド男爵令嬢、つまり風塵の魔女だった。
「それで、私には第三の魔女の事を教えて貰えるかな?」
「それは分からない方が魔女同士楽しい対決になるのではないかな?」
「あんたの方から巻き込んでおいて、サービスが悪いんじゃない?」
「サービスは人当たりの良いクライブに任せているよ。文句があるなら彼に言い給え」
「何で魔女を集めているかは?」
「その内分かるだろう。楽しみは先にとっておいた方が盛り上がるだろう?」
カーラは溜息をついた。
「あの1年と扱いが違うんじゃないか?」
「含みがある答えが返ってくる者には含みのある言い方をするさ。君はもっと単純を求めているだろう?まだ直接答えを口にする段階じゃないんだ」
「まだ、何だ?」
「まあ、次の魔女の顔を見てからにしようと言う事だよ。聞いていた通り、クリスティンは君には期待している様だよ」
「そうは聞こえなかったが?」
「デボラが当てにならないのに君と同列に置くと言っているんだから、君に期待していると思うが?」
「そういう受け取り方もあるか」
「まあ、魔女が使い物にならないと他の連中が苦労すると思うよ」
「他の連中はどうなっても構わないけど。まあ情報が貰えないならそれなりにやるだけだな」
「まあ、それなりに期待しているよ」
カーラは横目にエドウィン王子を睨んで去って行った。
エドウィンとしてはもうそろそろ魔女達にやる気を出して欲しいとは思っているが、二人まではあまり当てにならないのは気に食わなかった。
(三番目次第かな。クリスティンに目途が立つと良いんだが)
王子を王族とも思わない彼女の態度に、彼女をどう動かすかは彼も思案どころだった。最後までしらを切られる可能性がある。
クリスティンを動かすなら動かし方は明らかな筈だが、エドウィンは人間同士の信頼関係にあまりに疎かった。だから他人の扱いが酷くなっているんだ。
冷たい人間関係を書きたかったのですが。そろそろ動きますか。木曜に更新します。




