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1−3 魔女の里

どんな不満も、どんな不安も、

あなたの温もりがあれば些細な事だったのに

あなたのにおいも

あなたの温もりも

永遠に失われたこの世界で

どうすれば生きていけるのだろう


 魔女の里との摩擦を増やす様な噂が流れている事は問題だった。魔女の里はこの広いとは言えない国内でも知られているだけでも6つあり、国内異端者集団と認識されていた。クライブは下男下女に収集させた平民街の情報を巻き込まれたメンバーに聞かせた。つまり、ジャッキー、クリスティン、エグバード達に。

「平民街では時々その噂が流れている様だ。ただし、民衆も滅んだシュルズベリー侯の事は覚えている。こちらから手を出さなければ何も起こらないと思う者が殆どだが、一部怖がっている者がいる様だ」

「じゃあ、王子の言う通りもう発信源が分からないくらい広がっているんだ?」

「ただ、そもそも森の魔女の里なんて遠いところから魔女が王都にやってくるなんて話になるのか分からない」

エグバートも森の魔女の里については知っているらしい。

「森の魔女の里なんてプリマスの北にあるという噂ですからね。こちらに来る理由が分からない」

「それは民衆も疑問に思っている様だ。だから多くの者は眉唾と思っているんだ」

ジャッキーが別の可能性を提示する。

「じゃあ、魔女の里の名前が間違っているんじゃない?風塵の魔女の里とか水籠りの魔女の里とか、場所が分かっている方なんじゃない?」

「それは無い。確実に『森の魔女の里』として広まっているんだ」

クリスティンから見れば、それは特定の人物の評判を貶める為に広められた噂じゃないかと感じた。そういう噂が広まっていれば、『お前が森の魔女の里から来た女だろう』と言えば立場を無くさせる事が出来るのではないか。だからクライブも本件を広げる危険性を示した。

「そういう訳で、どうやら特定の人物が標的にされている様に思う。この噂自体を口にするのは避けた方が良い」

「それはプリマス方面から来た女性を貶める為に広められているという事?」

「まあ、プリマスは王国の力が及ばないからね。西部から来た怪しい女を貶める意図なのかもしれない」

クライブ以外は第三王子の事を良く知らない。だからエグバートが思わず尋ねた。

「王子はその辺りを気づいた上で調査を依頼しているんですか?」

「愚かな方では無いから、意図には気づいていると思うが…」

「じゃあさ、それは表向きの理由で噂を集めさせようとしているって事?」

「その可能性の方がありそうだ。だから噂全般を聞き取ってメモしておけば良いと思う」

そういう訳で学院内の調査方針が決まった。王子のいないところで。


 まだ学院は午後の授業を行っていなかった。クリスティンと二人で歩き始めたジャッキーは、だから食堂と寮の近辺を歩きたいと言い出した。

食堂は3年棟の西にあり、つまり食堂から一番遠い1年棟から歩いていく頃には上級生は席を確保しており、その隙間に座る事になる。

1階は大食堂だが、2階には上位貴族が予約して使用する個室がある。

「広いね~」

ジャッキーが言うと、クリスティンも

「広いね…」

と続けた。

「え、毎食ここで食べてるんじゃないの?」

「ここは授業のある時の昼に開く食堂で、寮生の食堂は寮の隣にあるの」

「こんなに広くないんだ?」

「ここの半分くらいかな…」

「それでも半分なんだ!?」

「だって平民の生徒と下位貴族の生徒は過半数が王都外から来てるんだよ。タウンハウスもない貴族子女は寮に入るしかないもん」

「それだとすぐ席が一杯になるんじゃない?」

「一番早く行って隅っこで小さくなって食べれば大丈夫」

「まあ、上級生が同席してると小さくなってた方が良いか」

「人生は水ずましの様に危険を避けて生きるのが賢いと思うの」

「水すましは危険を避けて生きてるかな?」

「天敵のいない水たまりに移動して生きてるでしょ」

「その水たまり、すぐ無くなる気がするけど?」

「そしたら無くならない水たまりに飛んで行って小さくなって生きてるの」

「安住の地を探した方が良くない?」

「人生は旅なのよ。定住地を求める時に人は死ぬの」

「アドベンチャーなら危険を友にして生きないと!」

「細く長く生きたかったら危険とは仲良くしたらダメなの」

そんな二人の前に掃除のおばさんがやってきた。

「若い時しか火遊びは出来ないですよ」

「でも、火遊びで火傷の跡が残ったら一生苦労しますよね?」

クリスティンは中々保守的な人間だった。

「火傷も良い思い出になりますよ。女なら恋しなくちゃ」

ジャッキーはコイバナに興味を持った。

「おばさんの十代の時の恋は火傷になりました?」

「とりあえず結婚相手に恋しましたよ。十代の間はね」

「その後は?」

「まあ、宿六の世話も飽きないから良いかもしれませんね。毎日違う言い訳してくるから」

ジャッキーもクリスティンもその話題は夢がないので避ける事にした。

だから二人は食堂を出て寮の方に歩いていく事にした。

 火曜は残業ありそうだから更新出来ません。そうなると更新は木曜あたりと思います。

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