16
真っ直ぐ、一息で相手の懐へ。
拳の届く範囲へ獲物を捉える。
左足裏、親指を起点に重心を移動…踏みしめた畳を抉り上げながら全体重のベクトルを直進から回転へ、
その際引き絞った右拳のベクトルは変わらず真っ直ぐ。
壁を作る。別ベクトルの壁で反発させて、威力を上げる。
…多分拳は砕けるな…
眼前の獲物の鳩尾、死中線のど真ん中。狙い定めて全力で振り抜く…
空気の爆ぜる音の後、鈍く低い音が続く。
「…かぁー!!老いぼれ相手に躊躇なし!逆に褒めるべきかのぉ!?」
クソ野郎は平然と受け止めやがった。
…難度5のダンジョンボスなら一撃だったんだがな…
「まじで、昔から疑問だったんだが…どんな手品だ?」
…小さい頃は雲の上の存在。実力が違いすぎて何もわからなかったが、今なら断片ぐらいわかるな…
「不自然に衝撃が流れた…内側で炸裂させる為に回転加えたってのにそれもぱぁだ…じいさんの能力か?」
はっ!…と喉を鳴らし
「もうそこまで見えとんのか?まぁカラクリは教えちゃらんがのぉ?まだ負けたくないしの。」
溜息一つ…そりゃそうだわな
「で?…俺の能力は見えたか?」
うむ…と顎を指二つで摩りながらしばし思案…
「確かに、(憑依)ではないのぉ…あれは技術の模倣度合いによって精神の侵食が著しい…この規模で使えば少なからずお主の精神が侵されちょるはず…すると、(身体強化)の類かの?」
はっ!…腹立つ鼻笑いで返してやる。
おーいいぞ、腹立ってるなぁw
ただ、(憑依)も(身体強化)も正解だ…それだけじゃないがな?
しかし、砕け散ると思ってた右拳をしばし開いて閉じて…
「じじい、ちょっと足見せろ…流し切れてねぇだろ?」
殺しきれない衝撃をその足裏で受けた模様…ジジイの足の裏が血だらけだ。
「立っちょるから引き分けじゃぞ!?」
…いいからばあちゃんに直してもらいにいくぞ。
……………………………………………………………
《才能》とは、
習熟度や完成度を高い水準へと持ち上げてくれる力である。
例えば、歌手であれば、出せる音域を広げビブラートや音の輪郭を細かに調整できたりする。
これに、
《技能》が加わればどうなるか。
例えば先の例、歌手に魅了のスキルが加われば、歌うその姿、声、表情から所作全てにスキルが乗るため、人々はそれに魅了される。もちろん歌手の才能もあるため、音痴ではない。
が、ここに容姿が良くなるという効果はないため努力は必要である。なぜならここで容姿のレベルを上げる事で、魅了のスキルに反映されてくるからである。
さて、それではお待ちかね《能力》について、
これは才能と技能を合わせた上位互換。
そして悉くが、戦闘に特化した力であり、制限を設けられていない。
つまり、おれの力に才能も技能もない。
しかし、おれの力に才能も技能も含まれている。
まだまだ、扱えるのは二つだけだが、はてさて、どんなふうにしていこうか…
…………………………………………………………
「ばあちゃんおかわり!!」
「はいはい」
「あかねさん!ワシも!」
「はいはいはい」
…現世へと甦り、早いもんで半年か…
あれからじいさんとの訓練もいい感じだし、身体もだんだん馴染んできたな…
「あかねさん、夕飯終わったらりゅうの事見ちゃってくれ、そろそろ行こうかと思う。」
「毎日見てますけどねぇ、びっくりするぐらい順調ですよ?もう九割方整ってますよ」
「そいつは結構じゃな、りゅう…明日からは実践じゃ!」
「おーし!やっとか待ち侘びた!誰と組み手だ?道場破りでも久しぶりにやるのか?」
…ニヤァ…
おい…このジジイなんか嫌な感じだな…
「気合十分じゃな、結構結構、そいじゃぁちゃちゃっといきますかな?」
…どこに?っとおれが問う前にじじいの口の端が持ち上がる。
「難度8…京都旅行の準備をせぇ。ダンジョン攻略旅行じゃw」
おいおい、じいさんそいつはなんとも…楽しそうじゃねぇか。




