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仰向けに転がされる身体。
いぐさの畳の匂いを、胸いっぱいに吸い込み呼吸を整える。
異能力ありきで設計された道場の真ん中で俺は、都合五度目の天井を見上げる。
「はっ…こんなもんか、りゅう、本気で来い。お主如きが手加減などと自惚れるなよ?」
…はぁ、バレてら。
でもなぁ、この力はまだまだ制御が甘い…下手すりゃあじいさんあの世に配達だからなぁ…
まぁでも、やられっぱなしも癪に触る…
まだ一撃もいれれてないからな…
………………………………………………………
「りゅう…道場で今のお前を見てやろう。」
九羅麻との御目見の後。突然じいさんは稽古をつけてくれると俺に言う。
「今は何戦何勝だったか?じいさんの勝ち逃げじゃなかったのか?」
「事情が変わった…鍛え直しちゃるから早ぉ準備せぇ!」
事の顛末を話した俺に奮起した、じいさんと安堵したばあちゃんはこれからのことを話してくれた。
曰く。これからは彼女が俺に取り憑くとの事。逃れられる事はない。
曰く。世界の宿命を断つ他に俺の救われる運命はない。
曰く。この世から…ありとあらゆる魔を祓う為の助力を、他でもない。《天照・大御神 マナ》様の御加護を受けたとの事。
奇しくも俺の願望と使命である、全ダンジョン攻略の助力を受けたとの事。
そして、その為の基礎中の基礎である。戦闘能力向上。(じいさんのストレス発散)の為の訓練中というわけである。
五度目のダウンの後。俺は問う…
「一般人いじめて楽しいか?じじい!」
「あー?すまんな、めっきり耳が遠ぉなってのぉw悔しかったら一本取ってみぃ」
…このじじい…言ったな?知らねぇぞこいつ…
「はぁ…じいさん。次はやや強めで…」
はっ、と喉を鳴らすじいさん…
やれるもんならやってみろとばかりの様子。
目に物を見せてやるよ…その老いぼれた眼ぇかっぴろげて見ろよ…
《接続・能力》
「む?」
《指切血判》
…3割ぐらいか?
…ゆびきりげんまん、ゆびきった…
《拳闘士》
「こんの!?…馬鹿りゅうがぁ!!!!」
瞬間…異能力暴発の危険性を考慮し、頑強に作られていた道場の一角が吹き飛び。暴風が吹き荒れる。
そして、俺は憎きじいさんから念願の一本をもぎ取った。
生きてるかも定かではないが仰向けに寝転がるその姿を見て俺は、ガッツポーズを決める。
…………………………………………………………
「いただきます。」
今日の昼飯は炊き込みご飯に秋刀魚の塩焼き。豆腐のお味噌汁に漬物と…
あー美味しっ
「あかねさん、りゅうの身体はどうじゃ?何か異変はあるかの?」
「いいえ〜、りゅうちゃんこっちに来てからどんどん魔素を取り込んで器も大体5割くらいは満ちてるんじゃないかしら?」
…5割…
「まだ半分か…肉体の強度も上げなきゃならんからな…おい!りゅう、今日から最低5杯は飯食えよ?」
はいはい…
「ばあちゃんおかわり!」
「はいはい」
もう12杯目だわ、うますぎだろ…
「………食い終わったら道場じゃ、…」
…食ったもん皆だめにしちゃるからのぉ…
と、小さく毒づくじじいであった…
「りゅう、お主の能力は(憑依)かの?」
んー…少し違うのだが…
「いや、半分正解、半分はずれ。」
ほぅ…と珍しく思案顔。
「もう一度、ちと強めで構わん。あれじゃ表層過ぎて見えんかった」
ほほぅ…このジジイ、半分本気で半分煽ってやがるな…
「そいじゃ、今度は、強めで、死ぬなよ?」
《指切血判》
…ゆびきりげんまん、はりせんぼんのーます、…ゆびきった…
今の限界、5割で…
《拳闘士》




