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はぐれ魔女と平凡無才の魔剣使い  作者: 阿木津 秋水
はぐれ魔女と傭兵団
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魔石

「それは?」

「これは私が小屋にいた頃に私が使った魔力から出来た魔石だよ」


 そう言って彼女は魔石に何かを刻んだ後、俺に魔石を手渡した。


「で、こいつがそこのでかいのとどう関係があるんだ?」

「その魔石をちょっと握ってみて?」

「こうか?」


 彼女に指示された通り手の平に乗せられた魔石を握ると、魔石から仄かに光が溢れ出し、体が浮かび始めた。


「なっ……なんだこれ⁉︎」

「ちゃんと握っててね、離すと落ちちゃうから」

「は? ちょ、ちょっと待てよ! ど、どうしろっていうんだよ?」


 ユリアの指示に従い魔石をしっかりと握りつつも、無様に手足をバタバタと振り回すも、姿勢を立て直す事はできず、諦めるように手足を投げ出し、じっとしていると、身体は一定の高さで留まり、どこかやるせない気分で天井の木目を眺めていた。


『はっ、無様だな』

「好きに言ってろ、今落ちりゃ下敷きになるのはお前だからな」

『なっ、お前もしもそんな事やってみろよ? どうなるか分かってるよな?』

「知るかよバーカ、それくらいで折れるほど脆くないだろ?」

『待て待て待て待て! 折れやしねえがそんなぞんざいな扱いされる筋合いはねえぞ!』

「はいはい、二人ともそこまで、今降り方教えてあげるから」


 揉め合いになりかけた所でユリアが割って入り、魔石を握る俺の手を掴んだ。

「降りるって、どうするんだ?」

「落ち着いて、地面に足を着くときを想像してみて」


 一度ゆっくりと目を閉じ、そっと地面に足を着く様子を想像すると、体が徐々に床へと近付いていき、ゆっくりと体が起き上がり、転落する事なく床に両足が着いた。


「……おぉ……」

『なんだよ、やれば出来るじゃねえか』

「だからなんでいつもいつもお前は上から目線なんだよこの野郎」

「まあまあ二人とも落ち着きなさいよさっきから思ってたけど、その剣、喋るのね?」

「いや、まあ喋るけど……だから話しかけるなって言ったんだよ」

『知るか、変だと思われたくなかったら大人しく煽られていればいいだろう?』


 幸いにも、俺が何も無いところに向かって喋っているとは思われていないようだが、なんだか笑われているような気分だった。

 加えて魔剣からのこの煽りだ、もう諦めてはいるが、勘に触るのは相変わらずだ。


「魔石を掴んだ時に体が浮かんだでしょ?」

「え? あ、ああ、そうだな……」


 彼女にそう声を掛けられ、手元の魔石をよく見ると、手渡す前に彼女が書き込んだであろう文字のようなものが刻まれていた。


「ここに文字が刻んである文字、少し違うところもあると思うけど、そこの大きい魔石に刻まれてるのと大体同じなの」

「あっちにはもっと細かい姿勢の制御、進む速さ、他にも色々調節するために追加でもっと書き込んであるけどね」


 リリィが補足するようにそう続け、機関室に備え付けられた巨大な魔石に触れると、魔石に刻まれた文字が浮かび上がった。


「うーん……読めない……」

「普通の人なら読めないと思うよ、だってこれが読めるのは魔術師とか……魔女だけだもん」


 そう言って彼女がポーチから古びた本を取り出し、その中の一ページを開いて見せると、そこには魔石に刻まれたものと同じ文字が書かれており、やはり解読することはできなかった。


「魔石の術式を書いたのは誰なの?」

「あたしだけど、何か? これくらいなら、魔女じゃなくても出来るだろうし、何も不思議じゃないでしょ?」

「まあ、そうだけども……」

「そうなのか?」

「そうよ、その子みたいに自分が魔法を使うなら自分のマナを消費して発動されるから魔術師や魔女じゃないと魔法が使えないけど、こうやって魔石に刻み込んで魔法を使うのだったら術式を書けるなら誰でも使えるのよ。 もっとも、刻んである魔法しか使えないけどね」


 長々と説明をした後、リリィが手を離すと魔石に刻まれた文字はそっと消えていき、魔石は仄かに光を放っていた。

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