侵入者2
少し薄暗く、ランタンの灯りが薄暗くチカチカと点滅する中、自分とよく似た赤髪をした少年は口を開いた。
「えっと……おじさん達がーーー」
「だからおじさんじゃねえよ、お兄さんだよ……つーかライルだよ……」
「はいはいわかったわかった、続けて?」
「うん……えっと、ライル達が村を出た後に、団長さんにこの村から出て外の世界が見たいか?って言われてついて来たんだ……」
そう言った後、アッシュはローブを纏い、姿を消してみせた。
「って事は、俺がクルトと戦った後にはもうあの荷車に乗ってたってことか?」
「そうだよ、それで船に着くまでじっとしてろって。 そしたら外の世界に連れて行ってくれるって」
アッシュは姿を見せないままそう答えた後、顔だけを出し、続きを話そうとしていたが、顔だけが何もない空間に浮かんでいるその様子はどこか不気味にも、滑稽に見えた。
「そしたらさ、今度はライル達の後に付いて行ってみろって言われたから、そこに隠れてたんだ」
「ま、まあ事情は分かったけど……本当に村から飛び出してきてよかったのか?」
「うん、だってあの場所にいたって楽しくなかったもん。 みんなこの髪のことバカにするし、一緒に遊ぼうと思っても入れてもらえなかったもん」
「じゃあ……あの時には」
「うん、どうあったってあそこに俺の居場所なんてなかったから、俺もライルの言うわるいやつだよ」
そう言ってローブを脱ぎ、再び姿を現わすと、近くに転がっていた木箱の上に座り込み、溜息をついた。
「だけど、やっぱりおかしいもん。 俺何もしてないのに、嫌われて……ライルが言ってたみんなが正しい、俺達が間違ってるなんて、やっぱりおかしいよ」
少年の言ったそれは間違いなく正論で、反論の余地は当然なかった。
遅かった、俺達があの村に着いた時点で、この少年は既に居場所を失っていた。あの時に掛けた言葉などとうに意味などなかったのだ。
意味も無い、人々の薄汚い言い訳を、それをとっくに理解している少年相手に無慈悲に突きつけていた。そんな自身の言動に、うんざりするような気分に包まれた。
そして少年は再び口を開いた。
「だから証明してやりたかった、よく分からない、変な事ばっかり気にして、みんながおかしくなってるだけなんだって。 何もしてないのに、嫌われるのなんておかしいんだって」
「そうだよね! やっぱりおかしいよね! 私も同じだよ!」
共感を示し、嬉しげに自分の前にしゃがみ、笑みを浮かべるユリアに驚いたのか、アッシュの顔には困惑の色が出ていた。
「あー、えっと、あたしから話振っておいてなんだけどさ、そろそろ機関室入ろ?」
「え? あ、うん。 そうだね」
「別に俺は構わないけどよ……」
「うん……」
半ば無理矢理断ち切るようにそう促され、船の他の扉とは違う、少しくすみがかかった金属の扉を通り抜けると、その奥にはクルトが持っていたそれと同じように青白い光を放つ石が置かれていた。
「……こいつは……」
『ほう……ここまででかい魔石ってのはそうそう見かけねえんだけどな』
「そうなのか?」
『ああ、元々魔石ってのは自然に発生するようなもんじゃねえ』
「……どうゆう事だ?」
魔剣に向かって投げ掛けた問いに対しユリアが割って入り、説明を始めた。
「私が説明するね。 魔法とか魔術って使った後にその魔力がその周囲にばら撒かれるの。 ここまでは大丈夫?」
「ああ」
「魔力って元々自然に発生するものじゃなくって、ちょっと特殊なものだから、魔法としての効力を失った魔力がたまにその近くにあったものを別のものに変えちゃったりするの」
「別のものって……」
「うーん、ものによっては生き物の姿が変わっちゃったり、とにかく色んな影響が出ちゃったりするの」
「ほう……」
「その一つに魔石があってね? その……さっきも言ったみたいに魔女だったり魔術師なんかが多い場所で魔力が蓄積していったりするとこんな風に魔石が生成されたりするの」
そう言って彼女は腰に提げたポーチから小さく透き通った石を取り出してみせた。




