侵入者1
「ぷはっ! う、うわぁぁぁぁぁぁ‼︎ 嫌だ! 死にたくない!」
「こらこら、いくら傭兵だからってお姉さんそんなに乱暴なことしないわよ失礼ね」
「いや、いきなり大声出して見つかったと思ったら口元塞がれたりしたらそりゃ泣きたくもなるだろ……大丈夫か?」
リリィにやれやれと溜息混じりにそれとなくツッコミを入れた後、少年に手を差し伸べ、声を掛けると、少年は不安げな顔をした後、差し伸べられた手を掴み、立ち上がった。
「アッシュ、お前何でここに?」
「えっと……やっぱり村にいても何か嫌な感じしかしなかったから……その……付いて来た……」
「は?……いやいや待て待て、どうやってこの船に入ったんだよ?」
俺のもっともな問いに対して、アッシュは手元に持っていたローブを掲げて見せた。
「お前……そのローブ……」
「えっと……団長さん? が貸してくれたんだ」
「あの野郎……」
「ぷっ……あっはははははは‼︎‼︎ 団長こんな事のためにわざわざ自分のローブ貸しちゃうなんてさ‼︎ バッカみたい‼︎ あははははははは‼︎」
アッシュが掲げているローブは彼の体格には余りにも大き過ぎるものであり、よく見てみればクルトの纏っていたそれと同じものであった。
「これを使っておじさんの後追っかけてみろって」
「だーからおじさんじゃねえっての!」
「だってあの団長さんがおじさんって……」
「……あっちの方がおっさんだろうがよ……」
溜息を吐き、顔を上げるとリリィが口元を押さえ、笑うのを堪えていた。
「おじ……おじさん……あっははははははは‼︎ おじさんだってさ!」
「おじさんじゃねえ! どうしておじさんなんだよ! まだ俺はお兄さんの年だろうが!」
「じゃあ幾つなのよ?」
「に、二十二だよ! 別に老けちゃいないだろ?」
「そうねぇ……あたしより年下だわね」
俺の答えが思ってたものと違ったからか、リリィはいまいち腑に落ちない、といった様子で眉を顰めた。
「何だよ、何かおかしいかよ?」
「いやー、どうせ年下だとは思ったけど、そんなに年が離れてないのねって」
「逆にその見た目で年が結構離れてる方が怖いから……」
「あらそう? でも分からないわよ?……例えば……魔女だったりしたら、ね?」
妙に纏わり付くような口調でゆったりと放った彼女の言葉は、まるで彼女が魔女である事を示唆しているようにすら思えた。
「な、何だよ、気味悪いな……」
「冗談よ、冗談。 そこら辺に魔女なんてそうそういないわよ。 あ、そういえばそこのお嬢さん魔女だったわね」
「わ、私はライルより年下だもん! 変な事言わないでよ!」
ユリアはどこか小馬鹿にするような言い方が気に入らなかったのか、頰を紅潮させて不満げに頰を膨らませて抗議していた。
「あらあら顔真っ赤にしてかーわいい! お姉さんはそうゆう可愛い子大好きよ〜」
「あっ! ちょっと、離して!」
リリィは性懲りも無くユリアに抱きついてニヤニヤと笑みを浮かべながら彼女の体を弄っていた。
「わっ! ちょっと!」
「おいおい待て待て!」
「なーによう可愛い女の子が二人でベタベタしてて何が悪いのよ?」
「……いや、そうゆう問題か?」
「そうゆう問題よ〜!」
「……はぁ、さいですか……って! いやいやそうゆう話じゃないでしょう! そもそも何でここにアッシュがいるんだよ⁉︎」
俺の問いに、今までその事を忘れていたのか、リリィは今更思い出したようにあっと声を上げた後、ユリアから離れ、小さく咳払いをした。
「こほん、そうねぇ、何でこの船にこんな可愛らしい男の子がいるかって話だったわねぇ……」
「大元はこの先の機関室の話だけどな?」
「そっちの方もちゃんと説明するわよ。 とりあえず目の前にある事から説明するわね。……まあ説明っていうか、この子から直接話してもらうだけだけどね?」
そう言うと彼女はアッシュに近付き、しゃがんで彼の頭をそっと撫で、どうやってここまで来たのか、その経緯を自分の口で説明するよう促した。
頭を撫でられ安心したのか、アッシュは先ほどとは違い、落ち着いており、こちらの目をしっかりと見つめていた。




