案内人2
「さーて浮遊船探検ツアー! って行きたいところだけど、船がどうなってるか自体はもう団長から聞いてるのよね?」
「まあ、大体普通の船と同じだって事くらいは」
「ちょっ、それ全然聞いてないじゃない……団長さては説明面倒くさくなって省いたわね。 まあその為に私が今こうしてるんだろうけどさ」
「全然、って事はやっぱり違うんだな?」
「勿論! 何せ船が進むための仕組みも違うしね」
「風で進むんじゃないのか?」
恐らく俺のその問い掛けは彼女の予測の範囲内だったのだろう。リリィはニヤニヤと笑みを浮かべた後、指を立てて、それを左右に軽く振った。
「勿論風の流れも使うわ。 もう一つはこれから向かうから少し楽しみにしててちょうだい」
「あっ、そうゆう感じなんだ……」
所謂、見てのお楽しみって事なのだろう。
彼女は俺達に付いてくるようにこちらへ視線を送り、先程まで居た甲板の下へ向かっていった。
「どうした?」
「ねえライル、さっきあのお姉さんに絡まれた時ニヤけてなかった?」
「まさか、そう見えたか?」
俺の顔を不審げに覗き込むユリアに見兼ねたのか、魔剣が声を放った。
『嬢ちゃん、多分そいつは杞憂だと思うぞ? こいつはそんな事どころか何も考えてねえぞ』
「なっ、おい! 俺がまるでただのアホみたいな言い方しやがって!」
『実際何も考えてなかっただろうが、このど阿呆が』
「誰が阿保だこの野郎!」
俺と魔剣のいがみ合いが始まった途端、ユリアは吹き出した。
「……っ……あははははは‼︎」
「……え?」
『……おう……?』
「……ふっ……くくっ……ごめんね、こんな事言ったら怒られるんだろうけど、二人が喧嘩してるの見てたら色々どうでもよくなっちゃって」
ユリア口元に手を当てて笑い、そんな彼女の様子に思わず俺と魔剣は顔を見合わせた。魔剣に顔は無いが、恐らく奴が人の姿ならば、間違いなく俺と顔を見合わせているだろう。
そんな彼女の様子に、こちらも先ほどまでのいがみ合いが馬鹿馬鹿しく思えてきた。
「なんかアホらしいな」
『だな、くだらねえ揉め事だったぜ』
「ほらー! 二人とも早くしないと置いてくわよ〜」
甲板の下から頭だけを出してリリィは急かすようにそう放ち、後を追うように甲板の下へ向かった。
「さてさて、さっきの答え合わせに行くわよ」
「答え合わせ?……ああ、この船がどうやって進むかって話か?」
「そうそう、って訳で今から機関室に行くわよ〜!」
そう言って彼女は機関室に向かうまでの道中、得意げな様子で時折後ろを向いて船の設備についての説明をしていた。
途中すれ違った傭兵達から向けられる視線に少しばかり敵意を感じたのは恐らく気のせいでは無いのだろう。
途中で何度か魔剣がせせら笑うようにカチャカチャと音を立てていた。
後で覚えておけよ。
「さてさて、ここが機関室! この扉の向こうにこのへんちくりんな船がどうやって浮かんでてどうやって動くのかの答えがあるわよ!」
多分俺達を驚かせたいのだろう。彼女は勢いよく振り上げた手を扉に向かって叩きつけ、る寸前でその手をピタリと止め、辺りを見回した。
「……な、急にどうしたんだよ?」
「……んー妙ねぇ……」
「妙? 一体何が?」
「隠れてるんでしょ〜? 出ておいで〜!」
彼女がそう声を上げると、近くに積まれた木箱の辺りから物音がした。
「あら、あそこね?」
「え……誰かいたのかよ……」
「私も気付かなかった……」
「さてと……それっ!」
リリィが木箱を退けると、その後ろには見覚えのある赤髪をした少年の姿があった。
「あら可愛い」
「おまっ……なんでここに……?」
「う、うわぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎ もご⁉︎」
少年が叫び声を上げかけたのを押さえ込むようにリリィは少年の口元に手を当て、ニヤニヤと笑みを浮かべた。
「うりうり、どうやってこの船に入ったのかしら? さーて、白状してもらうわよ〜」
「んん〜‼︎ んごごご‼︎」
「口元塞がれてたら何も喋れないだろ……」
「あら、言われてみればそうだったわね」
思い出したかのように右上を見上げた後、彼女は少年の口元に当てていた手を離した。




