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はぐれ魔女と平凡無才の魔剣使い  作者: 阿木津 秋水
はぐれ魔女と傭兵団
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案内人1


 

「とりあえず説明だな、ここが甲板だ、船の構造は大体分かるよな? そこまで説明はできないからな」

「まあ、それくらいなら」

「えっと、私あんまり……」

「おっと……どうする?」

「俺が後でユリアに説明するから続けてくれ」


 ユリアに合図を出した後、クルトに続けるように首を縦に振った。


「じゃあ先行くか、甲板上でもさっきの場所でも、ここに居るやつらの邪魔にならないようにしててくれれば基本好きに歩き回ってもらって構わないからな。 あぁ、大砲には触るなよ?」

「えっ? も、もちろん、触らないよ?」


 大砲に近付こうとしていたユリアは小さく肩を竦ませた後、ゆっくりと振り返り、苦笑いした。


「まあいいか、それじゃ次行くか。 こっちだ」

 

 クルトは振り返り、指差した先には

艦橋があり、先程の男が出て来た。


「……団長、何してるんだ?」

「あー、船の案内?」

「……別に構わないが、あまり変な事を教えるなよ?」


 キースは不満げな顔でそう言った後、甲板の奥の方へ向かって行くのとほぼ同じくらいのタイミングで頭から肩に掛けて何か重く、柔らかい何かが降りかかってくる感覚に襲われた。


「いだっ⁉︎ ……今度は何だよ……」

「なぁ団長、このいじり甲斐がありそうな子は誰だい?」

「……あの、重いんだけど……」

「こらこらレディに向かって重いだなんて失礼ね!」


 ユリアより少し強気な甲高い声が上から聞こえると、さらに重さが加えられ、前のめりに押し込まれ、前に倒れそうになりながら斜め上を見上げると、赤に近い桃色のような色合いのボブカットに、少し凛々しさを漂わせる顔つきの女が俺の上にのしかかっていた。


「で、俺の上にのしかかってるレディってのは一体誰なんだよ?」

「こらこら、綺麗なお姉さんがありがた〜く上にのしかかってあげてるのにその言い草は何かしら?」

「そりゃありがたい、って言いたいところだけど、のしかかられたら美人だろうが迷惑じゃないですかねぇ……?」


 そう言いながら身を屈め、のしかかられている状態から抜け出し、後ろを振り返ると、身軽げな装束を身に付け、ユリアより少し背が高いくらいの女がそこにいた。


「うーん、顔つきはそこそこ文句なしなんだけど、もう少しがっつくくらいの方があたし好みかしらねぇ」

「いや、あんたの好みは聞いてないし、生憎と、俺はそんな縁は求めちゃいないよ」

「あら、他に当てがあるみたいな言い方ね」

「それも別に無いかな」


 苦笑しながらそう返すと、女の隣にいたユリアから、不満げな眼差しを向けられた。

 だから何でそんな目で俺を見るんだよ?とは言わず、目の前の傭兵らしき女に声を掛ける。


「それよりあんたは一体……ああ、そうだな、先にこっちが名乗った方がいいよな。 俺はライル・ベルンハルト。 元使用人の……今は旅人、かな」

「いいじゃない、弁えてるのは嫌いじゃないわ。 あたしはリリーナ、リリィでいいわ」


 リリーナと名乗ったその女は得意げにニカッと歯を見せて笑みを浮かべた。


「あー、リリィ、丁度いいや、お前案内の引き継ぎやってくれないか? そろそろキースに呼び出されそうだし」

「えー? あたしがやるの? まあ別にいいけどさ」


 リリィは少し不満げな声を漏らしたものの、クルトの提案に頷き、俺とユリアの間に立った。


「さてと、それじゃあ続きは私が案内するわね」

「んじゃ、頑張れよ、青年」

「は? おい、ちょっと待っーーー」


 そそくさと退散しようとするクルトに、待ってくれ、と言い切ろうとした瞬間、背後から何処か怨念じみた視線を感じ、錆び付いたかのように重い首を捻り振り返ると、恨めしげな顔でこちらを見つめるユリアと目が合った。


「えーっと……なんで睨みつけられてるんだ……?」

「別に、私睨んでないもん」

「ん? ははーん、なるほどなるほど。 そこの坊やを取られたくないのね?」

「べ、別にそんなのじゃ……」


 拗ねたように呟くユリアを見ると、リリィはニタニタと笑みを浮かべながらその背後に回り込んだ。


「えっ?」

「そりゃっ!」


 そしてあろうことか、リリィはユリアの脇下に手を通し、彼女の胸を鷲掴みした。


「で? 何なのかしらこの乳はー⁉︎」

「ふにゃっ⁉︎ な、何するの⁉︎」

「何をするじゃないわよ! なんなのよこのでっかいの!」

「そ、そんなこと言われても……」


 ユリアは羽交い締めの要領で動きを封じられたまま、胸を揉みしだかれていた。


「うりうりなんだよなんだよ! あたしにも分けなさいよ!」

「無理! 無理だってば! そんなの魔法でも無理だよ!」


 涙目になり、顔を真っ赤にして手を振り回し、暴れるユリアを他所に、辺りの傭兵達はその様子を棒立ちで眺めていた。


「も、もう! ライル! 何とかしてよ! あっ……ちょっ……」

「えぇ……」


 困惑しながらユリアの胸を鷲掴みにしている腕を掴み、引き離すと、リリィが不服げに顔をふくれさせ、ユリアは胸元を押さえてその場に座り込んだ。

 

「ちょっとちょっと坊や何するのよ」

「いや、ちょっとも何もダメでしょうアレは……」

「ダメって何が? 女同士じゃない、何かダメかしら?」


 そっちの需要があるならば話は違うのだろう。だが今は違う。


「うぅ……ライルにもあんな事された事ないのに……」

「なんだい坊やこんな子が近くにいるのに手も出さないのかい?」

「……いや、そんな事言われてもなぁ……」

『ヘタレだしな』


 うっさいお前は黙ってろ。魔剣にツッコミたい衝動を抑えながら、俺は溜息をついた。


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