浮遊船1
光が止み、視界が戻ったかと思うと、先程まで見えていた街の景色は無く、木で組まれた広い空間が広がっていた。
「ここは……」
「浮遊船の中さ、結構広いだろ?」
そう言われ、辺りを見回すと、所々に樽が転がり、屈強な男達が袋いっぱいに何かが詰められた麻袋や、木の箱を担いでいた。
他にも、武器を片手に酒を煽るものや、博打に勤しむ者の姿も見受けられた。
「さーて、改めて自己紹介だな。 ようこそ、浮遊船シルヴァリウスへ、俺が船長兼ジルバ傭兵団団長クルト・フライシュルツだ」
彼が二度目の自己紹介を終えると、辺りの男達の視線は俺達に向けられていた。
「団長、ずいぶん帰りが遅かったじゃねえかよ。……で、こいつらは?」
「あぁ、新入りだよ。 聞いて驚け? こいつ魔剣使いなんだぜ?」
「なっ、おまっここに入るなんて聞いてないぞ⁉︎ おまけに魔剣の事まで……」
思わず取り乱し、クルトに掴みかかろうとすると、すぐ近くにいた男に腕を掴まれた。
「痛っ‼︎ 痛えな……離せよ」
「ん? あんな端金で俺達全員雇えると思ってたのか?」
「んなっ、あの場で雇えって言ったのはーーー」
あんただろうが、そう言い切る前に男に腕を捻り上げられ、腕に軋むような痛みが走る。
「痛ってえな!」
「……お前、口の利き方にゃ気を付けろよ?」
「それはあいつに……痛っ」
「あいつ、じゃねえ。 団長だ」
男は俺の腕を離した後、肩を押し、俺突き飛ばした。
「っ痛ぇ……何すんだよ……」
「いや〜悪いねぇ〜こいつちょーっとばかし粗暴だからさぁ」
「粗暴じゃない、団長が緩すぎるんだ」
男は宥めるように肩を叩くクルトの手を払い、そのまま踵を返し、奥にある階段の方へ向かって行った。
「あいつ悪い奴じゃないんだけどねぇ……あぁ、名前はキースって言うんだ。 あれでもうちの副団長だからな、よろしく頼むぜ」
「……まああんたよりはしっかり団員まとめられそうだな……痛てて、悪いなユリア」
ユリアに支えられながら立ち上がり、服に付いた塵を払う。
「おいおい流石にそれはないっしょ?」
「私もさっきの人の方がしっかりしてると思うなぁ……」
「え? お嬢さんお嬢さん、流石に冗談が……」
「えっと……あははは……」
苦笑いするユリアに釣られ、クルト情けなく口元を引きつらせて苦笑いをしていた。
「ブッ‼︎ ブハハハハハ‼︎ ちげえねぇ‼︎」
「確かに性格だけなら副団長のがしっかりしてるわな‼︎ クハハハハハハ‼︎」
辺りからどっと笑いが湧き、男達らゲラゲラと腹を抱えて笑っていた。
「お、お前ら俺の事そんな風に見てたのか……悲しいなぁ……」
クルトはがっくりと項垂れた後、腰のホルスターから魔銃を引き抜き、躊躇うことなく真上を撃ち抜いた。
「……よーしお前らァ、もう十分笑ったろ? 終いだ」
団員達を静まり返らせるクルトの声は低く、先ほどとは別人のようで、その威圧感に気圧された。
他の者達もそれは同じらしく、先ほどまで博打に勤しんでいた者達も、すごすごと道具をまとめ、そそくさと階段を登って行った。
「……まるで別人だな……」
「お、少しは俺を尊敬しちゃう?」
先ほどの威圧感が消え去り、ニタニタと笑うクルトに眉をひそめると、上の方から怒鳴り声が聞こえて来た。
「団長まーたやりやがったなー? 頼むから急に甲板に向かって弾撃つのやめてくれよな! 危ねえだろ!」
「いやーごめんごめん、こうでもしないとあいつら大人しくならないからさぁ」
「ったく勘弁してくれよなぁ……当たったら後で酒奢ってくれよな!」
「ほいほい、分かった分かった」
真上から聞こえた声を適当にそう流しクルトは魔銃を回した後、ホルスターに収めた。




