魔弾使い
男は茶髪に赤い目、膝に少し掛かる程度の長さの赤いローブ、ボタンは留めておらず、その下には黒の装束を着ていた。
「ん? 何だ? 駿馬を勝手に持ち出して、加えて村を荒らした。 それじゃ飽き足らず手前を退けた旅人に仕返しか。 いい気なもんだなぁおい?」
「う……うあぁぁぁぁ……ち、違う‼︎ 最初に言いだしたのはあいつだ‼︎ お、俺達はーーー」
そんな言い訳を聞かず、男は傭兵達を撃ち抜いた。
「理由なんてどうだっていい、俺は結果しか興味ねえからな。 お前らが掟を破った、だから殺す」
傭兵達は苦しみ悶えながら蔦に覆われ、荷車の周りに四つ、人型に生い茂った蔦の塊が残った。
「よう、お前さん方大丈夫かい?」
「え? あぁ、まあ……おかげでな……」
「そうか、なら良かった。 んじゃあ死んでくれ」
そう言うや否や、男は銃口をこちらに向け、引き金を引いた。
「なっ……急に何しやがる!」
幸いにもなのか、向こうが最初からそのつもりだったのか、弾丸は顔の横を通り過ぎ、耳鳴りを残した。
耳鳴りに苛立ちを抱きながらそう怒鳴ると、男は口を開き、答える。
「義理立てだよ。 掟を破ったとはいえこいつらも元は仲間だ。 村で二人殺しただろう?」
「一人は手首を落としただけだろうが!」
「あのあと死んだ。 だから二人だ。」
そう答え、今度は俺の足元目掛けて銃弾を放った。
「あの状況で活かすも殺すもそんな余裕ある訳ーーー」
「関係ねえよ。 掟破りを殺すのは長たる俺の役目だ。 どのみち殺すのに変わりはしねえが、お前さん方がやる事でもねえだろ?」
「畜生何だってんだ‼︎ 次から次へと面倒ごとばかり起きやがって‼︎ ユリア‼︎ どっか隠れてろ‼︎」
「でも、ライル……」
「いいから‼︎ 早く‼︎ こっちはそれどころじゃないから早くどっか隠れててくれ‼︎」
ユリアが頷いたのを確認し、再び男に向き直り、サーベルを構えた。
「どうした? もう一本、その魔剣は使わないのか?」
「生憎と、そんな簡単にホイホイ使える代物じゃなくってね‼︎」
「ほーう、そりゃ面白い。 だったら意地でも使わせたくなるじゃねえか……」
男はそう言うと徐々に景色に溶け込み、姿を消した。
「ちょ、おい! どこ行きやがった! 出て来いよ!」
『右だ』
「は?」
『いいから右に避けろ』
魔剣の声に従い、右側に飛び込むと、銃声が鳴り、さっきまで居た場所から蔦が突き出した。
「……何なんだよアレは……」
『魔弾だ。 ケッ、遠くからペチペチ陰気くせぇなぁオイ?』
「おぉ、アレ避けるんだな、流石流石、魔剣使ってなくてもそこそこには動けるみたいだな。 あとそこの魔剣? 俺の得物を貶さないでくれよ? 怒ってるからさぁ」
そう言いながら男は徐々に姿を現した後、銃口から溢れる煙を吹き消した。
「……魔弾?」
『……魔弾ミストルティン、アレの弾に当たると持ち主の意思でその場所から蔦が生え出すんだよ、陰気くせえ武器だろ?』
「おいおい、俺の得物をそんな風に言わないでくれよな? 俺は何言ってんのか直接は聞こえないけどさ!」
「……何だよ、それも喋るって言うのかよ?」
「もちろん、多分その魔剣と同じで、持ち主とごく一部にしか聞こえないんだろうけどな」
そう答え、男は手に持ったそれを揺らした。
「で? いつになったらそれを使って俺と戦ってくれるのかな?」
「だからそう何度もホイホイ使えるもんじゃないって言ってるだろ……」
「じゃあそうだな……あのお嬢さん殺すって言ったら少しは本気出してくれるかな?」
「あんた……それ本気で言ってるか?」
「もちろん、俺はいつだって本気だぜ?」
そう言って男は銃口をユリアの方へ向け、躊躇うことなくその引き金を引いた。
「きゃっ!」
放たれた弾丸はユリアが隠れている荷車を掠め、その少し先に着弾し、地面から蔦を生やした。
「……応えろ……」
『あんまりムキになるなよ?』
魔剣が言い切るのを待たずにサーベルを手放し、魔剣の柄を掴み、地面を蹴り出した。




