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はぐれ魔女と平凡無才の魔剣使い  作者: 阿木津 秋水
はぐれ魔女としがない使用人
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大きくなったらいつか


 宿に帰る途中、ユリアの行方を尋ねた時に声を掛けた少年に出くわした。


「あ、悪い奴のおじさんと魔女のお姉ちゃんだ」

「だぁーからお兄さんだって言ってんだろ!」

「……知り合い?」

「いや、さっきお前を探す時にどこにいるのかこの子に聞いたんだ」

「あぁ、そうなんだ。 それにしても、随分仲よさげに見えたのは気のせいかな?」

「別にそうでもないぞ?」

「俺の友達に魔剣持ったおじさんなんかいないぞ!」


 先程言った事を覚えていてなのか、素なのか分からないが、少年は俺との仲を否定した。


「ほらな?」

「それって自慢げな顔する事なのかなぁ……」

「なぁ、これからどこに行くんだ?」

「ん? あぁ、宿に戻って、そしたら村を出るつもりだよ」

「え……もう行っちゃうのか?」

「まあな、悪い奴らがいつまでも村に居座るわけにもいかないだろ?」


 そう答え、少年の頭をポンポンと撫で、その場を去ろうとした時、少年に再び引き留められた。


「なあおじさん、名前教えてくれよ」

「だからお兄……ったくしょうがねぇな……ライルだ。 ライル・ベルンハルト、それが俺の名前だ。 坊主、お前は?」

「俺はアッシュ。 大きくなったらいつか強くなって、お前みたいな悪い奴らをやっつける正義の味方になる男だ」

「ほーう、そりゃ面白そうだ。 やってみな、クソガキ」


 歯を見せて笑みを浮かべた後、互いの拳を合わせ、別れを告げた。


「いつか俺にやっつけられるその日まで、誰にも負けちゃダメだからな‼︎ おじさん‼︎」


 少年のそんな声に答えるように背を向けたまま手を振った。


「……だからおじさんじゃなくてお兄さんだっての……」

「結局最後までお兄さんって言ってもらえなかったね、おじさん」

「お前まで……そんなに老けて見えるか? ちょっと自信無くすわ……」


 ユリアはがっくりを肩を落とす俺の前に回り込み、いたずらっ子のような笑みを浮かべた。


「仕返し。 さっきのほんとに置いてかれちゃうと思って寂しかったんだから」

「悪かったって」

「ちょっと仕返ししたかっただって、そんな顔しないでよ。 ほら、笑って?」


 そう言って彼女は俺の口角を両手で無理矢理吊り上げ、笑顔にさせようとしてきた。


「……お、おう……」

「ほーら、ちゃんと年相応の顔してるって」

「褒められてるんだかバカにされてるんだか……」


 俺の口元を吊り上げる手を払い、再び歩き出すと、ユリアは進む先に背を向けたまま、後ろ歩きで俺の前を歩き出した。


「なぁ、歩き辛くないのか? それ」

「平気だよ?」

「まあいいけど、つまづいて転ばないように気をつけろよ?」

「大丈夫大丈夫! 私そんな簡単に転んだりしなーーー」


 そう言った矢先に、ユリアは足元に転がっていた石につまずき、バランスを崩した。

 咄嗟に彼女の手を取り、転ばないよう抱き寄せた。


「ーーーっぶねぇ……だから転ぶって言っただろうが……大丈夫か?」

「えっと……うん、大丈……えっ……?」

「……どうした? 顔赤いけど」

「え⁉︎ ななな、何が⁉︎ えっと……えっと⁉︎」


 ユリアは真っ赤な顔で俺を突き返し、心なしか頭から湯気が出ているようにも見えた。


「……大丈夫か?」

「……大丈夫……うん……大丈夫だよ……」

「でも顔真っ赤だし……本当に平気なのか?」

「大丈夫‼︎ ダイジョウブ‼︎」

「お、おう……ならいいんだけどさ……」


 困惑しながらそう返すと、魔剣が溜息をつき、やれやれと喋り出した。


『ハァ〜全くお前ってのは分かってねぇなぁ……いいか? おーーー』

「ダメ‼︎ 魔剣さんそれ以上言っちゃダメ‼︎ 言わないで‼︎」


 魔剣に何かを言われるのが余程都合が悪いのか、ユリアは半ば取り乱すようにそう叫び、魔剣の声を遮った。


『仕方ねえなぁ……黙っててやるか……』

「わー! わー! わー!」


 彼女は完全に平静を欠いていた。


「分かった、分かったから……落ち着け……周りに人がいるんだ、落ち着け?」


 目を回し、平静を欠いた彼女の肩を掴み、宥めるように話しかけると、徐々に落ち着きを取り戻した。


「……へ?……あれ……私……っ⁉︎」


 しかし、辺りを見渡した後、羞恥心が爆発したのか、再び顔を真っ赤にして顔を手で覆ってしまった。


「……あう……恥ずかしいよぉ……」


 辺りを見回すと、農民の何人かがこちらを見てヒソヒソと何かを話していた。

 このままだと俺がユリアを泣かせたと取られかねない、そうなると俺の立場が色々マズい。いや、確かに今日限りで出て行くつもりだが、色々とよろしくない。よろしくないのだ。


「えーと、ユリアさん? 取り敢えず宿まで戻ろうな? な?」

「……うう……」


 周囲の人々から俺へ向けられる視線が心なしか痛かった。

 やめろ、そんな目で俺を見るんじゃない。やめるんだ。


「……どうすんだよこれ……」

『さっさと嬢ちゃん連れて宿に戻ればいいんじゃねえのか? ウダウダ考えてるよりずっと早いはずだぞ?』

「だよな」


 周囲に苦笑いを向けながら、俺はユリアの背中を押して宿までの道を人々の様々な視線に晒されながら歩いて行った。


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